2014/01/02

デカフェ - カフェインレスのすすめ

日本ではカフェインレス・コーヒーはずいぶん昔からある商品ですが、ここ数年耳にするように
なった呼び名が「デカフェ」。
大手コーヒーチェーン店などでも取り扱うようになり、街中でも気軽にデカフェを楽しめるように
なってきました。

欧米ではとても一般的なデカフェは、ここイタリアでも非常にポピュラーな存在で、デカフェを
扱っていないバールはまずありません。

イタリア語では「カフェ・デカフェイナート」(Caffè Decaffeinato)といい、略して「デカ」(Deca)。
家庭用デカフェの代表的商品名から「アグ」(Hag)と呼ばれることも少なくありません。


エスプレッソをベースにすべてのコーヒードリンクをつくるイタリアのバールでは、
通常のエスプレッソの代わりにデカフェをつかうことで、どんなコーヒーもカフェイン抜きで
楽しむことができるのです。

注文はいたってカンタン。
頼みたいコーヒーの後に「デカ」または「デカフェイナート」を添えるだけ。

カプチーノ・デカフェイナート
カフェ・マッキアート・デカフェイナート
カフェ・アメリカーノ・デカフェイナート
カフェ・マロッキーノ・デカフェイナート
カフェ・コレット・デカフェイナート…などなど。


バリスタとしてカウンターで注文を受ける印象としては、10-15杯に1杯はデカフェのオーダーが
入るのではないでしょうか。それほどイタリアでは一般的な存在です。

朝方よりも夜にかけてオーダーの数は増える傾向にあります。
もともとカフェイン自体が苦手でデカフェしか飲まないお客さんもいますが、睡眠の妨げにならないよう夜だけカフェインを避ける人が多いためです。

ある一定の一日の杯数以上はデカフェを頼むと決めているお客さんもいます。
また、胃腸の調子が悪いときや、妊娠中など、カフェインの刺激を避けることが望ましいお客さんには、こちらからお勧めをすることもあります。


36年のキャリアをもつベテラン・バリスタ、イシドーロ・ヴォドラ氏に、イタリアでのデカフェに
ついて話を聞きました。

ヴォドラ氏によると、粗悪なものしか流通していなかったデカフェに、良質なものが登場したのが1950年代後半。それから一気に広まったといいます。

現在イタリアで流通しているデカフェでは、カフェインを除去する製造工程は大きく分けて2つ。
「ケミカル・メソッド」と、「ウォーター・メソッド」です。

ケミカル・メソッドは、塩化メチレンなどの有機溶媒を利用してカフェインを直接除去するもの。
一方、ウォーター・メソッドは、一度水または蒸気で生豆の水溶性成分をすべて抽出した後に、
有機溶媒でカフェインのみを除去し、残りの成分を含む水を再び生豆に循環して戻す方法。

ケミカル・メソッドよりもウォーター・メソッドの方が手間はかかりますが、安全性や風味が優れているのが特徴です。

製造方法の明示は義務化されていないため、店頭でその違いを見極めることは難しいのですが、デカフェしか飲まないお客さんにとっては、エスプレッソ以上に味の違いが出るデカフェの風味は、お店を選ぶ重要な要素になっています。

味の違いは、むしろバリスタの腕によるところも大きいのです。
デカフェ用にグラインダー(豆を挽くマシン/ミル)を用意しているお店は少なく、多くのお店ではすでに挽かれた粉を一杯ごとにパッケージングされたものを使います。
通常エスプレッソでは7-8gの豆を使うのですが、デカフェでは約5gと少なく、ここで重要になるのは、より厳密で正確なタンピング。

イタリアのお客さんは、味の良し悪しをカウンターで直接バリスタに伝えることは日常的ですが、
デカフェを美味しく抽出したときは、興奮気味に感動を伝えてくれるほど!
バリスタにとっては、腕の試される、とてもやりがいのあるオーダーだといえるでしょう。


ただし、通常のエスプレッソ・コーヒーよりも味や風味において明らかに劣ることから、
カフェインを避ける場合以外は通常こちらからお勧めすることはありません。
また、ノンアルコール・ビールと同様、デカフェにもごく微量のカフェインは残っていることも
覚えておいてくださいね。

イタリア旅行の際、慣れない海外では体調にはくれぐれも注意したいもの。
胃腸にあまり刺激を与えたくないときは、無理せずデカフェを頼みましょう!
それぞれ個性的で魅力的なバールを数多く楽しむためにも、ぜひデカフェを活用してみてくださいね!


■ イシドーロ・ヴォドラ氏
イタリア南部・ポテンツァ出身。フィレンツェ移住後の1978年、20歳のときにバリスタ初勤務。
以来、36年間のキャリアを積む現役ベテラン・バリスタ。
特に1981年からの17年間は、イタリアの代表的カクテル・ネグローニを生んだ名店「ジャコーザ」で
バリスタを務め、フィレンツェのバール業界の変遷を見続けてきた第一人者でもある。


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