2011/12/31

スプマンテで新年の乾杯!

いよいよ今日は大みそか。
イタリアでも大みそかの夜(La notte di San Silvestro / La notte di Capodanno)は、
年越しを盛大に祝います。
家族で静かに過ごすクリスマスと違うところは、この夜は友人たちと派手に祝うこと。
ホームパーティやリストランテ、バール、広場などでみんなと食べて飲んで大騒ぎ!

各リストランテでは、特別豪華ディナー(Cenone di Capodanno)を用意しています。
この夜だけは完全予約制になるお店が多く、料金も高めですが、それに見合うだけの料理と
雰囲気を味わえます。
夜12時ともなれば、お客さんも店員もみんな一緒になってカウントダウン。
見ず知らずの人とも頬にキスをして挨拶し、一緒に踊って盛り上がりも最高潮に達します。

街の主な広場では、さらに大変な賑わいになります。
オーケストラなどのコンサートが催され、花火や爆竹が鳴り響き、広場を埋める大勢の人々が、
夜通しお酒を飲んで踊り明かすのです。

このカウントダウンの時にみんなが手にするのは、イタリアのスパークリングワイン・スプマンテ
(Spumante)のボトル。
12時ちょうど、夜空に勢いよくコルクを飛ばし、新年を祝って乾杯します!

そのため、バールやリストランテでは普段の何十倍ものスプマンテを入荷し、大みそかには
それが飛ぶように売れていきます。路上には闇販売をする人も出てくるくらい…。



そこで、よりエレガントに新年を祝いたい方のために、オススメのスプマンテを紹介します。

有名な話ですが、スパークリングワインが初めて造られたのは、フランスのシャンパーニュ地方。
つまりシャンパンですね。
17世紀に、フランスの修道院でドン・ペリニョン神父が製法を確立したと言われています。

この製法をもとに1860年、イタリアでも初めてのスプマンテが造られました。
カミッロ・ガンチャ(Camillo Gancia)が、モスカート種のブドウを使って造ったものです。
ボトル内で二次発酵させるこの伝統製法は、かつてはシャンパン方式(Metodo Champenoise)と
呼ばれていましたが、シャンパーニュ地方以外での呼称をEUによって禁止されたため、
現在ではクラシック方式(Metodo Classico)と表記するようになりました。

これに対し、20世紀に入って発明されたのが、タンク内二次発酵方式、つまりシャルマ方式
(Metodo Charmat)です。
温度が自動管理された大型のタンク内で発酵させ、短期間に大量生産できるメリットがあります。

クラシック方式のスプマンテで特に有名なものに、ピエモンテ州のガヴィDOCG (Gavi DOCG)、
ロンバルディア州のフランチャコルタDOCG (Franciacorta DOCG)、トレンティーノ=アルト・
アーディジェ州のトレントDOC (Trento DOC)などがあります。値段は高め。

一方、シャルマ方式では、プロセッコ種を使ったヴェネト州のプロセッコDOC (Prosecco di
Conegliano Valdobbiadene DOC)が最も有名。
甘口では、モスカート・ビアンコ種を使ったピエモンテ州のアスティ・スプマンテDOCG (Asti
Spumante DOCG)と、弱発泡性のモスカート・ダスティ(Moscato d'Asti DOCG)が代表的。
マスカットの香りがとても爽やか!

ガヴィやトレントは普通の白ワインも非常に有名なので、ご存じの方も多いのでは?
飲みやすさでいえば、オススメは甘口。アルコール度数が12%前後ある辛口に比べ、
甘口は7%程度。口当たりも優しい味わいです。
ちなみに、普通のワインでいう辛口「セッコ」(Secco)の上に、スプマンテでは極辛口「ブリュット」
(Brut)があります。ラベルを読む参考にしてください。

気をつけたいのは、こうした自然発酵のスプマンテ(Spumante Naturale)に対し、
炭酸ガスを後から人工的に注入したスプマンテ(Spumante Gassificato)があること。
これは味も香りも格段に劣ります。



私は、今年は甘口のアスティ・スプマンテを準備しました。
イタリアは日本より8時間遅れて年越しを迎えるので、例年通り、日本時間とイタリア時間の
2度お祝いしたいと思います。
皆さんも良い新年をお迎えください!

キアーヴァリの歴史的バール

リグーリア州キアーヴァリに行ってきました。
ここで育った友人の案内で訪れたのが、町一番の歴史を誇るバール「Gran Caffè DEFILLA」。
創業は1900年。イタリア歴史施設協会(Associazione Locali Storici d'Italia)に認定されている
文化的価値もある老舗です。

入口を入るとまず、広々としたバールスペースがあり、立ち飲み客で溢れる重厚なカウンターが
目をひきます。一目でプロフェッショナルだとわかるバリスタたちが、あくまでエレガントに接客
していました。
広い店内のその奥には、自家製ドルチェやジェラートを揃え、併設のエノテカには豊富な種類の
ワインボトルがずらり。

その先にティールームがあり、私たちはそこに座ることにしました。
どのテーブルもアンティーク調で、店内に流れるクラシック音楽は、耳障りにならない程度に
かすかに聴こえるだけ。まさに正統派の古典的バールです。


ここで友人が紹介してくれたのが、このバールで生まれた銘菓「キアーヴァリの微笑み /
ソッリーズィ・ディ・キアーヴァリ」(Sorrisi di Chiavari)。
リキュールのマラスキーノ酒で風味をつけたジャンドゥイア・チョコレートのスポンジを、
ブラックチョコレートでコーティングした、一口サイズのお菓子です。

目に留まったのは、「毎週土曜・生牡蠣 / 1個2.50ユーロ」と書かれたポスター。
生牡蠣にはレモンを絞って、白の辛口スパークリングワインと合わせるのがイタリア流の食べ方。
アペリティーヴォ(食前酒)の最も洗練されたサービスですが、今ではわずかな高級店でしか
見つけることができません。
この日は月曜日で食べることはできませんでしたが、ビストロも併設するバールならではの、
お酒に合う本格的な料理です。

お店の方々もとても親切でした。
上品なカメリエーレ(給仕)がテーブルで創業の歴史などを説明してくれ、
レジでは、ショップカードを尋ねると、気前良くポストカードまでくれました!

Sorrisi di Chiavari

キアーヴァリの町も素晴らしいものでした。
建物沿いに柱廊・ポルティコ(Portici)がどこまでも続く街並みは歩きやすく、
そこに並ぶ歴史的な建物や教会、アンティークなお店などがとても印象的。
ヨットハーバーからは、有名な夏のリゾート地、サンタ・マルゲリータ・リーグレの
宝石を散りばめたような夜景を、遠くに臨むことができました。

外国人の姿をほとんど見かけることがなく、つまりは古き良きイタリアの姿がそのまま残る、
そんなキアーヴァリの町を、ぜひ一度訪れてみてくださいね!

通りの両側に沿って続く柱廊・ポルティコ

Gran Caffè "DEFILLA"
Corso Garibaldi, 4 - Chiavari (GE)

2011/12/30

干しブドウの一級ワイン

ジェノヴァの友人宅で過ごしたクリスマスの夕食の席上、ヴェローナから来たご夫婦が持参した
ワインに、思わず目を奪われました。

「レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラDOC」(Recioto della Valpolicella DOC)
ヴェネト州ヴェローナ県で造られる、赤のデザートワインです。

このワインの最大の特徴は、収穫した完熟ブドウを約100日間かけて陰干しすること。
乾燥させることでブドウの水分を飛ばし、より糖度を高めた果汁から、甘口ワインを造ります。
糖分がすべてアルコールに変わる前に発酵を止めるので、甘口に仕上がるわけです。


このレチョートといわば兄弟のような関係にある、ヴェネト州の最高級ワインがあります。
「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラDOC」(Amarone della Valpolicella DOC)
ふつう単にアマローネと呼ばれ、ソムリエをもうならせるイタリアでも随一の赤ワインです。

収穫したブドウを陰干しして糖度を高めるまでは同じですが、違いは発酵期間。
糖分が無くなるまで発酵させるため、アルコール度が比較的高めで辛口になり、
さらに2年以上の樽熟成を経て造られます。
ルビー色のビロードのような口あたり、そして香り溢れる優雅さが特徴的。
フルボディのコクのある味わいなので、肉料理などによく合います。


一方、レチョートは厚みのある甘口なので、ふくよかなドルチェやチーズに合わせるといいでしょう。
深い赤の色合いは、クリスマスの夜を彩るワインとしても最適でした。
一度は試す価値のある、特別な1本です!


ジェノヴァ名物・フォカッチャ


今年はクリスマスをジェノヴァで過ごしてきました。
この機会に、長年訪れてみたかった同じリグーリア州の海辺の町、レッコに立ち寄りました。
目的はひとつ。ここの名物フォカッチャ(Focaccia di Recco)を食べること!



