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2014/04/16

生ソーセージ・サルシッチャ

世界中で生産されるソーセージ。
ドイツのフランクフルト、オーストリアのウィンナーソーセージ、スペインのチョリソなどは
日本でもお馴染みですね。

ここイタリアも、実はソーセージ大国だということをご存じですか?

ソーセージは、イタリア語では「サルシッチャ」(Salsiccia)といいます。
古代よりイタリア全土で食されているサルシッチャは、各地方でカタチも大きさも多種多様ですが、各地の郷土料理を特徴づける主要な食材となっています。

猪肉や羊肉といった変わり種はあるものの、やはりその多くは豚肉が原料。
一般的には、塩、胡椒、ニンニク、ハーブ類、ワインなどによってすでに味付けがされています。
グリルやボイル、煮込み料理など、たいてい加熱調理されますが、熟成させた種類のものはサラミとして食されます。


一般的に日本では、豚肉を生で食べることはタブーとされていますね。
豚がもつウィルスや寄生虫を原因として、食中毒や感染症を引き起こすリスクが高いためです。
日本国内で流通している豚肉はすべて加熱用となっているはずで、充分に火を通せばウィルスは簡単に死滅するので、普段は気にすることもないはずです。

ところがイタリアでは、サルシッチャを生で食べる地域があるのです!
徹底した細菌検査や防疫飼育された豚の肉が流通しているためで、細菌が繁殖しにくい乾燥した気候条件もあるでしょう。多湿な日本ではなかなか難しいことです。

サルシッチャを生で食べる地域は、主にイタリア中南部。
なかでもフィレンツェのバールでは、生サルシッチャをはさんだパニーノを手軽に食べることができるので、訪れた際にはぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?

腸詰された中身の肉だけを取り出して、パンにはさんだだけ。
特に、スキアッチャータ(Schiacciata)とよばれるフィレンツェ風フォカッチャに、クリーミーなストラッキーノ・チーズと練り合わせた生サルシッチャをはさんだものは定番中の定番。
柔らかな甘味が口いっぱいに広がり、忘れがたい味として虜になる逸品です!

ただし、やはり衛生管理のしっかりしたバールを選ぶことをオススメします。
ご自身で生サルシッチャを購入する場合は、スーパーではなく精肉店に行き、生食用の新鮮で高品質のサルシッチャをお店の人に出してもらうようにしてください。

時にグルメは命懸け。
お金を出すだけなら簡単ですが、目利きを通した発見こそが味の醍醐味です!



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2013/01/27

魅惑のティラミス

おそらく、世界で最も有名なイタリアのデザートは、ティラミス(Tiramisù)でしょう。

イタリアでも全国的にポピュラーですが、不思議なことに、イタリア地方料理を扱う資料には
ほとんど登場しません。時折ようやく見つけるのは、「ヴェネト州のドルチェ」の記載だけ…。
それもそのはず、調べてみると、その発祥は1960年代。
近年考案された新しいドルチェなのです。

確かに、「地方の伝統菓子」と呼べる要素が少ないことは、その原材料を見ればわかります。
マスカルポーネ(Mascarpone)はロンバルディア州特産のチーズですし、エスプレッソに浸す
ビスケット・サヴォイアルディ(Savoiardi)は、ピエモンテ州、シチリア島、サルデーニャ島など
全国的に幅広い地域で盛んにつくられる、あまり地方色のないお菓子です。

イタリア各地にはティラミスに似たような伝統菓子があり、そこまで遡って関連付けると、
その発祥には様々な説があるようです。
しかし、「ティラミス」という名前で現在のレシピが考案されたのは、多くの料理専門誌によると、
イタリア北東部ヴェネト州・トレヴィーゾの、『ベッケリーエ』(Beccherie)というリストランテ。

「ティーラミ・スー!」(Tirami sù!)、つまり「私を元気づけて!」というフレーズがそのまま名前に
なった、斬新でキャッチーなネーミングと、オーブンなど特別な設備がなくてもつくれる手軽さも
受けて、瞬く間に世界中に広まりました。


