ニューヨーク在住の日本人画家と、ウィーンのEU機関に勤めるルクセンブルク人。
生まれも、居住地も、仕事もまったく異なる3人による、多方面の意見交換も目的でしたが、
せっかくなので、この機会に伝統的なフィレンツェ郷土料理を紹介することにしました。
そこで、かねてから注目していた老舗リストランテ「レ・フォンティチーネ」(Le Fonticine)で
待ち合わせることにしました。
アペニン山脈裾野の盆地に広がるフィレンツェの料理といえば、まず肉料理です。
各種ビーフステーキや、野ウサギ、イノシシ、シカなどの野趣溢れるジビエ料理が有名。
一方で、豆料理も代表的で、野菜を多用した農家の素朴な家庭料理が多いのも特徴です。
その中でも、倹約家といわれるフィレンツェ人気質を表すように、安い食材や残り物を使った
「クチーナ・ポーヴェラ」(Cucina Povera)と呼ばれる庶民料理の幅広さは特筆すべきところ。
この日は軽めの夕食にしたかったので、このクチーナ・ポーヴェラを注文することにしました。
* * * * * * *
第一の皿:「リボッリータ」
フィレンツェのクチーナ・ポーヴェラの代表的な一皿です。
余った野菜スープ(ミネストローネ)に、そのまま食べるには固くなり過ぎたパンを入れて、
料理名の意味通り「再び煮込んだ」もの。
もちろんリストランテですから、余り物を出すことはなく、各素材のエッセンスが上品に調和をとる、
実にデリケートな味わいでした。
タマネギ、ニンジン、セロリといった香味野菜に、黒キャベツ、ちりめんキャベツ、ビートなどの
青菜やインゲンマメが入って、栄養も満点。トマトピューレの爽やかな酸味も効いています。
パンを加えて煮込むため、汁気のないスープになるのがポイントです。
カメリエーレ(給仕)が目の前でパルミジャーノ・チーズを削ってくれ、トスカーナ産のオリーブオイル
をかけてくれました。これで風味がぐっと引き立つわけです。
Ribollita Contadina |
第二の皿:「フィレンツェ風トリッパの煮込み」
トリッパとは、牛の第二胃袋のことで、日本ではハチノスと呼ばれているもの。
イタリア各地で食されますが、特にフィレンツェのトリッパ料理は有名です。
下茹でしたトリッパを香味野菜のブイヨンとトマトで煮込み、パルミジャーノ・チーズ、黒コショウ、
オリーブオイルをかけて、いただきます。
Trippa alla Fiorentina |
食後、カメリエーレに頼んで、ワインセラーを特別に見せてもらいました。
オーナーのシルヴァーノ・ブルーチ氏が、丁寧にワインを説明しながら、1959年の創業以来
53年間の歴史についても語ってくれました。
町の多くの美術品に大損害を与えた1966年のアルノ川の氾濫では、このリストランテも甚大な
被害を受け、それでも苦労の末に再生したといいます。
このリストランテの名物は、フィレンツェ料理の代名詞「フィレンツェ風Tボーンステーキ」だと
いうことです。
大きな暖炉のようなつくりの炭焼きグリルで豪快に焼かれたステーキが、次々と各テーブルに
運ばれ、カメリエーレが目の前で切り分けていました。
Bistecca alla Fiorentina |
まるで美術館にいるかのように壁面を絵画で埋めた店内は、フォーマルな雰囲気ながら、
家庭的な温かいサービスが心を和ませます。
素朴なフィレンツェ料理を、限りなく上質に高めた繊細な味は秀逸。
隠れ家的な一軒として、すっかり気に入ってしまいました。
リストランテ「レ・フォンティチーネ」
Ristorante "Le Fonticine" / Via Nazionale 79r - Firenze
http://www.lefonticine.com/italiano/iindex.htm(イタリア語・英語)
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