フォカッチャはピッツァよりもはるか昔からイタリアで食べられてきましたが、
現在特に有名なものは、ジェノヴァのフォカッチャ(Focaccia Genovese)。
生地が柔らかく、そのまま食べるか、ローズマリー、セージ、オレガノ、オニオン、オリーブなどで
風味付けすることもあります。

イタリアのどこでも食べられるフォカッチャですが、誰もがジェノヴァのものは違うと口を揃えます。
使われる小麦粉とオリーブオイルが違うとも言われますが、そもそもフォカッチャが日常に
欠かせない、この土地の食文化に違いがあるようです。

ジェノヴァを歩けば、街角でふいにフォカッチャの香りがすることは珍しくありません。
それはわずか数メートルの間隔で立ち並ぶ、パン屋から漂う香りだと気づくはずです。
甘い朝食を好むイタリア人の中で、ジェノヴァの人々が焼きたてのフォカッチャを朝から並んで
買い求め、朝食でカフェラッテに浸して食べるというのは、非常に特異に映ります。
そうしたフォカッチャへの人一倍の愛情が、どこよりも美味しい味を育てる土壌だということは、
他の料理でも同じこと。

一緒にフォカッチャをほおばりながら、ジェノヴァ育ちの友人が私に言いました。
「(香りの強い)オニオンのフォカッチャを食べた後はキスできないから、気をつけるんだよ」
ジェノヴァっ子は、キスさえあきらめるほど、フォカッチャには目がないということでしょうか…。



さてそんな中、レッコのフォカッチャはさらに一味違います。
小さな町の至るところで、「FOCACCIA COL FORMAGGIO」の文字を発見!
これがレッコ名物、クリームチーズを挟んだ薄いフォカッチャのこと。
チーズにはクレシェンツァ(Crescenza)やストラッキーノ(Stracchino)が使われます。

今回訪れたお店は、地元の人々が一番おいしいと教えてくれた「Panificio MOLTEDO」。
1874年の創業から4代続く、町一番の老舗です。
午後の営業再開16:30にお店のシャッターが開くと、待っていた人々ですぐに店内は埋まりました。
みんなのお目当て、チーズ・フォカッチャが次々に焼き上がり、まさに飛ぶように売れていきます。


このお店で使うクレシェンツァ・チーズは、50年以上もINVERNIZZI社製だけを使用していて、
レッコの伝統的チーズ・フォカッチャの、いわば代名詞なのだとか…。

薄い生地のあいだからとろけ出るアツアツのクレシェンツァが、口いっぱいに広がり、
柔らかい香りが余韻を残す、とてもデリケートな味でした。

コクがあるのに軽い口当たりは、きっと暑い真夏でも食欲を刺激するに違いありません!
海水浴の後の、レッコの浜辺で食べるフォカッチャを、思わず想像してしまいました…。

もちろん冬には身体を温めてくれる味わいがあり、こうして一年中美味しく食べられるのでしょう。
またこの町に戻ってこようと思わせる、これぞ「名物」です。


2011/12/23

ザンポーネ500周年のクリスマス

イタリアのクリスマスの食卓に欠かせないのが、モデナ産ザンポーネ(Zampone di Modena)。
今ではイタリア全土にとどまらず、世界的にも有名な逸品です。
製造工程が似ているモデナ産コテキーノ(Cotechino di Modena)と一緒に、クリスマスシーズンとも
なれば、どちらも市場やスーパーに大量に並べられます。

ザンポーネとは、豚のひづめ付き前足の皮袋に詰め物をした、豚肉加工食品のこと。
詰め物には、豚の肩、足、皮、喉、頬、腹の各部位を挽き、コショウ、ナツメグ、シナモン、
クローブ、ワインで軽く味付けされたものを使います。
これを加工するわけですが、検査の通ったものは保護地理的表示・IGP(Indicazione Geografica
Protetta)に指定され、モデナ産の正真正銘の伝統食品として、他地域で生産されるザンポーネと
大きく区別されます。


ザンポーネは茹でて輪切りにし、伝統的には、煮込んだレンズ豆(Lenticchie)とジャガイモの
ピューレ(Purè)を添えて皿に盛りつけられます。
皮のコリコリとした独特の食感は、クセになる美味しさ!

モデナでは、有名なモデナ産バルサミコ酢(Aceto Balsamico di Modena)を使ったザバイオーネや、
リンゴのソースを添えるなど様々なレシピがあり、クリスマスに限らず食されます。

また、ザンポーネに比べ価格の安いコテキーノは、より一般的にイタリア北部のリストランテで
扱われ、茹で肉の盛り合わせ・ボッリートや、カルボナーラなどのパスタ、リゾットなどの具に
使われています。
(私がコテキーノと出会ったのも、モデナから遠いイタリア北東部トリエステのリストランテでした!)

おそらく日本にも、調理済みの殺菌パックされたものが輸入されているのではないでしょうか…。
パックのまま沸騰した鍋で温めるだけなので、とてもカンタン!ぜひ試してみてください!


そもそもザンポーネの誕生は1511年、モデナ近郊ミランドラ(Mirandola)の町が教皇ユリウス2世の
軍勢に包囲された時のこと。
ミランドラの人々は、敵軍に重要な食料である豚を奪われないようにするため事前に豚肉を挽き、
それを豚の皮に詰め(コテキーノ)、さらに前足の皮にも詰めて(ザンポーネ)、保存食としての
確保にも成功したのです。

それから今年でちょうど500年目。
今ではすっかりクリスマス料理の代表格として、イタリア中の食卓に並びます。
今年のクリスマスは、ザンポーネとコテキーノを主役にしてみてはどうでしょうか。
500年続く長い歴史に想いをはせ、家族の幸せもずっと続くよう祈りつつ、心温まるクリスマスを
迎えるのもいいかもしれませんね!


モデナ産ザンポーネIGP・公式サイト(イタリア語)
http://www.zamponemodena.it/

クリスマス菓子・パネットーネ

日本でも最近知られるようになってきた、ミラノの銘菓・パネットーネ(Panettone)。
「大きなパン」という意味通り、大きなドーム型の甘く柔らかいパンです。
レーズンなどのドライフルーツが入っているのが特徴。

パネットーネの誕生は、およそ500年前のルネッサンス期。
ルドヴィコ・スフォルツァ、通称イル・モーロ(Ludovico il Moro)統治下のミラノだったと、
いくつかの伝説が伝えています。

ひとつは、ミラノの鷹匠の若者が考案したという説。
彼は美しいパン屋の娘に恋し、そのパン屋に雇われるよう、また売上げを伸ばすよう、
ドライフルーツなどを使った新しいパン(パネットーネ)をつくり、それが評判を呼び、
その後2人は結婚して幸せに暮らした、というもの。

もうひとつは、ミラノ公イル・モーロのコックが、周辺国の貴族たちを招いた豪勢なクリスマス
昼食会を任されたときのこと。
準備したデザートをオーブンで焦がしてしまい、見習いのアントニオが試作していたパンケーキを
急遽出すことになり、それが意外にも大好評。
招待客に「パーネ・ディ・トーニ(Pane di Toni)」(アントニオの愛称・トーニのパン)と紹介し、
それが訛って「パネットーネ」になったというもの。



いずれにしても現在では、それがクリスマス用パンケーキとして全国的に有名です。
11月下旬から、スーパーや食料品店にはパネットーネが大量に並べられ、クリスマスまでに
親戚や友人、職場の同僚などに贈り合う習慣があります。
これがクリスマス当日ともなれば、もらったパネットーネを大量に抱えることに!
ですから、クリスマス休暇中(クリスマスから年越し、1月6日のエピファニアの祝日までの2週間)、
家でパネットーネを食べ続けることになるのです。

もうひとつ、似たようなクリスマス菓子に、ヴェローナ銘菓のパンドーロ(Pandoro)があります。
こちらはドライフルーツが入らず、雪のように白い粉砂糖を振りかけて食べます。

どちらも全国のスーパーなどで大量販売されますが、ほとんどは添加物など多く含んだ工業食品。
私のオススメは、菓子店・パスティッチェリーア(Pasticceria)が各店競って焼き上げる自家製です。
伝統製法の風味は格別で、友人に贈ってもとても喜ばれることでしょう!

ジェノヴァのパンドルチェ(Pandolce)など、各地方でしか食べられない同様のクリスマス菓子も
あります。やはり地元のパスティッチェリーアで見つけてみてくださいね!


パスティッチェリーアを併設しているバールでは、切り分けたパネットーネを食べることができます。
一番のオススメは、一杯の甘口スパークリングワインと合わせること。
パネットーネを引き立たせる、大人の食べ方です。

また、甘いものに目がない方は、ホットチョコレートをかけて食べるなんてどうでしょう?
あまりの幸せに思わずうっとりしてしまうご婦人方を、カウンターからたくさん見てきました!

他にも、あなただけの食べ方を、ぜひバリスタに相談してみてください。
とびきりの発見があるかもしれませんよ!

2011/12/22

冬の風物詩・ホットワイン

真冬の屋外イベントに欠かせないのがホットワイン。
ドイツを中心にヨーロッパの広い地域で一般的ですが、イタリアでもヴィン・ブルレ(Vin Brulé)の
名前で親しまれています(フランス語からの外来語です)。

イタリアでは特に寒さの厳しい北部でよく飲まれ、広場などに並ぶクリスマスマーケットや、
カーニヴァルのイベント会場、各地域のお祭りなどには欠かせない存在です。
バールでも店先にヴィン・ブルレを温めた大鍋を置き、道行く人々に売ったり、振る舞ったりする
光景をよく見かけます。
日本でいう甘酒のようなものかもしれませんね。

作り方はとてもカンタン。ご自宅でもぜひ試してみてください!
赤ワインに砂糖とシナモン、クローブといったスパイスを加えて温めるのが基本。
八角、レモンやオレンジの皮、リンゴやミカンの果実を加えることもあります。
これを大鍋で温めますが、沸騰させなくても多少のアルコール分は飛ぶので、度数は10%程度。
甘く飲みやすい上に、身体を芯から温めてくれ、思わずホッとする味です。

バールでは、エスプレッソマシンのノズルを使って、カプチーノを作るように蒸気で温めて
作ることができます。瞬時に温まるのでアルコール分が飛び過ぎずに済む利点があり、
大鍋で事前に準備したり保温しておく必要もありません。

でもやっぱり屋外で飲むのが一番!
凍える寒さのなか、温かいカップを両手で包み、湯気立つヴィン・ブルレを仲間や恋人と
一緒に飲む…。思わず笑顔もほころぶ、冬の贈り物です。

2011/12/15

マティーニ&ギョーザ


マティーニは言わずと知れた「カクテルの王様」。
ドライ・ジンとドライ・ヴェルモットでつくる定番中の定番カクテルです。

日本では「マティーニ」と発音しますが、欧米ではイタリア語風に「マルティーニ」(Martini)と
発音されます。
なぜイタリア語風なのか…?
それは、イタリアのヴェルモット「マルティーニ」に由来するためで、これは世界で最も有名な
ブランドの一つでもあります。

マティーニが考案されたのは、ジンベースのカクテルが盛んに作られたアメリカ。
しかし、多くの酒造メーカーがそうするように、自社製品の拡販目的にメーカー自らが
カクテルの名前をつけて宣伝したといわれています。
実は、「カクテルの王様」はイタリアと切っても切れない関係にあったのです!