いまだ記憶に新しい、日本のティラミス・ブームは、バブル景気全盛の1990年頃のこと。
当時は爆発的な人気を呼び、社会現象ともなったイタメシ・ブームをけん引する主役でした。
どのお店にも行列ができ、生産も追いつかないほどで、ようやく口にした時の今まで味わった
ことのない美味しさには感動したものです。

日本のティラミスは、スポンジ生地をベースにしたようなものでしたが、本場イタリアのものは、
やわらかくなめらかでクリーミーそのもの。

軽くソフトなサヴォイアルディは、たっぷり浸したエスプレッソが滲み出るほどジューシーで、
マスカルポーネと卵黄、砂糖で泡立てたクリームは、なめらかでとろけるような舌触りと、
甘美なコクが口いっぱいに広がります…。

ティラミスを目の前に、その誘惑を断れる人は少ないのでは…?そして一度口にすれば、
誰もが言葉を失い、うっとりと陶酔してしまう魔法が、ティラミスにはあるのです!


食後のデザートとしてリストランテのメニューにはよくあるのですが、バールでは実はどこにでも
おいてあるものではありません。調理で生卵を扱うには、法定設備と認可が必要だからです。

キッチンもないようなバールにもしティラミスがおいてあれば、それは工場生産のものを
仕入れているということ。味はそれほど期待できないでしょう。

コーヒー焙煎所(Torrefazione)と菓子店(Pasticceria)を兼ねているようなバールは理想的。
本当に美味しいティラミスが期待できるといえます。
上質なエスプレッソを淹れるバールの強みを生かせるドルチェだといえますね!

私は職業柄、コックやパティシエの作りたてを味見する機会が多いのですが、
泡立てたばかりの極限になめらかで濃密なクリームは、どんなに美味しいリストランテで
食べるものよりも、さらに百倍美味しいと断言できます。

とにかく、ティラミスは鮮度が命!
ですから、オススメしたいのは、ご家庭で作りたてを食べていただくこと。
とても簡単ですし、レシピは様々なものが出ているので、ぜひ試してみてください。
分量の違いなどもありますが、とにかく丁寧にきめ細かく泡立てるのがコツですよ!


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2012/12/13

ハリーズ・バーのベッリーニ

リキュール大国であり、数多くのカクテルを生んできたイタリア。
その中でも最も有名なカクテルのひとつに挙げられるのが、「ベッリーニ」(Bellini)でしょう。

国際バーテンダー協会(IBA)の77種類の公式カクテルのひとつで、世界のスタンダード・カクテル。
ちなみに、日本では英語発音由来の「ベリーニ」と呼ばれていますが、イタリアでは聞き返される
こともあるので注意が必要です。


ベッリーニが生まれたのは、ヴェネツィアに本店を構える世界的名店、「ハリーズ・バー」。
1931年の創業以来、文豪・ヘミングウェイや、映画俳優・オーソン・ウェルズら各界の著名人にも
愛され、2001年にはイタリア文化省によって文化遺産に指定された名店中の名店です。

1948年、創業者でありチーフ・バリスタのジュゼッペ・チプリアーニ氏(Giuseppe Cipriani)によって、
白桃のピューレと、ヴェネツィア近郊で生産されるプロセッコというスパークリング・ワインを
合わせた、ベッリーニが考案されました。

15世紀ルネッサンス時代の画家でヴェネツィア派の巨匠、ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini)
が描いた聖人の衣服の色になぞらえて命名された、という説が伝わっています。

Pietà - Giovanni Bellini

同じカクテルでも、イチゴのピューレを使用すると「ロッシーニ」(Rossini)という名前になり、
ミカンのフレッシュ・ジュースを使うと「プッチーニ」(Puccini)となります。
いずれもイタリアを代表するオペラ作曲家ですね。
また、グレープでは「ティツィアーノ」(Tiziano)、ザクロなら「ティントレット」(Tintoretto)となり、
ベッリーニと同様、ヴェネツィア派の巨匠の名前になるのが面白いところ。
さらに、分量を変えてオレンジのスプレムータを使うと、「ミモザ」(Mimosa)となります。

