2015/11/05

イタリア発!?炭酸エスプレッソ

数年前から日本でエスプレッソコーヒーの炭酸飲料の発売が相次いでいます。
なかでも、今年春の新商品のプロモーションでは、「イタリア南部・カラーブリア州で愛飲されている、当地の食文化のひとつ」と紹介されていました。

この件について、カラーブリア州出身の友人で舞台技術者の、ディエゴ・コスタンツォ氏(Diego Costanzo)に話を聞いてみました。
彼は、カタンツァーロ県マルティラーノ・ロンバルド出身の、生粋のカラーブリア人です。

ところが彼は、「“炭酸入りエスプレッソ”なんて聞いたことがない」と困惑してしまいます。
そして、しばらく考え込んでから突然叫びました。
「“エスプレッソ・ソーダ”のことか!」

カフェ・フリッツァンテ(スパークリング・エスプレッソ)ではなく、ガッソーサ・アル・カフェ(エスプレッソ・ソーダ)。
あくまでもコーヒーではなく、ソーダの一種だというのです。

カラーブリア州では、エスプレッソ・ソーダはコーラのように飲まれているといいます。
なかには食事中に飲む人もいるようですが、たいていは喉の渇きを癒す清涼飲料として飲まれているのだとか。

グラス一杯分の小瓶で、バールでは約1ユーロ。スーパーでは0.40-0.50ユーロほどと、とても安価。
地元では、老若男女すべての人に飲まれるものの、それでも若者よりも年配者によく飲まれる、レトロドリンクという趣き。

「カラーブリア州のおそらく2/3の家庭の冷蔵庫に1リットルボトルが常備されている」というから驚きです!
ボトルはプラスチックではなくガラス瓶。スーパーでは0.90-1.40ユーロ程度とのこと。

しかし、このドリンクは他州のイタリア人たちにはまったく知られていません!
ディエゴ氏いわく、「カラーブリア人が多く移住するローマでは見つけることができるかもしれないが、その他の地域ではまず目にすることはない」といいます。

事実、他州出身者たちに広く訊ねても、「コーヒー味の炭酸飲料なんて気持ち悪い…」と一様に眉をしかめるだけ…。
いかに特殊で個性的な地方食文化であるかわかります。


それから数ヶ月して、ディエゴ氏の兄がカラーブリア州からエスプレッソ・ソーダを届けてくれました!
冷蔵庫でしっかり冷やしてそのまま飲むのが正しい飲み方。氷を入れればすぐに水っぽくなってしまうし、オレンジやレモンのスライスを入れることもないのだとか。

試飲をすると、それほど炭酸が強いわけではなく、エスプレッソが香ると同時に大麦コーヒーのようでもあり、日本の麦茶のような風味と清涼感を感じました。

カクテルの材料としても、個性を発揮できるのではないでしょうか。
コーヒーの地域性に最も近いラム酒、それもキャラメルのようなコク深いダーク・ラムを試しに合わせてみると、キューバ産葉巻にも合いそうなカリビアンな味に仕上がりました!
他にもテキーラ、ウィスキー、ウォッカなどをベースに、幅広いレシピが考えられるでしょう。

カラーブリア州を訪れる機会があれば、ぜひバールで探してみたい地域限定の味!
地元のバリスタに尋ねてみれば、イタリア南部の強烈な暑さを乗り切るエスプレッソ・ドリンクの楽しみ方を教えてくれるはずです。


【関連バックナンバー】
高麗人参のエスプレッソ
イタリアのレトロドリンク・キノット
秘蔵ドリンク・スプーマ


facebookページ☆リニューアル
「いいね!」して、新着情報をリアルタイムでチェック!


2014/05/14

バールの裏ワザ利用法!

イタリアのバールを、コーヒーを飲むためだけに利用していませんか?

実はバールは、それ以外にも利用価値のある、とても便利な場所なのです。
旅行でイタリアを訪れる際にも、大いに活用してみてください!


最も有効に利用したいのは、トイレ。
イタリアでは公衆トイレは非常に少ないので、観光中のとっさな時に助かります。
エスプレッソ1杯を頼んでから利用するのがスマートではありますが、ただトイレだけを尋ねても大丈夫。特に小さなお子さんや女性の方はすぐに通してくれますし、そうでなくても尋ねること自体はまったく問題ありません。
お店によっては、レジでトイレの鍵を受け取る場合があるので、バリスタに一声かけてみてくださいね。

また、道を尋ねるのもバリスタへ。
何も注文する必要はありません。バリスタは近隣の通り名を熟知しているので、親身丁寧に教えてくれるはずですよ。

ここ数年で充実してきたのは、Wi-Fiの設備。ほとんどのバールで完備しています。
日本から持参した携帯電話を無料でインターネットに接続できるので、調べ物や連絡にとても重宝します。
パスワードは気軽にバリスタに訊いてくださいね!