ちなみに、マティーニが注がれたカクテルグラスの底には、ピックに刺したオリーブが
沈められています。いかにも地中海的ではありませんか!

もちろんイタリアのバールでも、アペリティーヴォ(食前酒)の代表的カクテルとして、
メニューに見つけることができます。
しかし、意外にもイタリア人にはそれほど人気があるとはいえません。
バールでオーダーが入るときは、まずアメリカ人やイギリス人、オランダ人だと思って
間違いないほどです。


先日、ピサに住む日本人の友人を訪ねたとき、とても興味深い話を聞きました。
彼は手作り餃子でもてなしてくれたのですが、同席したイギリス人女性が「オランダの
アムステルダムのバーにある、マティーニ&ギョーザが大好きだったわ…」と、ため息を
ついたのです。

バリスタの私には、この発想は衝撃的でした!
確かに、キレ味鋭いジンのドライな風味は、餃子のクセのあるこってりした味にとても合うでしょう。
同じホワイト・スピリッツのウォッカも合うはずです。

イタリアのヴェルモットとイギリス・オランダ生まれのジンが、アメリカでカクテルとして出会い、
今ではそれが餃子とともに飲まれる…。
創造力で発展してきたドリンクや食のさらなる可能性に、心が躍った夜でした。

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【追記】
イタリアでマティーニを注文する際は、「カクテル・マルティーニ」と言ってくださいね!
「マルティーニ」だけだと、ヴェルモットが出てくるので注意が必要です。


2011/04/24

復活祭・パスクア

今日4月24日はパスクア(イースター/復活祭)の日。
キリストが十字架にかけられて死んでから3日目に復活したことに由来する、宗教行事です。

イタリアではクリスマスに次いでとても重要な祭日になります。
家族や親族が集まって朝のミサに参加し、昼には豪勢な料理で食卓を囲むなどクリスマス同様に
過ごすのですが、パスクアは春の訪れを感じさせる風物詩でもあります。
暖かい陽射しのもと、庭先にテーブルを並べることもあり、食事もワインも美味しくいただけます!


「復活」のシンボルといえば卵。
卵料理はかかせません。

地域によって様々ですが、なかでもジェノヴァ地方のトルタ・パスクアリーナ(Torta Pasqualina)は
有名です。丸ごとのゆで卵や春の青菜、チーズなどを混ぜて詰めたオーブン焼きのタルトです。

メイン料理は伝統的に羊肉。
パスクア前ともなるとスーパーや肉屋などには大量の羊肉が出回ります。

一方、若い世代や都市部では、毎年この時期に多くの羊が畜殺されることへの反対運動があり、
広場でのデモや広告を目にした人もいるのではないでしょうか…。

ともあれ、パスクアのドルチェ(デザート)はみんなの大好物!
むしろこちらがメインでは…?と思うほど。
こちらも地域によりますが、ナポリ地方のパスティエーラ(Pastiera)が代表格。

しかし、最も目を引くのは、鳩の形をしたパンケーキ・コロンバ(Colomba Pasquale)と、
卵型のチョコレート(Uova di Cioccolato)でしょう。

とりわけ卵型チョコレートは、割ると中にオモチャなどのプレゼント(Sorpresa)が入っているので、
子供たちに大人気!

これらのドルチェはバールでも販売しているので、ぜひのぞいてみてください。
多産のシンボルであるウサギの形をしたチョコレートも置いてありますよ!


パスクアの翌日、月曜日は休日で、パスクエッタ(Pasquetta)と呼ばれています。
宗教的意味はなく、イタリア独特の祝日ですが、今日一日を実家でゆっくり過ごせるのも、
パスクエッタの日にそれぞれ帰宅することができるからです。

明日まではバールも忙しいですが、華やかなお祝いの雰囲気や、家族そろって来店される
お客様を迎えることは、バリスタとしても気分が高まります。
この時期のあいさつは「ブォナ・パスクア!」「良いパスクアを!」。

皆さんも、良い春をお迎えください!

2011/04/04

首位攻防!ミラノダービー

先週末、セリエA第31節の各試合がありました。
注目は伝統のミラノダービー、ACミランvsインテル戦。

特に今回は、首位ACミランをインテルがわずか2ポイント差で追う、優勝争いの直接対決。
シーズン前半の不調から追い上げてきた昨季王者インテルが、今季絶好調で首位を独走していた
ACミランを遂に逆転するのか、地元ミラノどころかイタリア中の注目が集まりました。


私はいつものようにバールで観戦。
モニターに近いカウンター席に陣取りました。
試合は夜20:45開始だったので、お酒も美味しい時間です!

普段は落ち着いたテーブル席も、この夜ばかりは大量のイスが運ばれ超満員。
フロアも通り抜けるスペースが無いほど多くの立ち見客で溢れ、熱気も最高潮!
ミラニスタ(ACミランサポーター)とインテリスタ(インテルサポーター)の舌戦もヒートアップ!


戦前の予想はインテル有利。
ところが、試合は意外な展開を迎えました。

開始わずか1分、ACミランが若きエース・パトのゴールで先制します。
浮足立つインテルはACミランに主導権を許し、ボールを回される展開。

後半9分、流れを変えたいインテルでしたが、ゴール前に飛び出したパトを倒してDFキヴが退場。
1人少ない10人となったインテルは、ACミランにいっそうスペースを与え、苦戦を強いられます。

それでも迎えた決定的チャンスをインテルFWエトーが外すと、バールのミラニスタは拍手喝さい。
その直後の17分、パトが2点目を決め、大歓声と踊り出すお客さんでバールは騒然となりました。

完全にインテルを圧倒するACミランは、試合終了直前にもFWカッサーノがPKを決めて、
バールはもはやお祭り騒ぎ。
私も含めたインテリスタは、一度も歓喜することなく失意のうちにバールを出ることになりました。


これでACミランはインテルとの勝ち点を+5ポイントに広げ、最大のライバルを退けることに成功。
一方、3位ナポリはラツィオに逆転勝利し、ACミランとの勝ち点差-3を堅持したまま2位浮上。
マラドーナやカレカが在籍していた1990年以来21年ぶりの優勝に望みをつなげました。

今季7試合を残して、優勝争いはACミラン(勝ち点65)、ナポリ(62)、インテル(60)の3チーム。
この中で直接対決を残すのは、残り2試合目でのナポリvsインテル戦のみ。
ACミランが断然有利ですが、最後まで何があるかはわかりません。


インテリスタの私としては、インテルの残り全勝とACミランの2敗という奇跡を信じるしかなく、
今回のミラノダービーはとても苦いものになりました…。

それでも、この特別な夜を今回もイタリアで迎えられたことは、とても幸せなこと。

毎年、家で観戦すれば近所のあちこちから歓声が聞こえ、街中のどこを歩いていてもスタジアム
さながらのバールや観戦パーティーで盛り上がる家々からの絶叫に出くわします。
路上からは人が消え、モニターの無いバールは閑散とするほど。
イタリア人のサッカーへの情熱を垣間見る夜でもあるのです。


もうすでに、多くのインテリスタが来季のミラノダービーでの雪辱を誓っています。
しかしまだ今季、両チームともコッパ・イタリア(イタリア杯)準決勝に進んでいるので、
決勝戦で対決する可能性もあります。こちらもぜひ注目してみてください!

2011/04/03

MotoGP第2戦スペインGP

今日、MotoGP第2戦スペインGPが開催されました。
スペインは、イタリアと並んでMotoGP人気が高い国です。
注目の第2戦。見逃した方に簡単にお伝えしておきますね。


雨で路面が濡れた難しい状況でスタート。
ポールポジションは第1戦に続きストーナー。

中盤、2位ストーナーをロッシがコーナーで内側から抜くも転倒し、ストーナーも巻き込まれる。
ロッシは再びレースに戻るも、ストーナーはマシンが損傷し棄権。
さらにこの日絶好調で首位を快走していたシモンチェッリもコーナーで単独転倒、棄権。

3人に引き離され苦戦していたロレンソがこれで首位浮上。
以降安定した走りで独走を保つ。

終盤、スピーズがペドローザを抜き2位浮上。
これでヤマハのワンツー・フィニッシュかと思われたが、残り3周でスピーズがまさかの転倒。
ペドローザは辛くも2位を守る。

さらに、ヘイデンを抜いて3位に躍り出たエドワーズが、直後の残り2周でこちらもコースアウト。

これで順位が繰り上がり、ヘイデンが3位で今季初の表彰台。
4位は青山博一。序盤は後方にいたものの、徐々に順位を上げて自己最高位でフィニッシュ。
5位はロッシ。転倒で最後方に下がるも、今日の好調を示すように大きく挽回。


結果は以下の通りです。

1位:ロレンソ(スペイン/ヤマハファクトリー)
2位:ペドローザ(スペイン/レプソル・ホンダ)
3位:ヘイデン(アメリカ/ドゥカーティ)
4位:青山博一(日本/ホンダ・グレシーニ)
5位:ロッシ(イタリア/ドゥカーティ)

今季初優勝のロレンソはポイントリーダーに浮上。
地元スペイン勢のワンツー・フィニッシュで、会場は大いに盛り上がった様子でした。

転倒に巻き込まれ棄権したストーナーは、レース後ロッシを激しく非難し、
今季もこの2人の熱いライバル関係から目が離せそうにありません!


本来なら4月24日に第3戦日本GPが開催予定でしたが、震災により10月2日に延期されました。
代わって第3戦となるのは5月1日、ポルトガルGPです。

2011/03/28

サマータイム開始

いよいよサマータイムが始まりました。
毎年3月の最終日曜、午前2時に時計の針を1時間すすめ、午前3時になります。


日本との時差は8時間から7時間に短縮されます。
これによって最も便利になるのが、イタリアから日本に国際電話をかけるときです。

例えば、仕事で日本に17:00までに電話する必要がある時、それはイタリア時間では朝09:00まで
という意味ですが、サマータイム期間中は朝10:00までに電話すればいいことになります。
朝の1時間はとても大きい!

また、家族や友人に夜24:00までに電話するとき、通常イタリア時間では16:00までに電話する
ところを、サマータイム期間中は17:00までに電話すればいいわけです。
イタリアで夕方の食前酒をとりながら、日本で晩酌する友人と、スカイプなどで乾杯もできます!