材料を入れ替えることで名前が変わるのはカクテルの常ですが、これほどイタリアづくしの
バリエーションになるのも珍しいと思います。

Bellini e Harry's Bar Firenze

オリジナル・レシピのベッリーニを味わうため、ハリーズ・バーのフィレンツェ店に行ってきました。
1953年オープンのフィレンツェ店は、中心地にありながら、街を二分するアルノ川沿いに佇む、
優雅な店構え。

一緒に訪れたのは、フィレンツェの著名なバリスタ、アルマンド・モラーダ氏(Armando Morada)。
彼はかつて同店で勤務していたことがあり、その時の同僚・ヴァロン氏(Valon)と、私の知人・
クリストファー氏(Christopher)を訪ねることも、目的のひとつでした。

アルノ川に面したテラス席に着き、ランチの前にまずは食前酒。もちろん、ベッリーニです。
川沿いに広がる大空の下での味は、さらに格別!
でも、そのとびきりの美味しさは、あくまで食前酒の味わいというのが、贅沢なところ。
これから運ばれる料理への期待が、いやが上にも高まります!


ハリーズ・バーといえば、ベッリーニと並んで有名なものに、カルパッチョ(Carpaccio)があります。
1963年、ルネッサンス時代の画家、ヴィットーレ・カルパッチョ(Vittore Carpaccio)の生誕500周年
回顧展の機会に、ハリーズ・バーのオーナー、カプリアーニ氏が売り出した料理です。

ヴィットーレ・カルパッチョは、ジョヴァンニ・ベッリーニの兄、ジェンティーレ・ベッリーニに
師事した、ヴェネツィア派を代表する画家。
彼の絵画独特の赤と白の色調にインスピレーションを得た一皿ですが、薄切りの生の牛肉を
使った同様の料理、「アルバ風牛生肉」(Carne cruda all'Albese)と呼ばれる、ピエモンテ州の
一皿をヒントにしたと言われています。

様々な説がありますが、今や世界的に有名な「カルパッチョ」という名前が、この時、このお店で
生まれたのは間違いなく、名称の由来として、イタリア料理史の重要なエピソードといえるでしょう。


この日は、ヴァロン氏の勧めで、同じく生の牛肉を使ったハリーズ・バー名物の「タルタル」(Tartare alla Harry's)をいただくことにしました。

私たちのテーブルで彼が好みの味付けを丁寧に尋ねてくれ、手早く仕上げてくれます。
オリーブオイル、塩、黒コショウ、レモンジュース、生卵、コニャック、ウスターシャーソース、タバスコ、イタリアンパセリなど、多くの調味料で、見事に私好みのタルタルが完成しました

食前酒・ベッリーニのデリケートな味わいからの食事を考えていたため、その後のタルタルと白ワインという流れは、コースで楽しむイタリア料理として、完璧に堪能できるチョイスとなりました。


食後には、再びヴァロン氏の勧めで、クレープを頼むことにしました。
これも彼がテーブルで直接最後の仕上げをしてくれます。
クリームを挟んだクレープにコニャックを注ぎ、火をつけ、一気に香りをつけていきます。


最後に、若きシェフ、エドアルド・モンターニ氏(Edoardo Montagni)を紹介され、皆で同業者
ならではの情報交換の場となり、とても興味深いランチとなりました。

洗練された落ち着いた店内で一番存在感を示していたのが、やはりバーカウンター。
しかし驚いたのは、それが意外なほどシンプルだったこと。
それでも、カクテルをつくるボトルや器材は厳選されたものがしっかり揃っていて、
この重厚な木目調の空間だけ、まるで工房のような美しさとこだわりが際立っていました。

このカウンターで、一杯のお酒だけを楽しむのも、至福のひと時だと思います。
職人としてのバリスタとの対話の中で、世界的カクテル「ベッリーニ」を生んだ技術と情熱の、
揺るぎない伝統の美に触れることができるでしょう。



