数年前から日本でエスプレッソコーヒーの炭酸飲料の発売が相次いでいます。
なかでも、今年春の新商品のプロモーションでは、「イタリア南部・カラーブリア州で愛飲されている、当地の食文化のひとつ」と紹介されていました。
この件について、カラーブリア州出身の友人で舞台技術者の、ディエゴ・コスタンツォ氏(Diego Costanzo)に話を聞いてみました。
彼は、カタンツァーロ県マルティラーノ・ロンバルド出身の、生粋のカラーブリア人です。
ところが彼は、「“炭酸入りエスプレッソ”なんて聞いたことがない」と困惑してしまいます。
そして、しばらく考え込んでから突然叫びました。
「“エスプレッソ・ソーダ”のことか!」
カフェ・フリッツァンテ(スパークリング・エスプレッソ)ではなく、ガッソーサ・アル・カフェ(エスプレッソ・ソーダ)。
あくまでもコーヒーではなく、ソーダの一種だというのです。
カラーブリア州では、エスプレッソ・ソーダはコーラのように飲まれているといいます。
なかには食事中に飲む人もいるようですが、たいていは喉の渇きを癒す清涼飲料として飲まれているのだとか。
グラス一杯分の小瓶で、バールでは約1ユーロ。スーパーでは0.40-0.50ユーロほどと、とても安価。
地元では、老若男女すべての人に飲まれるものの、それでも若者よりも年配者によく飲まれる、レトロドリンクという趣き。
「カラーブリア州のおそらく2/3の家庭の冷蔵庫に1リットルボトルが常備されている」というから驚きです!
ボトルはプラスチックではなくガラス瓶。スーパーでは0.90-1.40ユーロ程度とのこと。
しかし、このドリンクは他州のイタリア人たちにはまったく知られていません!
ディエゴ氏いわく、「カラーブリア人が多く移住するローマでは見つけることができるかもしれないが、その他の地域ではまず目にすることはない」といいます。
事実、他州出身者たちに広く訊ねても、「コーヒー味の炭酸飲料なんて気持ち悪い…」と一様に眉をしかめるだけ…。
いかに特殊で個性的な地方食文化であるかわかります。
それから数ヶ月して、ディエゴ氏の兄がカラーブリア州からエスプレッソ・ソーダを届けてくれました!
冷蔵庫でしっかり冷やしてそのまま飲むのが正しい飲み方。氷を入れればすぐに水っぽくなってしまうし、オレンジやレモンのスライスを入れることもないのだとか。
試飲をすると、それほど炭酸が強いわけではなく、エスプレッソが香ると同時に大麦コーヒーのようでもあり、日本の麦茶のような風味と清涼感を感じました。
カクテルの材料としても、個性を発揮できるのではないでしょうか。
コーヒーの地域性に最も近いラム酒、それもキャラメルのようなコク深いダーク・ラムを試しに合わせてみると、キューバ産葉巻にも合いそうなカリビアンな味に仕上がりました!
他にもテキーラ、ウィスキー、ウォッカなどをベースに、幅広いレシピが考えられるでしょう。
カラーブリア州を訪れる機会があれば、ぜひバールで探してみたい地域限定の味!
地元のバリスタに尋ねてみれば、イタリア南部の強烈な暑さを乗り切るエスプレッソ・ドリンクの楽しみ方を教えてくれるはずです。
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