逆に日本から出勤前の朝08:00にイタリアに電話するとき、通常イタリア時間では夜24:00ですが、
サマータイム期間中は深夜01:00になるので、少し注意が必要ですね。


今後イタリアでは夜遅くまで空は明るくなります。
まだ明るいうちに仕事を終えて、バールでゆっくりお酒を飲む解放感は何ともいえません!
こうして毎晩バールは路上まで人で溢れ、夏に向けて熱気は加速していきます。
誰もが心浮き立つサマータイムの開始。夏はもう間近!

2011/03/27

開幕!MotoGP観戦ガイド

先週末、MotoGPが開幕しました!

ただ、MotoGPといっても、日本のほとんどの方は知らないのではないでしょうか?
MotoGP(モト・ジー・ピー)は、オートバイのロードレース世界選手権シリーズのこと。
ここイタリアでは、サッカーと並んで最も人気のあるスポーツのひとつです!

バールでもモニター観戦するお客さんで溢れ、イタリア人ライダーの活躍に熱気が高まります。
その興奮の中で一緒に応援するためにも、このMotoGPについてみてみましょう!


F1グランプリと同じようなモータースポーツだといえばわかりやすいでしょう。
世界各地を転戦し、各グランプリレースの順位に応じてポイントが加算され、
ワールドチャンピオン(年間王者)を決定します。
エンジンの排気量別に、125ccクラス、Moto2クラス(600cc)、そして最高峰のMotoGPクラス(800cc)
と3つのクラスに分かれ、それぞれのレースを楽しめるのも特徴です。

今シーズンは11月の最終戦まで全18戦。
MotoGPクラスには、全10チーム、17名のライダーが参戦します。
今回は、この最も人気のあるトップカテゴリー・MotoGPクラスを紹介してみたいと思います。


私たち日本人にとって馴染みやすいのは、主力チームが日本のメーカーだということ。
経済危機で2009年から撤退したカワサキを除き、ホンダ、ヤマハ、スズキが参戦しています。

一方、主力ライダーはスペイン、イタリア、アメリカに多く、今季はそれぞれ5名、4名、3名が参戦。
それに続いて、オーストラリア、イギリス、フランス、チェコ、日本から1名ずつとなっています。


名ライダーを次々に輩出するイタリアには、人気に支えられた底辺の広さがあるのでしょう。

なかでもイタリアの国民的英雄といわれているヴァレンティーノ・ロッシに注目!
彼は1996年の参戦以来、15年間で9度ワールドチャンピオンに輝き(そのうちMotoGPクラスでは
9年間で6度)、グランプリ通算105勝は、歴代2位の大記録です。
陽気な性格と、ファンサービス、派手なパフォーマンスで、人気実力ともにナンバーワン!

MotoGPクラスではホンダ、続いてヤマハに所属しましたが、今季からデュカーティに移籍し、
イタリア製マシンでのレースに大きな注目が集まっています。

今季のイタリア人ライダーは4名。

ヴァレンティーノ・ロッシValentino Rossi(ペーザロ・ウルビーノ県出身)
ロリス・カピロッシLoris Capirossi(ボローニャ県出身)
アンドレア・ドヴィツィオーゾAndrea Dovizioso(フォルリ・チェゼーナ県出身)
マルコ・シモンチェッリMarco Simoncelli(リミニ県出身)

出身地はみな、イタリア中部ロマーニャ地方に集中しています。
エミリア・ロマーニャ州は伝統的にモータースポーツが盛んで、モデナ近郊にはフェッラーリ、
ボローニャ近郊にはランボルギーニ、デュカーティとそれぞれの拠点があります。
名ライダーが生まれる土壌があるのかもしれませんね。


では、次に彼らの強力なライバルたちをみてみましょう。

ホルヘ・ロレンソJorge Lorenzo(スペイン/ヤマハ・ファクトリー)
--弱冠23歳の2010年王者。昨季までのロッシのチームメート。

ダニ・ペドローサDani Pedrosa(スペイン/レプソル・ホンダ)
--2007年から常に年間2位または3位につける実力派。デビュー以来ホンダ一筋。

ケーシー・ストーナーCasey Stoner(オーストラリア/レプソル・ホンダ)
--2007年王者で、当時所属デュカーティのチームタイトル獲得は、非日本勢として34年ぶり。

ニッキー・ヘイデンNicky Hayden(アメリカ/ドゥカーティ)
--当時4連覇中だったロッシを抑えて2006年王者。ロッシとは今季からチームメート。


レーシングチームに注目し、その所属ライダーを応援するのも面白いと思います。
主な4チームを挙げてみます。

レプソル・ホンダ (ドヴィツィオーゾ、ペドローザ、ストーナー)
ヤマハ・ファクトリー (ロレンソ、スピーズ)
ドゥカーティ (ロッシ、ヘイデン)
ホンダ・グレシーニ (シモンチェッリ、青山博一)


レース決勝が行われる日曜日のバールは、モニター観戦する多くのお客さんで賑わいます。
ほぼ全員がロッシを応援し、彼のゼッケン「46」がついたグッズを持つ人も少なくありません。
さらに他のイタリア人ライダーやドゥカーティ・チームの活躍にも期待しています。

互いのサポーター同士の対決が面白いサッカー・セリエAとは違って、ロッシやイタリア勢への
応援でその場の皆が一体となるMotoGPは、とても気持ちの良いものです。
さらにほとんどが日本製マシンなので、ファンは日本に親近感を持つ人たちばかり。

実は私も日本ではまったく知らなかったし、バイクのメカニックなことは詳しくありません。
ですが、そうした「素人」でも楽しめるのがMotoGPです。
F1と比べても、ピットインは極端に少ないか無いことも多く、実際の順位が非常に分かりやすい。
さらに、抜きつ抜かれつ目まぐるしく順位が入れ替わり、展開がとてもスリリング。
最高時速300km以上のスピード感や、一瞬の転倒など、とても目が離せません。

イタリア国民が熱狂するスピードを、あなたもバールで体験してみませんか?
一緒にイタリア人ライダーを応援してもいいし、日本人としては青山選手の活躍もアピール
したいところです。

特に国内開催のイタリアGP(7月3日・ムジェッロ)、サンマリノGP(9月4日・ミザーノ)には
多くのイタリア人もサーキット場に足を運びます。
日本GPは10月2日。会場は「ツインリンクもてぎ」(栃木県茂木町)。
この「Motegi」はイタリアではとても有名で、ファンにとっても憧れのサーキット場です。
目の前で観戦すれば、モーター音や実際のスピードの迫力に圧倒されることでしょう!



さて最後に、開幕戦・カタールGPの結果をお伝えしておきます。

1位:ストーナー(オーストラリア/レプソル・ホンダ)
2位:ロレンソ(スペイン/ヤマハ・ファクトリー)
3位:ペドローザ(スペイン/レプソル・ホンダ)
4位:ドヴィツィオーゾ(イタリア/レプソル・ホンダ)
5位:シモンチェッリ(イタリア/ホンダ・グレシーニ)
6位:スピーズ(アメリカ/ヤマハ・ファクトリー)
7位:ロッシ(イタリア/ドゥカーティ)
8位:エドワーズ(アメリカ/ヤマハ・テック3)
9位:ヘイデン(アメリカ/ドゥカーティ)
10位:青山博一(日本/ホンダ・グレシーニ)

ストーナーが圧倒的な強さを見せて優勝。
マシンの強さが際立ったレプソル・ホンダ勢は、今季の最有力チームといえるでしょう。
期待のロッシは新しいマシンにいまだ適応できず大きく出遅れ。今後に期待がかかります。

次回第2戦は4月3日、スペインGPです!

2011/03/21

春の初日

今日は3月21日。
イタリアでは「今日から春が始まりました」と大きく報道されます。
「冬が終わった!」とみんな喜び、春の訪れを互いに喜び合って、幸せを感じる一日でもあります。

ところが実際にはまだ肌寒いことに変わりなく、昨日までと同様とてもコートは手放せません。
「春だよ!」と急かされても、「まだ春じゃない」と思ってしまうのは私が日本人だからでしょうか。

日本では春一番が吹いたり、実際に暖かくなってから、春の訪れを語り合いませんか?
「今日から春」だとやたら断定的に言って譲らないイタリア人を相手に、
私は毎年大人げなく意固地に議論してしまい、ちょっぴり苦い春の初日を迎えるのです。

日本では3月21日は春分の日ですね。
通念上「昼夜の長さが同じになる日」だといい、これから日が長くなる楽しみがあります。

結局はほんのちょっとした考え方、言い方の違いで、春を喜ぶ気持ちに変わりはありません。
しかし、自然の中に季節の移ろいを感じ、毎年春の訪れの早さ遅さに気を揉む日本人としては、
常にカレンダーの同じ日に春を開始するイタリアの言い回しに、文化の違いを感じてしまいます。


桜前線の北上を予想する日本の天気予報を話すと、イタリアでは本当に驚かれます。
「満開の桜の下でお花見をする」というと、とても詩的な風景を思い描くようで感心され、
「春分の日は春の彼岸の中日で、お墓参りに行く」というと、興味深そうに尋ねてきます。

逆に、イタリアでの春の行事はパスクア。つまりイースター(復活祭)です。
パスクアの日は毎年違って、春分の日のあとの最初の満月の次の日曜日。翌月曜まで祝日です。
これは宗教行事ですが、長い冬が終わり春の訪れを感じさせてくれる風物詩でもあります。

今年のパスクアは4月24日。
パスクアのお菓子コロンバや、卵型のチョコレートなど、すでにスーパーに大量に並んでいて、
あとは春の暖かさを待つばかりといったところ。


「暑さ寒さも彼岸まで」というので、冬の寒さも一段落でしょうか。
イタリアでは短い春を経て、すぐに長い夏が到来します。
イタリアが最も美しく輝く季節まであと少し。そんな期待を抱かせる「春の初日」です。

2011/03/20

日本の大地震とイタリアの反応

3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生しました。

地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、
被災された皆様、そのご家族の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