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ヒヨコマメのピッツァ


2012/06/19

ヒヨコマメのピッツァ

イタリア中部・トスカーナ州には、世界にも名高い、様々な郷土料理があります。
その中でも、山間部のフィレンツェやシエナとは異なる、独自の名物料理を数多く生んでいるのが、
地中海に面した港湾都市・リヴォルノ。
魚介スープ・カッチュッコや、以前にも紹介したリヴォルノ風コーヒーなどは、特に有名です。

私の友人で、フィレンツェの著名なバリスタであるアルマンド・モラーダ氏は、このリヴォルノ出身。
世界的な5つ星ホテルをはじめ多くの有名店で腕をふるってきた彼は、フィレンツェ料理界に
幅広い人脈をもつ、私のトスカーナ郷土料理研究の重要な協力者です。
その彼が、またひとつ、「チェチーナ」(Cecina)というリヴォルノ料理を紹介してくれました。

日本では珍しいヒヨコマメの粉を練った、窯焼きの一品。
トスカーナ州では、「ヒヨコマメのタルト」という意味の「トルタ・ディ・チェチーナ」(Torta di Cecina)
という呼び名もあります。



Cecina

リヴォルノから海岸沿いに約50km北上すると、ヴィアレッジョの町があります。
真冬の派手なカーニヴァルは、イタリア三大カーニヴァルにも数えられ、夏のビーチリゾートと
しても有名なこの町は、アルマンド氏が週末を過ごす場所。
先日、彼とこの町を訪れた際、強い勧めで、あるお店に連れて行ってくれました。

ピッツェリア「リツィエーリ」(Rizieri)
1938年創業の老舗で、ヴィアレッジョ市民に愛されている、町一番の名店だということ。



Pizzeria "Rizieri"

お店に入ると、まず目に入るのが、とても大きな薪窯とピッツァが並ぶカウンター。
70年代から変わらない懐かしさの漂う内装は、長年地元の人々に愛されている証でしょう。

その奥に簡単な食堂も併設していますが、このカウンターに並ぶ切り売りピッツァが名物です。
好きな分だけ切り分けてくれ、量り売りをしてくれるピッツァは、店内のテーブルですぐに食べる
ことができます。
カリッと歯ごたえのある裏地と、ふっくら焼けたもっちりした生地の、コントラストが絶品!

Pizza al taglio

そしてここで、ピッツァに並んで名物のチェチーナを、初めて食べることになりました。

ヒヨコマメの優しい風味と薪のスモーキーな香りが絶妙で、非常にやわらかくデリケートな食感に、
とろけるような幸福感が口いっぱいに広がりました。

チェチーナの原材料はとてもシンプル。ヒヨコマメの粉とオリーブオイル、水、塩だけ。
それらを練った生地を数時間寝かせ、オーブン用の大きな平鍋にのせて薪窯で焼きます。
平鍋が熱せられて生地が焦げる前に、サッと焼き上げるのがポイント。
表面だけがうっすらと香ばしく焼ける程度で、ごく薄い生地はジューシーそのもの!

こちらも、好きな分だけ切り売りしてくれ、カウンターに置いてある黒コショウを好みでかける
ことで、さらに味にメリハリがつきます。

Cecina
チェチーナには、「チンクエ・エ・チンクエ」(Cinque e Cinque)というメニューがあるそうです。
「5&5」という意味ですが、値段50セントのチェチーナを、同50セントのフォカッチャで挟んだもので、
地元では有名な“裏メニュー”。

チェチーナは、リヴォルノ地方の薪窯のあるピッツェリアで見つけることができます。
ファリナータと呼ばれるリグーリア州でも、名物のフォカッチャを焼くお店の定番メニュー。
リストランテでは味わえない、庶民の地方料理の素朴な美味しさをぜひ味わってみてください。

ところで、リヴォルノから海岸沿いに約40km南下したところに、チェーチナという町がありますが、
両者の意味上の関係はありません。
混同しないように、アクセントに気をつけて注文してくださいね!


