この日は家族全員が集まり、同行したピサ在住の友人とともに、昼食会に向かいました。
訪れたお店は、オステリア「ダ・ドゥリン」。
ジェノヴァから海岸沿いに東に向かったソーリという町にあり、さらに車で山道を登った先の
カプレーノ地区に、そのお店はありました。
イタリア・スローフード協会発行の『Osterie d'Italia』にも載っている、地元では有名な一軒。
創業1927年の老舗で、メニューはリグーリアの伝統的な郷土料理のみ、というこだわり。
大きなガラス窓に囲まれた店内には眩しい陽光が射し、そこからは冠雪の山々を見渡せ、
眼下には雄大なリグーリア海が広がっていました。
この日、クラシカルな郷土料理が食べられるとあって、私は少々興奮していました。
山奥の一軒というロケーションが、確かな期待を抱かせます。
私の好奇心を察した主催の友人が、注文を仕切ってくれました。
* * * * * * *
まずはアンティ・パスト(前菜)。
出てきたのは、「クレシェンツァ・チーズのフォカッチーナ」。
揚げてあるのが最大の特徴で、パリパリッと音を立てるくらい香ばしい薄い生地の中から、
熱々の甘いクレシェンツァがとろけ出します。
ジェノヴァの厚いフォカッチャとはまったく異なり、レッコのチーズ・フォカッチャのようでも
ありますが、揚げてあるので食感は違います。
Focaccina al formaggio |
続いてプリーモ・ピアット(第一の皿)。
ここでは友人が2種類のパスタをとってくれました。
まずは定番中の定番、「ジェノヴァ風ペーストのトロフィエ」。
手でよじった形のトロフィエは、代表的なリグーリアのパスタ。ここソーリが発祥だとか。
茹でたサヤインゲンとジャガイモをバジルソースに合わせるのが、正統なレシピです。
Trofiette al pesto |
パスタのもう一皿は、「パンソーティのクルミソース和え」。
パンソーティ(またはパンソッティ)は、季節の野草や葉菜類を包んだ詰め物パスタ。
伝統的にクルミのクリームソースを合わせますが、この定番レシピが生まれたのは、
友人家族が住むジェノヴァ・ネルヴィ地区のフード・フェスティバルだったそうです。
いずれも手打ちの生パスタで、モチモチとした食感がたまりません。
毎朝仕込むソースのフレッシュでデリケートな風味は、思わず言葉を失う美味しさ…。
Pansoti in salsa di noci |
いよいよセコンド・ピアット(第二の皿)です。
ここはみんなの大好物、「肉と野菜のフライ盛り合わせ」(Fritto misto di carni)。
ウサギ肉とアーティチョークが特に気に入りましたが、羊肉は私はいまだに馴染めません…。
珍しいリンゴのフライが、口の中をさっぱりとさせてくれます。
サクサクッと食べられる軽い仕上がりで、旨味をとじ込めた中身の柔らかい食感との
コントラストが絶妙でした。
さらに、私のリクエストで最後に登場したのが、有名なジェノヴァ料理、「チーマ」。
仔牛の胸肉を袋状にあけ、そこにたくさんの具材を詰めてブイヨンで煮込んだもの。
詰め物には、仔牛の肉・内臓の各部位、香味野菜、キノコ、松の実、チーズ、卵などが入り、
冷ましてから薄切りにして食べます。
Cima alla genovese |
ドルチェは「リンゴのタルト・ジェラート添え」(Tortino di mele caldo con gelato)でしたが、
私はとても食べきれなかったので、ほんの味見だけ。
温かいタルトは、なめらかな舌触りで上品な甘味が優しく広がります…。
これだけでも来る価値あり!です。
最後にエスプレッソでしめましたが、食事のあいだ飲んでいたのが地元の白ワイン。
リグーリア州で最もポピュラーなヴェルメンティーノ種(Vermentino)のものです。
黄金色が美しく、フルーティで芳醇、かつ力強い味わいで、どの料理にもよく合いました。
お土産に頂いたのが、ピガート種の白ワイン(Riviera Ligure di Ponente Pigato DOC)。
リグーリア料理は、白ワインに合うものが多いですね。
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イタリアらしい家族経営の、気取らない雰囲気のお店でした。
訊けば、これらの料理をつくったのは、オーナーの母親とのこと。
繊細で完璧な味はシェフとしての腕ですが、そこにマンマの味も加わっていたんですね!
しかも、これだけ食べて飲んで約25ユーロなのですから、ぜひオススメしたい一軒です。
オステリア「ダ・ドゥリン」
Osteria "DA DRIN" / Fraz. Capreno 66 - Sori (GE)
http://www.osteriadrin.it/
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ジェノヴァ名物・フォカッチャ
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