また震災から10日目の本日、石巻市で80歳女性と16歳少年を救出という報道がありました。
一刻も早く救助活動が進み、少しでも多くの命が救われるよう祈念いたします。


地震があったのは日本時間14:46(イタリア時間06:46)頃のことでした。
私は朝から鳴り響く電話の音で目が覚め、イタリアの友人たちが日本の大地震と被害状況を
伝えてくれました。それからは日本との連絡、情報収集に奔走することになりました。

ここイタリアでも、日本の大地震は連日一面記事、トップニュースとして大きく報道されています。
ニュース映像で伝わる被災地の惨状に、誰もが言葉を失い、ショックを受けています。
イタリア政府も支援を表明し、募金活動もすでに始まっています。


意外に知られていませんが、イタリアはヨーロッパの中では地震大国です。
1997年9月の大地震はアッシジを襲い、ジョットのフレスコ画などが崩落したサン・フランチェスコ
聖堂をはじめ甚大な被害を受けました。14年経った現在でも、その爪痕はまだ残っています。
最近では、2009年4月にアブルッツォ州ラクイラを中心とする大地震がありました。
この地震による避難所生活で、私のイタリア人の友人も亡くなっています。

地震に敏感なこうした国民感情もあって、連日温かい励ましの言葉を受けています。
「大好きな日本人がこんな被害に遭うのは耐えられない」「私たちがそばにいる」など…。
イタリアに集まる世界の人々も日本への支援に動いていることを実感しています。


また、イタリア人には特別な思いで日本の地震被害を見守っていることがあります。
それは、原子力発電所。

かつてイタリアにも原発はありました。
しかし1986年にソ連(現ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原発事故を機に、国民投票で
原発放棄を決定。4ヶ所あった原発をすべて廃止したのです。
その後は慢性的な電力不足を抱え、その一部をフランスやスイスからの輸入に頼ってきました。

こうした中、現在の保守系ベルルスコーニ政権が原子力発電回帰を掲げ、2013年までの建設、
2020年までの稼働の計画を発表。これに反対した野党が提訴し、憲法裁判所がその是非を問う
国民投票の実施を決定。その投票日が6月12-13日に迫っているのです。

ですから、現在も復旧作業が進む福島原発の問題は、イタリア国内に大きな一石を投じました。
原発反対派が勢いを増しており、ついには閣僚からも疑問の声が上がるほど。
今後議論はますます紛糾することは間違いありません。


地震当日の夜、長友選手ら先発全員喪章をつけて臨んだインテルの試合がありました。
カメルーン代表でもあるインテルFWエトー選手が先制点を決めた時のこと。
ゴール直後、彼は長友選手を呼び、「あなたたちの祖国へ」と言って強く抱き締めました。
自分までも、また日本人全員が抱きしめられたように感じ、言葉にならない感動を覚えました。

今、世界中のスポーツイベントで日本への支援メッセージが発信されています。
日本からは、プロ野球の開幕延期、Jリーグの中断などのニュースが入ってきます。
しかし選手たちの諦めない全力プレーは、被災地に必ず勇気を与えるものだと思います。
一日でも早くそうした環境になるよう心から願っています。


イタリアに住む日本人たちには、遠い国で情報を集めることしかできない無力感がありました。
しかし、今はそれぞれの形で支援活動を始めています。
私たちはすぐに日本に行けない代わりに、世界の人々に訴えかけることはできます。
復旧へと立ち向かう被災地の方々の強さには及ばなくても、少しでも助けになれるよう…。

今こそ世界中の日本人、いや世界中のすべての人々で結束していきましょう!!

2011/03/08

すべての女性にミモザの花を!


毎年3月8日の女性の日(Festa della Donna)をご存じですか?
「国際女性デー」という世界的な記念日ですが、イタリアではとても大きなイベントです。

この日、男性は女性にミモザの花を贈ります。
家族、友人、職場の同僚などすべての女性に、日頃の感謝の気持ちを伝えるのです。

花屋さんだけでなく、街角のいたるところでミモザを抱えた花売りが現れます。
バールではミモザの造花のオマケがついた限定商品(チョコレートなど)を販売したり、
なかには女性客全員にミモザをプレゼントする粋なお店も!
もらった花を手に歩く女性が目立ち、ふわふわした黄色いミモザの花で街は華やぎます。

家庭では、この日は男性が家事をすべてこなします。料理、掃除、洗濯…。
慣れない家事に汗をかきながら、子供たちが一生懸命手伝ってくれます。
女性は妻としての仕事、母としての仕事から離れ、自由を満喫する日でもあるのです!

バールやディスコ、クラブなどは、夜になると女性でいっぱい。
女性は入場料が無料になったり、特別イベントが開催されたりするので、
女友達同士、飲んで踊って思いっきり騒ぐのです!


日本では女性の日はほとんど知られていませんよね?
でも、とても素敵な習慣だと思いませんか?

もしバーで恋人と過ごすのなら、「ミモザ」という日本では有名なカクテルがあります。
シャンパンとオレンジジュースをシャンパングラスに注いだもので、ミモザと同じ黄色が
とても鮮やか。優雅で口当たりも良いです。
このカクテルをさりげなく注文するとカッコイイかもしれませんよ!
(フランス由来のカクテルで、イタリアでは無名。現地バールでは通じないのでご注意を)


街がミモザの黄色に染まるこの頃から、イタリアにも春の匂いが漂い始めます。
長く厳しい冬が終わり、春の訪れを感じさせる風物詩でもあるのです。

2011/03/06

適応能力を示した長友選手のイタリア初ゴール!

今日午後行われたサッカー・セリエA、インテルvsジェノア戦で、インテルDF長友選手が
見事ゴールを決めました!
チェゼーナ時代も含めて、イタリアでの初ゴールです。

この日は後半33分からの途中出場でしたが、4-1と大きくリードしている状況もあって
積極的に攻撃参加した結果生まれたゴール。
うまく反転して力強くゴール隅に決めた、ストライカー並みの技ありシュートでした!

特に印象的だったのが、ゴールを決めた後のチームメイトの祝福です。

司令塔スナイデルに手荒く抱きつかれながらも、アシストしたMFカルジャらも引き連れて
ベンチのレオナルド監督のもとへ一直線!
もみくちゃにされた後は、エースのエトー、キャプテンのサネッティらも加わり、
輪になってお辞儀のパフォーマンス!スタジアムは「ナガトモー!」の大合唱でした。

5点目というお祭り騒ぎもありましたが、祝福するチームメイトたちの表情を見れば、
長友選手が誰からも愛され、皆が彼の初ゴールを讃えている様子が分かります。


世界最高峰リーグのひとつであるセリエAには、これまでも日本人選手が挑戦してきました。
結果を出している選手はわずかですが、彼らに共通しているのはイタリア語を覚えたこと。
逆に結果が出せずに短期間で撤退していったのは、練習やインタビューで積極的に喋らず
学ぼうとしたのかどうかも定かではない選手たちです。

どの選手も高い技術は持っていました。
違いを分けたのは、チーム内でコミュニケーションをとったか、孤立したか、という点。
これはとても大事なこと。

私もバリスタとしてイタリアで何回もバールを「移籍」してきました。
その度に新人としてまずイタリア人のオーナー、同僚、お客さんの中に入っていくとき、
技術の前に最も大事なことが、コミュニケーションだと痛感しました。

イタリアには、日本のように「相手の考えを察する」という習慣は、一切ありません。
自己主張をして初めて自分の性格や考え方、意思が伝わるのです。
黙っていては、不気味どころか、存在すら気づいてもらえない屈辱を味わうことになります。

長友選手はまずチームメイトとじゃれ合い、好印象を与えています。
(仲良くなるには、いつだってシンプルな方法が一番!)
そうすることで、周りからアドバイスや気遣いを受け、ピッチではボールを回してくれ、
ミスをしてもカバーしてもらう、と容易に想像できます。
結果的にチームや戦術に早く適応することができ、これが成功するカギなのでしょう。
そしてすぐに結果を出せば出すほど、オーナーやサポーターの信頼は強くなります。

これはスポーツ選手のみならず、どんな職場でも、どんな学校でも同じことですよね。


ただ、イタリアに暮らす世界中の人たちと接してきて気づいたことがあります。
日本人の傾向としてコミュニケーション下手があり、それは他のどの国の人たちよりも
ズバ抜けていることです。

単に語学力不足、恥ずかしがり、といった性格的なものより、文化的な違いも大きいでしょう。

それは例えば、人を笑わせるジョークにも如実に表れていると思います。
イタリア人は誰もが笑えるような一般的な話題をネタにするのに対し、
日本人は知っている人には思い切りツボにハマるようなコアな言葉や表現を使います。
多様性に働きかける外向的アプローチと、同一性に働きかける内向的アプローチの違いは、
コミュニケーション手段としては対極で、文化の壁をまず感じる部分だと思います。

これは日本の、島国という地理、他民族とほとんど交わらず同じ文化を共有してきた歴史に
よるところがあるので仕方がありません。
しかし世界のほとんどの国には、異民族・異教徒らに侵略され支配された過去があって、
自衛のため、生き延びるため、自分の存在を理解させる意思表示が必要だったのです。
この価値観の根本さえ理解できれば、国際的なチームの中で自分が何を伝えるべきか
知ることは難しくないはずです。


ところが同時に、日本人が他の国の人たちに比べてズバ抜けていることが、他にもあります。
思いやり、真面目さ、器用さ、緻密さ、論理性、組織力といった、とても優秀な部分です。
日本人がどの国でも嫌われない、むしろ尊敬されている、特別な評価だと思います。

イタリア社会の中でも、多くの日本人が重用され活躍しています。
皆、明るく、主体的で、エネルギッシュな方々ばかりです。

長友選手もその素晴らしい見本となっています。
強豪インテルで出場し続けることはとても難しく、時にはスランプに陥ることもあるでしょう。
しかし、どんな厳しい状況も打開していく精神力が彼の一番の強さだと思うのです!


