仮想バール

イタリアの街を歩いてみましょう。
中世の歴史的な建物が続く通りの両側に、可愛らしいお店が並んでいます。
その中で一番にぎやかで、いい匂いのするお店…、それがバールです。

中に入った途端、コーヒーの香ばしい匂いとともに、様々な音があなたを迎えます。
蒸気を上げるマシンの音、カップを並べる音、氷がまわるシェーカーの音、
音楽やスポーツ中継、そして無数の人の声、声。

ここでみんな何をしているのか、ちょっと見回してみると…。

コーヒーを飲む人、パスタを食べる人、お酒を飲む人、新聞を読む人、パニーノを持ち帰りする人、
ギフト商品を選ぶ人、誕生日ケーキを注文する人、タバコやガムを買う人、宝くじを削る人、
公共料金を払う人、スロットマシンで遊ぶ人、サッカー中継を観る人、生演奏を聴く人、
ひたすらお喋りをする人、犬もきちんとお座りしています。

人垣の向こうからあなたに挨拶する人がいます。バリスタです。
カウンターを埋める人々と話し次々とドリンクを作りながら、すぐにあなたに気づきました。
さぁ他のお客さんと肩を並べてバリスタの前へ!ここがイタリアへの入口です!

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イタリア人は毎日何度もバールに立ち寄ります。

朝はカプチーノとクロワッサンで朝食。
昼はパニーノやピッツァ、パスタで手早く昼食。
午後は仕事の合間にエスプレッソで眠気を覚ましたり、仕事の打ち合わせにも利用します。

夕方は一杯のお酒とフリーサービスのおつまみで食前酒。
帰宅前に立ち寄って、一日の仕事の疲れを癒し、夕食に備えます。

夜は、ビール片手に熱くサッカー観戦。
さらに、カクテルを飲みに来る若者でバールは夜遅くまで大変賑わいます。



しかしバールは、単なる便利な飲食店・販売店というだけではありません。
むしろそれ以上に重要なのが、地域コミュニティの中心となっていることです。

ここでは、バリスタは地域の世話役としてとても重要な役割を担っています。
毎日様々な話題について語り合うなかで、バリスタはお客様の近況、健康状態まで細かく把握し、
精神的なケアをしていくことで信頼を得ていきます。
時には恋愛相談をされたり、仕事の斡旋すらすることも!

お客様は信頼を寄せるバリスタの元に集まり、家の近く、職場の近く、外出先の近くなど、
少なくとも3軒の行きつけのバールを持っているといいます。
こうして人生の大半をバールで過ごすことになるのです。

イタリア人はとても陽気ですが、人生を力強く前向きに生きる哲学を持っています。
私もバリスタとして彼らの人生の様々な場面に居合わせました。
純粋な子供たち、色気を覚えた若者、出会い、別れ、結婚、離婚、起業、倒産、出産と死。

とても人間臭く、あるがままの日常の場所がバール。
バリスタはイタリア人の人生の最大の目撃者でもあるのです。



イタリア流人生が凝縮されている一番の場所、バール。
そんなとっておきの場所なのに、日本の観光客の方々はほとんどバールに立ち寄りません。

それは、バールの利用法がとても分かりづらいことが原因でしょう。
立ち飲みスタイル、注文から支払いまでのシステムが不明瞭、イタリア語が難しい…など。

そもそも、メニューが無いことで大半の人があきらめます。
しかしメニュー表を作れば何冊もの事典ができ上がるほど、その数は無限です。
簡単なメニューがあっても、それはその事典の最初の1ページに過ぎません!

しかし、使いこなすコツさえ分かれば、バールほど便利で楽しい場所は他にないでしょう。
日本の飲食店の規格を超える、百倍以上楽しめる未知の世界があるのです!



私が普段バールで働いていて、なかなか日本の方に紹介できないバールの利用法、
イタリア人の日常生活、イタリアのニュース、オススメ情報などを、
この仮想バール『ベッラ・イタリア』で、日頃お客様と接するようにご紹介できればいいな、
と思っています。

ちなみに『ベッラ・イタリア』とは「美しきイタリア」という言葉。
イタリアは多くの魅力に溢れています。
歴史、自然、芸術、料理、カフェ、ワイン、ファッション、オペラ、映画、サッカー、クルマ、
ひいては、思う存分人生を楽しむイタリア人とそのライフスタイルまで…。
そのすべての場面で思わず出るため息「なんと美しきイタリア…」。
そうしたイタリアの魅力や、意外な日常の素顔など、お伝えしていきますね!

朝のひと時、午後のコーヒータイム、仕事上がりの夜の一杯…。
その安らぎの時間を、仮想バール『ベッラ・イタリア』のカウンターで過ごして頂ければ
こんなに嬉しいことはありません。

イタリアでは、バリスタとお客様は友人として接します。
あなたのお話も、ぜひバリスタYuskeにお聞かせください!