Pizzeria "Rizieri"
Via C. Battisti, 35/37 Viareggio (LU)
Tel. 0584-962053


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2012/06/07

サバティーニの伝統

フィレンツェを見下ろす丘の上の町・フィエーゾレ。
ローマ時代の遺跡が点在するこの小さな町は、実はそれ以前のエトルリア時代からの古い歴史を
誇り、その歴史的経緯から「フィレンツェ発祥の地」、「フィレンツェの母」などと謳われています。

フィレンツェからフィエーゾレへと上る坂道には、緑あふれる田園風景が広がり、大きなヴィッラが
並んでいます。いずれも世界の富豪たちの別荘。
超高級別荘地を優雅に抜ける、緩やかな山道からは、レンガ色に広がる美しいフィレンツェの
街並みを望むことができ、その中心にドゥオーモのクーポラがひときわ大きくそびえています。

その丘の中腹に、サン・ドメニコ地区(San Domenico)の町があります。
フィレンツェ・グルメ社交界の顔役、マッシミリアーノ・フェッリ氏が、ここにある一軒のリストランテを
紹介してくれました。


「ピアッティ・エ・ファゴッティ」(Piatti e Fagotti)

オーナーはトンマーゾ・サバティーニ氏。
空手師範であるフェッリ氏と、同じく空手家の同氏は、古いつきあいだといいます。
ランチのやや遅い時間に訪れた私たちでしたが、トンマーゾ氏は大いに歓迎してくれ、
2種類のラザーニャをごちそうしてくれました。

旬であるアーティチョークのラザーニャは、春らしい軽やかな逸品。
もうひとつ、伝統的なトマトベースのラザーニャは、挽き肉ではなく牛肉がそのまま入った
ミートソースが、旨味をさらに引き立てています。


フィレンツェに本店を構える、世界的名店「サバティーニ」(Sabatini)。
東京・銀座にも出店していて、30年以上に渡って日本に本格イタリアンを伝えた老舗として、
ご存じの方も多いのではないでしょうか。
その創業者、ヴィンチェンツォ・サバティーニ氏は、トンマーゾ氏の祖父にあたる方です。

ヴィンチェンツォ氏の息子(トンマーゾ氏の父)が心理学者の道を進んだため、「サバティーニ」の
経営権は1980年に他者に引き継がれています。
そして、再び料理への回帰を志した孫のトンマーゾ氏がリストランテをオープンさせたのが、
ここフィエーゾレのサン・ドメニコ。
フィレンツェの母なるフィエーゾレで、伝統的なフィレンツェ料理を提供しています。

Gastronomia

同店の特徴として、リストランテの入口に、惣菜カウンター・ガストロノミアを併設していることが
挙げられます。
ここでは様々な食材を購入できるほか、各種惣菜をテイクアウトすることもできます。
パニーノもぜひつくってもらいましょう!

ランプレドット(Lampredotto)はオススメ。
日本では「ギアラ」と呼ばれる牛の第4胃袋で、パニーノにはさんで食べるスタイルは、
フィレンツェでしか味わえない定番の伝統料理です。
牛の第2胃袋、いわゆる「ハチノス」の煮込み・トリッパ(Trippa)も用意しています。

パルマ、サン・ダニエーレといったイタリアを代表する生ハムはもちろん、ぜひ試したいのが、
シエナ産黒豚、チンタ・セネーゼの生ハム。
スライサーではなく、手で直接切り分けるので、繊細な風味を存分に味わうことができます。
チーズも、ピエンツァ産ペコリーノ(Pecorino di Pienza)をはじめ、各種揃えてあります。


ガストロノミアでテイクアウトして、オリーブ林の広がるフィエーゾレの田園で食べるのも、
とても気持ちの良いものでしょう。
眼下に広がる“花の都”フィレンツェの、ため息の出るような美しいパノラマが、忘れがたい味の
最後のスパイスです。


Gastronomia - Antico Ristoro "piattiefagotti"
Via delle Fontanelle 3/9/11 San Domenico, Fiesole
http://www.piattiefagotti.com(イタリア語)


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2012/05/14

フィレンツェ郷土料理店

先日、同じ夜に2人の友人がフィレンツェを訪れ、それぞれを紹介する形で会食をしました。
ニューヨーク在住の日本人画家と、ウィーンのEU機関に勤めるルクセンブルク人。