さらに、携帯電話の充電もお願いすることができます。
充電用のコードがあれば、店内のプラグに挿して充電完了まで管理してくれますし、iPhoneなどの主要な携帯電話ならスタッフのコードを使って充電してくれることもあります。

近隣のオススメのリストランテやナイトスポットもバリスタへ!
私も、穴場の観光スポットを訊かれることは日常茶飯事です。

気軽に両替をしてくれるのもバールならでは。
イタリアでは充分なお釣りを用意しているお店が少なく、またチップの習慣もあるので、常にコインを持っておくことは必須です。
逆に、コインをお札に両替することはバールでは歓迎されます。旅行の終盤にたまったコインをお札に代えて、空港等で日本円に両替するにも便利です。

もし急に具合が悪くなったら、街角のいたる所にあるバールに駆け込むことをオススメします。
席に座らせて水をくれ、常備している医薬品で応急処置もしてくれるでしょう。場合によってはすぐに救急車も呼んでくれます。
もしケガをして患部を冷やしたい場合は、ビニール袋に氷を詰めて渡してくれます。
こうした緊急事態はよくあるので、バリスタも対応には慣れていますよ!

氷に関しては、すべてのバールで無料でもらうことができます。
近隣のお店で購入したドリンクを冷やしたいときなど、わがままだけでもらうことができるのです。

こうして購入したワインやビールなども、その栓を開けてもらうだけでもバールに尋ねてみてください。必要であればテイクアウト用のコップも無料でくれます。

もし赤ちゃん連れの場合、エスプレッソマシンの蒸気ノズルを使って哺乳瓶を温めてもらえます。持参した粉ミルクをお湯で溶かし、ちょうど人肌に温めてくれ、これはすべて無料!床に落ちるなどして汚れたおしゃぶりも、サッと高温殺菌してくれますよ!
特に子供には優しい、人情深いイタリア人の心のこもったサービスです。

待ち合わせ場所にも、バールは最適!
イタリアでは予期せぬハプニングや交通時刻の遅れなどによって、人との待ち合わせはとかくうまくいかないもの…。
外で待ちぼうけにさせるのは、悪天候の時ほど気を遣うものですし、ここはバールを指定するようにしてください。美味しいドリンクとバリスタのおもてなしがあれば、双方安心して落ち合うことができます。

流しでタクシーを拾えないイタリアでは、数少ないタクシースタンドを探すのも一苦労。
ここでもバールが便利。電話ですぐにタクシーを呼んでくれますし、何も注文しなくても親切心だけで対応してくれます。


ここまでは、旅行者の方でも利用できるバールの活用法。
しかし、地元の住民はさらにバールを使いこなしています。

家族や友人への伝言はもちろん、家や車の鍵の受け渡し、荷物の受け渡しなど、バリスタを介して頼むことはよくあります。
観光客の方でも、数時間だけ荷物を預かってもらうこともできますよ!

24時間営業のコンビニが無いイタリアでは、スーパーも21-22時に閉店することは法律で義務付けられています。
深夜にどうしても食材が足りないとき、またそれ以外の時間帯でも、例えばミルクやフルーツ、パンといったバールで扱っている食材であれば、それを譲り受けて購入することができるのです。
当然メニューにはないものですが、バリスタが良心を持って料金を設定してくれますよ。

バールには通常、新聞や雑誌を置いているので、気になった記事のある新聞のバックナンバーをもらえることも気軽に尋ねることができます。気になった雑誌があれば、お金を払って買うことができるか尋ねてみてください。きっと無料でくれるはずです。

自分がつくった広告チラシやフライヤーを置かせてもらうこともできます。
地域のコミュニティの場として機能するバールでは、こうした「新しい情報」はむしろ歓迎されるのです。

ペットを連れての入店も、ほぼすべてのバールで問題はありません。
たいていは気の利いたバリスタがペットにも水を持ってきてくれますが、ぜひご自身でも訊ねてみてください。スタッフ全員が可愛がって撫でてくれると思いますよ!


積極的に尋ねれば、可能な限り対応してくれるのがバール。
お金を支払ったお客様なのか、通りすがりの方なのかは関係なく、あなたに何が必要なのかを人情として考えてくれるのです。

考えようによれば、日本のコンビニよりもはるかに便利で、融通が効き、助けとなってくれるのが、イタリアのバールです。
ほとんど知られていないバールの活用法を、思う存分試してみてくださいね!


【関連バックナンバー】

デカフェ・カフェインレスのすすめ
世界のお茶が集うバール
スマートなチップの渡し方
秘蔵ドリンク・スプーマ
バールのテイクアウト術
バールで祝う誕生日!
ミートソースのピッツァ
惣菜屋・ガストロノミア活用法
しぼりたてスプレムータ
バールの新聞


facebookページ
「いいね!」を押して、新着記事をリアルタイムでチェック!
バリスタYuskeへのコンタクトもこちらから