優秀な日本人が世界へと活躍の可能性を広げるために、実践的な外国語教育、および
コミュニケーション能力につながる主体性・表現力・適応力を身につけられる社会環境に
なっていってほしいと願います。
日本製工業製品というハードだけでなく、人材やサービスといった日本が誇るソフトも、
もっと輸出していく時期にきているのではないでしょうか?

2011/03/05

ミケランジェロ生誕祭

ミケランジェロ(Michelangelo Buonarroti)といえば、いわずと知れた天才芸術家。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエッロと並び、ルネッサンスの三大巨匠ともいわれています。
彫刻、絵画、建築などにおいて、傑出した作品を世に残しました。

ミケランジェロは、1475年3月6日フィレンツェ共和国カプレーゼ生まれ。
13歳のとき、フィレンツェの画家ドメニコ・ギルランダイオに弟子入りしたのち、
フィレンツェの支配者ロレンツォ・デ・メディチ(Lorenzo il Magnifico)の自宅に引き取られ、
メディチ家の庇護のもと偉大な芸術家として成長していきます。
のちに活動拠点をローマに移しますが、フィレンツェが彼を芸術家として育てたのです。


そのフィレンツェで明日3月6日、ミケランジェロの生誕祭が催されます。

朝9:30から始まる時代行列(Corteo della Repubblica Fiorentina)に注目!
ミケランジェロの傑作ダヴィデ像のあるシニョリーア広場・市庁舎前(現在はレプリカですが、
元々オリジナルがあった)を出発。彼のお墓があるサンタ・クローチェ教会まで行列は続き、
墓前に花輪が供えられることになっています。
続いて、教会近くにあるミケランジェロ由来のブォナッローティ邸(Casa Buonarroti)でも
記念の花輪が献花される予定です。

ちょうど日曜日なので人手も多いことでしょう。
フィレンツェにお立ち寄りの際は、ぜひ足を運んでみてくださいね!

2011/03/03

リソルジメントとイタリア統一150周年

3月17日はイタリア統一150周年記念日です。

150年前の1861年3月17日、イタリア議会においてイタリア王国の成立が宣言され、
初代国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世が即位しました。

これは19世紀に起こったイタリア統一運動・リソルジメントRisorgimentoの大きな成果です。

それまでのイタリアは、5世紀の西ローマ帝国滅亡以来、外国勢力による分割支配、
ローマ教皇領の成立、都市国家の分立が続き、半島は分裂状態にありました。

その歴史を変えたのは19世紀初め、フランス皇帝ナポレオンによるイタリア統一です。
ナポレオン後の欧州の新秩序を決めたウィーン会議で再びイタリアは分割されたものの、
わずか一時期でも統一されたことは、イタリアの民族意識を高めました。

ちなみに彼の出生地・コルシカ島は、彼が生まれた1769年にフランス領になりましたが、
それ以前はイタリアの都市国家ピサ、続いてジェノヴァに支配されていました。
ナポレオンの生まれたブォナパルテ家のルーツはイタリア・トスカーナ州の貴族で、
16世紀頃にジェノヴァ共和国の傭兵隊長としてコルシカ島に土着したといわれています。
フランス本土に渡った時にフランス風にボナパルトと改名していますが、
今でいう、イタリア系フランス人だったわけです。

さて、そのウィーン会議後から展開されたのが先述のリソルジメント。
初期は秘密結社・炭焼党Carbonariが各地で武装蜂起して革命を主導しました。
続いて、元党員ジュゼッペ・マッツィーニG. Mazziniが結成した青年イタリアGiovane Italiaが
統一運動の中心を担うも、フランスの軍事介入などでそれも失敗します。

代わりに登場したのが、サヴォイア王家が統治するサルデーニャ王国(首都トリノ)です。
サルデーニャ国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世により首相に就任したカミッロ・カヴール
(カヴール伯爵カミッロ・ベンソ)は、革命ではなく外交によって統一事業を進めました。
国内では産業、交通、教育、軍隊の近代化政策を推し進め、立憲君主制国家として
イタリア統一に向けて他の半島諸国の支持を集めます。
さらにフランスなどの大国と同盟関係を結び、イタリア統一に有利な国際関係を構築しました。

 そしてもう一人。軍人ジュゼッペ・ガリバルディG. Garibaldiの登場で統一は加速します。
商船隊の船乗りだった彼は、寄港先での出会いから青年イタリアに参加し、ジェノヴァで
マッツィーニと会見した際に炭焼党にも加わりました。
南米各地の戦争や革命でゲリラ戦術を身につけ、北米や太平洋まで航海をし、
イタリア各地では義勇兵を率いて戦っています。

契機となったのは1860年のシチリア島での反乱でした。
千人隊(赤シャツ隊)と呼ばれる義勇兵を組織し、わずか2隻の船でジェノヴァを出港。
シチリア島マルサラに上陸したのち、各地の反乱軍を取り込みながら全島を制圧。
そのまま海峡を渡ってナポリに進軍し、両シチリア王国を滅ぼします。
そしてなんと、これら南部の征服地を、何の見返りも求めずヴィットーリオ・エマヌエーレ2世に
献上したのです!

イタリア中部諸国もサルデーニャ王国への併合を決め、1861年、統一国家イタリア王国が
建国されました。

マッツィーニ、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世、カヴール、ガリバルディらの名前は、
現在でも各都市の主要大通りの名前になっているので、聞いたことはあるかと思います。
リソルジメントの英傑として、統一イタリア・建国の父として、大きな尊敬を集めているのです。


ガリバルディ千人隊(赤)とサルデーニャ王国軍(青)の進路


Vittorio Emanuele II,  Camillo Benso Conte di Cavour
Giuseppe Mazzini,  Giuseppe Garibaldi

5世紀以降のイタリア半島分裂の歴史から見れば、現在の統一イタリアはとても若い国家です。
各地域ごとの文化的多様性はこの歴史から生まれたもの。
現代イタリア人がいまだに統一イタリア人としての共通意識を持てないのもこのためで、
ミラノ人、ヴェネツィア人、フィレンツェ人、ローマ人、ナポリ人、シチリア人などと自称しています。

「イタリア人として一致団結できるのは4年に1度、サッカー・ワールドカップの時だけ…」と
冗談めかして言われます。
しかし統一150周年を機に、同じ民族としてより強くまとまっていくことを願い、
リソルジメント(=再生・復興)の文字通り、より新しいイタリアの姿を見せてほしいものです。

日本人にとっても、リソルジメントを知る絶好の機会となるでしょう。
ローマ帝国やルネッサンスの歴史は有名でも、リソルジメントがほとんど知られていないことは
残念でなりません。現代イタリアを理解する出発点だからです。
また、統一された1861年は、日本の明治維新(1868年・明治新政府発足)の時期と重なります。
幕末の志士が活躍した近代化への道同様、純粋に歴史物語としても興味深いものです。


こうしたリソルジメントの歴史を振り返る上でも、今年は関連イベントが目白押しです。
統一戦争ゆかりの各地で様々なイベントが企画されているので、注目してみてください。
公式ウェブサイトはこちらhttp://www.italiaunita150.it/(イタリア語のみ)

150周年記念日当日の今月17日は、学校は休校となり、国民の祝日扱いとなります。
首都ローマをはじめ、イタリア全土で祝賀行事が盛大に催されることになっています。

こんなにも魅力的な国が誕生した150年目の記念日、私たちも一緒にお祝いしましょう!

2011/03/02

バリスタの選び方

「良いバール」の選び方。
これを説明するのはとても難しいこと…。
個性的なバリスタの集合体がバールなので、味も応対もバリスタによって大きく違うからです。

バールとバリスタの関係は、美容院と美容師の関係に似ている、といえば分かりやすいのでは?
お気に入りの美容師さんにいつも担当してもらう人も多いでしょう。
美容師さんが異動したり独立開業すれば、その新しいお店に通うことも珍しくないはずです。

それはバリスタも同じ。
技術の差や味覚のセンスが、作ったドリンクにそのまま体現される。いわば職人的な仕事です。
そしてイタリアには「接客マニュアル」がありませんから、素のとても自然な対応になります。
親切な人もいれば無愛想な人もいる。話が合う人と合わない人も当然いるでしょう。

また、どんなに優秀なバリスタでも、誰もが意外にも苦手なジャンルを持っています。
素晴らしく美味しいカフェを淹れるのに、カクテルのことはイマイチ分からない…。
オリジナルカクテルを作れるほどの腕前なのに、カプチーノの出来には少々ガッカリ…。
ワインはソムリエ並みの知識をもつ達人、創造力豊かにおつまみを作り続ける達人、
話術だけでドリンクを美味しく楽しく飲ませる雰囲気作りの達人…、などなど。

それだけバールで扱う範囲が広いということ。
すべてを無難にこなすゼネラリストではなくても、それぞれがスペシャリストたちです。
ですから、どのバリスタが何のスペシャリストなのか観察してみるのも、面白いと思いますよ!