生まれも、居住地も、仕事もまったく異なる3人による、多方面の意見交換も目的でしたが、
せっかくなので、この機会に伝統的なフィレンツェ郷土料理を紹介することにしました。
そこで、かねてから注目していた老舗リストランテ「レ・フォンティチーネ」(Le Fonticine)で
待ち合わせることにしました。


アペニン山脈裾野の盆地に広がるフィレンツェの料理といえば、まず肉料理です。
各種ビーフステーキや、野ウサギ、イノシシ、シカなどの野趣溢れるジビエ料理が有名。
一方で、豆料理も代表的で、野菜を多用した農家の素朴な家庭料理が多いのも特徴です。

その中でも、倹約家といわれるフィレンツェ人気質を表すように、安い食材や残り物を使った
「クチーナ・ポーヴェラ」(Cucina Povera)と呼ばれる庶民料理の幅広さは特筆すべきところ。

この日は軽めの夕食にしたかったので、このクチーナ・ポーヴェラを注文することにしました。

* * * * * * *

第一の皿:「リボッリータ」
フィレンツェのクチーナ・ポーヴェラの代表的な一皿です。
余った野菜スープ(ミネストローネ)に、そのまま食べるには固くなり過ぎたパンを入れて、
料理名の意味通り「再び煮込んだ」もの。

もちろんリストランテですから、余り物を出すことはなく、各素材のエッセンスが上品に調和をとる、
実にデリケートな味わいでした。

タマネギ、ニンジン、セロリといった香味野菜に、黒キャベツ、ちりめんキャベツ、ビートなどの
青菜やインゲンマメが入って、栄養も満点。トマトピューレの爽やかな酸味も効いています。
パンを加えて煮込むため、汁気のないスープになるのがポイントです。

カメリエーレ(給仕)が目の前でパルミジャーノ・チーズを削ってくれ、トスカーナ産のオリーブオイル
をかけてくれました。これで風味がぐっと引き立つわけです。

Ribollita Contadina

第二の皿:「フィレンツェ風トリッパの煮込み」
トリッパとは、牛の第二胃袋のことで、日本ではハチノスと呼ばれているもの。
イタリア各地で食されますが、特にフィレンツェのトリッパ料理は有名です。
下茹でしたトリッパを香味野菜のブイヨンとトマトで煮込み、パルミジャーノ・チーズ、黒コショウ、
オリーブオイルをかけて、いただきます。

Trippa alla Fiorentina

食後、カメリエーレに頼んで、ワインセラーを特別に見せてもらいました。
オーナーのシルヴァーノ・ブルーチ氏が、丁寧にワインを説明しながら、1959年の創業以来
53年間の歴史についても語ってくれました。
町の多くの美術品に大損害を与えた1966年のアルノ川の氾濫では、このリストランテも甚大な
被害を受け、それでも苦労の末に再生したといいます。



このリストランテの名物は、フィレンツェ料理の代名詞「フィレンツェ風Tボーンステーキ」だと
いうことです。
大きな暖炉のようなつくりの炭焼きグリルで豪快に焼かれたステーキが、次々と各テーブルに
運ばれ、カメリエーレが目の前で切り分けていました。

Bistecca alla Fiorentina

まるで美術館にいるかのように壁面を絵画で埋めた店内は、フォーマルな雰囲気ながら、
家庭的な温かいサービスが心を和ませます。
素朴なフィレンツェ料理を、限りなく上質に高めた繊細な味は秀逸。
隠れ家的な一軒として、すっかり気に入ってしまいました。



リストランテ「レ・フォンティチーネ」
Ristorante "Le Fonticine" / Via Nazionale 79r - Firenze
http://www.lefonticine.com/italiano/iindex.htm(イタリア語・英語)


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2012/05/12

鉄板焼きパニーノ

先日、イタリア・プロサッカーリーグ“セリエA”の試合を、スタジアムで観戦してきました。
青空のもと、何万人という観衆の熱気を感じる解放感は、ファンでなくても楽しめるもの。
しかし、私がスタジアムに行く楽しみはもうひとつ。ここに珍しいパニーノがあるからです!