しかし当然、お店による違いもあります。
コーヒー豆の選別、保管・管理方法、マシンの機種、ケア、お酒の銘柄、グラスやカップの種類…。
また、お店のつくり、内装、雰囲気も、味の印象を左右する大きな要素です。

さらに、他のバリスタと共同で管理していくものもあります。
コーヒー豆の挽き目の調整はトップバリスタの役割。他のバリスタは触ることも許されません。
共同で使う材料や備品も、自分だけのやり方で管理できるとは限りません。

例えば、一人のバリスタがミルクを冷蔵庫に入れず熱いマシンのすぐ横に放置していたり、
必要分量以上のミルクをスチーミングしてミルクピッチャーのなかに残すようでは、
次に使う他のバリスタは美味しいカプチーノを作ることができません。

また、バンコ(カウンター)の作業スペースは常に整理整頓され、清潔に保たれていないと
素早く正確なドリンク作り・提供が行えません。

日本では店舗で統一ルールを細かく設定し、スタッフ全員がそれを遵守します。
しかしイタリアの、特に小さなバールではそうした習慣はほとんどないのが現実。
オーナーやトップバリスタがしっかり指導しているようなお店なら、
どのバリスタも個々の持ち味を充分発揮して働くバール、だといえるでしょう。

各店舗の設備やオーナーの方針も違うので、馴染みのバリスタが別のバールに移っても、
「味が変わった」ということは当然あります。
しかし同じバールでも、例えばエスプレッソの場合、気温や湿度によっても味は若干変わります。
朝と夕方、晴天と雨天などで味は変わり、そのためにバリスタは一日に何度かマシンの調整を
しています。
また、バリスタも人間ですから気分の良い日と落ち込んでいる日があり、エスプレッソマシンも
まるで感情があるかのように日々調子は違います。
両者はまさに相棒で、日々お互いのフィーリングを確認し合いながら目指す味を探るのです。

チェーン展開が主流の日本において、エスプレッソマシンの取り扱いは非常に難しいものです。
従来の喫茶店、シアトル系などはもちろん、イタリアンバールをうたっているところでさえ、
オートまたはセミオートのエスプレッソマシンを使っています。
ほぼ均一の味が出せるうえ、学生アルバイト店員でも簡単に扱うことができるからです。

イタリアのバールにはオートマシンは存在しません。断言できます。
なぜでしょうか?
それは、オートマシンよりも格段に美味しいカフェを淹れることができるからです。
使い方を知らなければオートマシンよりもひどいカフェができてしまうし、抽出も不安定。
だからこそ、バリスタはプロの仕事なのです。

また、イタリア人にとって「均一の味」ほどつまらないものはありません。
日々に変化があることは人生では当たり前であり、むしろそれが人生です。
カフェも同じこと。
人が作り、人が飲むものですから、そこには常に変化に富む表情豊かな味があります。
苦味も甘味もすべては人生の味。
その味の違いを楽しめるようになれば、あなたはもう立派なイタリア人です!

2011/02/28

バールの新聞

バールにはたいてい新聞が置いてあります。
主に全国紙、地方紙、スポーツ紙の三部であることがほとんど。

バリスタの仕事は、実は出勤前に新聞スタンド・エディーコラ(Edicola)に寄って新聞を買い揃える
ことから始まります。
エディーコラの主人もいつも誰がどの新聞を買っていくか分かっているので、
挨拶や雑談をしているあいだに、何も言わなくても新聞を受け取りお金を払っているという具合。

それから出勤。
まだ誰もいない薄暗い店内に入り、制服に着替え、今朝もバールに命を吹き込みます!
すべての機器のスイッチを入れ、ブリオッシュ(クロワッサン)をオーブンで焼き、
エスプレッソの味を調整し、バンコ(カウンター)を整え、新聞を並べます。
ブリオッシュが焼きあがったらすぐにオープン!
焼きたてのブリオッシュとカプチーノで朝食をとる人たちですぐに賑わいます。

彼らのバールでの朝食に欠かせないのがもう一つ、それが新聞なのです。
イタリアは、家庭に新聞が配達される習慣がないので、それぞれエディーコラで買うか、
バールで読むことになります。
ただし回し読みなので、一人で長時間独占しないのが暗黙のルール。
大きなニュースがある朝は、新聞を持ちながら周りに読み聞かせる人がいたり、
演説を始めたり、バリスタも巻き込んでみんなで議論になったりすることもあります。
(ここがいかにもイタリアらしいところ…)

特に月曜日の朝は多くの人が新聞を目当てにバールを訪れます。
ここでの主役はスポーツ新聞。
日曜日に行われるサッカー・セリエAの試合結果と記事に目を通すため。
新聞はめまぐるしく、次から次へと回し読みされていきます。

読み終えてそのままテーブルの上に置いている人がいれば、尋ねてみましょう。
新聞を指さしながら、「ポッソ?Posso?」=「(読んでも)いい?」と言えば大丈夫!
朝もピークを過ぎた11時以降なら、独占してゆっくり読んでも構いません。

昨日もインテルの長友選手がフル出場で活躍しました。
本職の左ではなく、右サイドバックとして初出場し、精力的なプレーで勝利に貢献しました。
今朝の各スポーツ紙は、長友選手に6.0の評価をつけています。

イタリア語が読めなくても、この評価点だけチェックしても面白いですよ!
10点満点ですが、満点がつくことはまずありません。
及第点の6.0を基準に、活躍すれば6.5、抜群に素晴らしいプレーなら7.0~7.5。
逆にやや不調なら5.5、悪ければ5.0、よっぽどひどいプレーなら4.0がつきます。

バールはただ飲食をするだけの場ではありません。
イタリア人が一日に何度もバールを利用するのは、情報収集の場でもあるからです。
その情報収集の手段の一つが新聞であり、他のお客さんやバリスタが添える追加情報なのです。
その会話こそ、イタリア人の庶民生活に入っていく大きな入口だといえるでしょう。

2011/02/18

冬のお祭り・カルネヴァーレ

今年もいよいよカーニバルの時期が近づいてきました!
カーニバル(謝肉祭)は、イタリア語でカルネヴァーレ(Carnevale)といいます。

毎年1月から3月の間に行われますが、日取りは年ごとに違います。
それは、その年のイースター(復活祭)の日に関係しています。
イースター(復活祭)の46日前にあたる灰の水曜日(Mercoledì delle Ceneri)がキーワード。

灰の水曜日からイースター前日の聖土曜日(Sabato Santo)までの四旬節(Quaresima)は、
肉や卵を断つなど食事の節制や、娯楽・祝宴の自粛、祈り、悔い改めなどを行う、
カトリック教徒の節制の期間です。
その四旬節が始まる前に飲めや歌えのドンチャン騒ぎをするのが謝肉祭なのです。
ですから、灰の水曜日の前日、贅肉の火曜日(Martedì Grasso)を最終日として、それまでの
数日から数週間カルネヴァーレが派手に催されるのです。

今年の贅肉の火曜日は、3月8日。
この日まで、どんな小さな村でもイタリア中で派手なお祭りが続きます。

大きな都市では、仮装した人々の華やかな山車行列(Corsi Mascherati)が見られます。
からくり仕掛けの巨大な山車の上で音楽にのせてみんな踊り、その周りを仮装した観衆が
取り囲みます。時には山車からキャンディが投げられることもあり、それを奪い合う姿も大迫力!
それぞれの山車はひとつのチームで、優勝をかけたコンテストの作品でもあります。
一番気に入った山車にぜひ投票してみてください!

この時期イタリアを旅行された方は、カラフルな紙屑が路上に大量にまき散らされているのを
見たことがあるのでは…?
この細かい色紙(Coriandoli)をお店で買ってきて、子供たちが投げ合って遊ぶのです。
山車行列の会場などでは、道路一面を覆うほど積もることになり、圧巻です。
お店ではこの他、仮装セットが売られていて、子供にはドラゴンボールやNARUTOなど日本の
アニメキャラクターの衣装が大人気!

バールでは、カルネヴァーレ伝統のお菓子を用意しています。
代表的なものが、リボン状の揚げ菓子。地域によってたくさんの名前があり、キアッキエーレ
(Chiacchiere)、チェンチ(Cenci)、ブジエ(Bugie)などと呼ばれています。
ヴェネト地方のドーナツ菓子(Frìtole)や、ロマーニャ地方の揚げ菓子(Castagnole)など、
砂糖をまぶした揚げ菓子が多いようです。
カフェやホットチョコレート、ホットワインなどで身体を充分温めてくださいね!
真冬のお祭りはとても冷えますが、みんなと踊ってしまうのが一番かもしれません!

イタリアでの三大カルネヴァーレといわれているのが以下の3つです。
ヴェネツィア(Carnevale di Venezia)、ヴェネト州
ヴィアレッジォ(Carnevale di Viareggio)、トスカーナ州
イヴレア(Storico Carnevale di Ivrea)、ピエモンテ州

なかでもヴェネツィアは世界的にも有名ですよね。
伝統の美しい仮面をつけ優雅に歩く人々、幻想的な水上都市がさらに魔法にかけられたよう。
明日19日土曜日、サンマルコ広場でのワインの乾杯でヴェネツィアのカルネヴァーレは
始まります!

2011/02/16

イタリア・ダービー

一昨日、イタリア・ダービー(Derby d'Italia)がありました。
ダービーといっても競馬ではなく、サッカー・セリエAにおけるユヴェントスvsインテル戦のこと。

サッカーのダービーマッチは、通常は同じ町を本拠地とするチーム同士の対戦をいいます。
バールには同じ町の両サポーターが通うわけですから、日頃からコーヒーを飲みながら
激しい舌戦が繰り広げられ、ライバル関係を煽ります。
それがダービー直前ともなると熱気は一気にヒートアップ。
ピリピリしたムードまで漂い、息をのんでモニターに見入る試合開始前は、こちらまで手に
汗を握ってしまうほど!
そして勝ったチームのサポーターは以後バールで大きな顔でダービーの勝利を語り続け、
負けたチームのサポーターは毎日肩身の狭い思いをしつつ、苦々しくカフェを飲み、
次回のダービーでの雪辱を胸に誓うのです。

イタリア人のサッカーへの情熱と興奮が頂点に達するダービーは、バールで彼らとともに
体感するのが一番です!
持っているビールがこぼれそうなほど身振り手振りを交え、怒号が飛び交い、
通り抜けられないほど満員のバールは、熱気充分!
ゴールした瞬間の爆発的な喜びの一体感は、イタリアの情熱に触れた瞬間といえるでしょう!


今シーズンのセリエAで実現する同じ町のダービーは以下の3試合があります。

ミラノ・ダービー(Derby di Milano)、インテルvsACミラン
ローマ・ダービー(Derby di Roma)、ASローマvsラツィオ
ジェノヴァ・ダービー(Derby di Genova)、ジェノアvsサンプドリア

毎年セリエAは、下位チームとセリエB上位チームが入れ替わります。
ですので、歴史的に有名な以下の2試合も、いずれまた観ることができるでしょう。

トリノ・ダービー(Derby di Torino)、ユヴェントスvsトリノ
ヴェローナ・ダービー(Derby di Verona)、キエーヴォvsヴェローナ

また、都市国家が分立していた時代が長かったイタリアは、近隣都市同士の対抗意識が
とても強いのが特徴です。主に、同じ州の町同士のダービーとなることが多いです。

エミリア・ダービー(Derby d'Emilia)、パルマvsボローニャ
プーリャ・ダービー(Derby di Puglia)、レッチェvsバーリ
シチリア・ダービー(Derby di Sicilia)、パレルモvsカターニア


では、イタリア・ダービーはなぜユヴェントスとインテルの対戦なのでしょうか。
イタリアという枠なら、すべてのチームが該当することになるはずです。

実はイタリア・ダービーと呼ばれるようになったのは1967年のこと。
当時、優勝回数が最も多い上位2チームの対決に、ジャーナリストがそう名付けたそうです。
しかし、両チームのサポーター同士の特別な対抗意識もダービーの由来だといいます。
実際、その後ACミランがインテルを優勝回数で上回った時代もありましたが、
それでもイタリア・ダービーはユヴェントスとインテルの対戦に変わりありません。
(現在は再びインテルがACミランを優勝回数で上回っています)

また近年では、一度もセリエBに降格したことのない2チーム、という由来も語られますが、
正しくありません。1967年当時、ACミランとボローニャも降格未経験のチームでした。
それぞれ80年、82年に降格を経験し、2006年にはユヴェントスもついに降格しています。
インテルは、現在まで一度も降格せずにセリエAでプレーしている唯一のチームなのです。


一昨日のイタリア・ダービーは1-0でユヴェントスが接戦を制しました。
スタジアムでは発煙筒が焚かれ、爆音が轟き、異様な雰囲気に包まれました。
サポーターのみならず選手たちも特別な思いでダービーに臨みます。
想像を絶する緊張感と重圧のなかでいつものプレーができない選手もいますが、
ここで活躍すれば以後何年も語り継がれるヒーローになることができます。
後半途中出場した長友選手にとっても、ひとつ大きな経験になったはずです。

セリエAも今シーズン残り13試合となりましたが、まだまだダービーは続きます。
明日はジェノヴァ・ダービー。町のシンボルを冠して別名・灯台ダービー(Derby della Lanterna)。
最も古い歴史をもつダービーと言われ、毎回激しい試合展開をみせる注目のカードです!

3月13日にはローマ・ダービー、4月3日のミラノ・ダービーおよびシチリア・ダービー、
5月8日の再びジェノヴァ・ダービーおよびエミリア・ダービー、5月15日のプーリャ・ダービーが
残されています。

強烈な対抗意識と特別な緊張感、時には暴動にまで発展する熱戦をぜひお見逃しなく!

2011/02/13

聖ヴァレンティーノの日

2月14日はバレンタインデーですね。
イタリアではサン・ヴァレンティーノ(San Valentino)と呼ばれています。

サン・ヴァレンティーノは、3世紀頃ローマ帝国時代の聖人で実像がハッキリしませんが、
イタリア中部のウンブリア州テルニ(Terni)出身だと言われています。
実際にテルニの町にはサン・ヴァレンティーノ教会(Basilica di San Valentino)が建ち、
2月14日は町の守護聖人サン・ヴァレンティーノの祝日です。

今では、「恋人たちが愛を誓う日」という世界的なイベントですよね。
ただ、その発祥の地イタリアと日本とでは様々な違いがあることはご存じですか?

イタリアではチョコレートに限らず様々な物を、恋人同士お互いに贈り合います。
あくまでも恋人同士のささやかなイベントなので、職場や学校で義理チョコを配る
ことは絶対にあり得ません。
日本人女子留学生が「友人のイタリア人男性たちに配り歩いて大きな勘違いを
された」という失敗談が毎年生まれるので、イタリアではご注意を!

また、この日をキッカケに意中の男性に告白するという習慣もありません。
男女互いに贈り合うので、1ヶ月後のホワイトデーも存在しないのです。
好きになったらすぐ、いや好きになる前から猛アタックをするのがイタリア流!
さすがラテン系の情熱には敵いませんね…。

イタリアのバールでは、この日を迎える数週間前からプレゼント用商品の販売が
始まります。特別仕様チョコレート、お菓子、限定グッズなどなど。
大切な人とイタリアでバレンタインデーを迎える機会があれば、バールをのぞいて
みるのも面白いと思います。
サービス精神旺盛なバリスタが、カップルに粋な演出をすることもありますよ!

素敵な一日をお過ごしください!
日本でも、新しい恋がたくさん生まれることを願っています!

2011/02/08

日本代表DF長友佑都、インテル・ミラノで歴史的デビュー!

昨日6日、日本代表DF長友佑都選手がイタリアの名門インテル・ミラノでデビュー!

伝統のスタジアム・本拠地サン・シーロでASローマを迎えた重要な一戦。
レッドカードで10人となったローマ相手に4-1とリードして迎えた後半、長友選手が投入され、
初のアジア人インテル選手として歴史的出場を果たしました。
そのASローマでプレーした中田英寿氏を越えたと言ってもいい、強豪チームデビュー。
正直、インテルのような強豪チームに日本人が加わるなんて、10年先だと思っていました…。
重要な一戦、かつ比較的プレッシャーの無い時間帯に投入し、本拠地のサポーターを前に
デビューさせたレオナルド監督の計らいにも粋を感じる。さすが元鹿島アントラーズ。
理解のある指導者を選んだ長友選手の判断は、賢明だったのでは。

私は行きつけのバールでワインを飲みながら観戦。
長友選手が途中交代出場すると、お客さんから大きな期待の声援が飛んだ。
テレビの実況・解説者や、スタンドの8万人の大観衆の反応でも分かるように、
長友選手への大きな期待が感じられた。

イタリア人サポーターの期待を大きく上回る彼のパフォーマンスに、バールもスタンドも
大きく揺れた。スピード、縦への突破力、絶好のアシスト、そして守備、どれもが強烈な印象。

今後、「ナガトモ」の名前が聞かれるだろうバール・カウンターのサッカー談議が楽しみ。
18年来のインテル・ファンとして、こんなに嬉しいことはない。
日本のイタリアサッカーファンといえば、ACミランやユヴェントスだった時代、
誰が今のインテルを予想していただろう。
当時負け続けていたインテルが、今は世界の頂点に立ち、アジア王者を迎え入れた!

バール『ベッラ・イタリア』オープン!バリスタの役割

こんにちは!仮想バール『ベッラ・イタリア』をオープンします!

バールとは、喫茶店を意味するイタリア語で、イタリアではとても重要な単語であり場所です。
そしてバリスタとは、そのバールでドリンクなどを作り、サービスをする職人のことをいいます。

イタリア人は毎日数回バールに立ち寄ります。
朝はカプチーノとクロワッサンで朝食をとり、昼はパニーノやピッツァ、パスタで素早く昼食。
午後は仕事の合間にエスプレッソで眠気を覚ましたり、仕事の打ち合わせにも利用します。
夕方はカンパリやベルモットなどイタリアンリキュールを中心とした食前酒の時間帯。
一日の仕事を終えて、家での夕食やレストラン、映画館等に行く前に皆立ち寄ります。
オリーブやサラミなどフリーサービスのおつまみとともに、馴染みのお客様同士、またはバリスタと
しばしお喋りを楽しみながら、仕事の疲れを癒していくのです。
夜は、ビールを片手に熱くサッカー観戦するのが定番。
さらに、カクテルを飲みに来る若者でバールは夜遅くまで大変賑わいます。

しかし、バールはただ飲んだり食べたりするだけの場所ではありません。
お菓子やタバコ、トト・カルチョ(サッカーくじ)の販売、公共料金等の払込み、公衆トイレなど
様々なサービスを提供しています。
また、何よりも重要なのが、地域コミュニティの主要な場所となっていることです。
お客様同士、近所の方々、バリスタ、新聞、掲示板などから新しい情報を得る絶好の場所なのです。

ここでは、バリスタは地域の世話役としてとても重要な役割を担っています。
政治から経済、スポーツまで毎日様々な話題を語り合い、その中でバリスタはお客様の近況、
健康状態まで細かく把握し、精神的なケアをしていくことで信頼を得ていきます。
時には恋愛相談をされたり、荷物を預かったり、伝言を頼まれたり、仕事の斡旋までします。
バールは重要な情報交換の場所であり、バリスタは常にその中心にいます。
お客様は信頼を寄せるバリスタの元に集まり、家の近く、職場の近く、外出先の近くなど、
少なくとも3軒の行きつけのバールを持っていると言われています。
出生から死に至るまで、人生の多くの時間をバールで過ごすことになるのです。

イタリア人はとても陽気ですが、同時にとてもしたたかで、力強く前向きに生きています。
私もバリスタとして彼らの人生の様々な場面に居合わせました。
純粋な子供たち、色気を覚えた若者、出会い、別れ、結婚、離婚、起業、倒産、出産と死。
とても人間臭く、あるがままの自分を見せる日常の場所がバールであり、
バリスタはイタリア人の人生の最大の目撃者でもあるのです。

イタリア人の生活が凝縮されている場所、それがバール。
ところが、イタリアと接するために訪れる日本人観光客の方々は、ほとんどバールに立ち寄りません。
レストランや土産物店、美術館は日本人で溢れているものの、バールとは未だに疎遠なのです。

私が普段バールで働いていて、日本の方々に紹介できないバールの利用法、イタリア人の日常の
出来事、最近のニュース、オススメ情報など、この仮想バール『ベッラ・イタリア』で、日頃お客様と
接するようにご紹介できればいいな、と思っています。

ちなみに、「ベッラ・イタリア」とは「美しきイタリア」という言葉。
イタリアは多くの魅力に溢れています。美術、料理、カフェ、ワイン、ファッション、オペラ、サッカー、
スポーツカー、歴史、自然、ひいては、思う存分人生を楽しむその生き様、価値観まで…。
そのすべての局面において思わず出る感動の一言、「なんと美しきイタリア…」。

イタリアの魅力や、意外な日常の素顔など、お伝えできればと思っています。
朝のひと時、午後のコーヒータイム、仕事上がりの夜の一杯…。
その安らぎの時間を、仮想バール『ベッラ・イタリア』のカウンターで過ごして頂ければ
こんなに嬉しいことはありません。

イタリアでは、バリスタとお客様は友人として接します。
私もイタリア流にラフにお話しします。
あなたのお話も、ぜひバリスタShirowにお聞かせください!