パニーノといえば、イタリアのバールや屋台の定番ファーストフードですね。
通常は、やや固いイタリア風のパンにハムやチーズなどの切り立ての具材を挟んで、
そのまま食べるか、トースターで温めてもらって食べることになります。

一方で、スタジアムの名物は「パニーノ・アッラ・ピアストラ」(Panino alla Piastra)。
鉄板焼きでつくるパニーノです。

焼きそばやお好み焼きをつくるような鉄板の上で、イタリア風ソーセージ・サルシッチャを焼き、
同じく鉄板の上で温めたパンに、タマネギやペペローニなどの炒めた野菜を挟んだもの。
仕上げに、ケチャップ、マヨネーズ、マスタードソースを好みでかけてくれます。

これが珍しい理由は、移動販売車でしか売られていないから。
この移動販売車を見つけるには、サッカースタジアムの他、郊外の広場や公園、青空市などに
行かなければなりません。

「鉄板で焼く煙や臭いが強いため、オープンスペースでしか作れない」という事情があるのでしょう。
もちろん、普通のバールではエスプレッソやワインなどのデリケートな香りの邪魔になるので
絶対に扱っていないし、いわゆるB級グルメのためリストランテにもありません。

特にサッカースタジアムの外で食べる鉄板焼きパニーノは格別です!
サッカーシーズンは秋から春先になるので、真冬の凍える寒さである場合がほとんど。
そこで食べる、温かくガッツリ食べ応えのある味は、サッカー観戦の腹ごしらえにはピッタリです!

観光巡りではなかなかお目にかかれないものですが、飾らない庶民的な味にこそ、
その国の美味しさが詰まっているというもの。ぜひ探してみてくださいね!

Panino alla Piastra

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2012/04/14

洋食ドリアの謎…

幼い頃から大好物だった、ドリア。
バターライスの上にベシャメルソース、チーズ、様々な具材をのせてオーブンで焼いたもので、
シーフードドリア、チキンドリアなどが定番ですね。

その材料や、日本の「洋食」の歴史から、フランス由来の料理だと思っていました。
しかし、某イタリアンチェーン店でも「ミラノ風ドリア」が人気メニューであることから、
ふとイタリア由来の可能性も考えてみたものです。
イタリアはリゾットなどの米料理がポピュラーですし、「ドリア」(Doria)はまさにイタリア語的な
言葉の響き…。


長いイタリア生活のなかで、ドリアのこともすっかり忘れていた頃、ジェノヴァ共和国の
名門貴族・ドーリア家について知ることがありました。
ルネッサンス期に海軍提督として一躍名を馳せたアンドレア・ドーリアを生んだ一族として、
ジェノヴァ人のみならずイタリア人なら誰でも知っている名家です。

ジェノヴァの名門サッカーチーム・サンプドリアの名前にピンときたら、かなりの勘の良さ!
町の西側・サンピエールダレーナ地区(Sampierdarena)の市立スポーツクラブと、
アンドレア・ドーリア提督の名を冠したスポーツクラブの両サッカーチームが、
1946年に合併して「サンプドーリア」(Sampdoria)となったのです。


この「ドーリア」家と、洋食「ドリア」が、こうして頭の中でつながったとき、両者の歴史的関係に
確信を抱きました。
実際に見識あるイタリア人に訊いて回ったところ、料理としてのドリアを知る人は皆無でしたが、
「ジェノヴァのドーリア家に関係しているかもしれない」と、一様に口をそろえるのです。

バターライスやグラタンといったドリアを構成する要素は、いかにもフランス的です。
地中海式農業のジェノヴァには、バターやお米をつかった伝統料理はほとんどありません。
しかし、ジェノヴァには隣接するフランスの影響を受けてきた歴史があり、また、フランス料理界で
ヨーロッパ社交界のドーリア家にちなむ逸話があったとしても、何の不思議もありません。

結論を言えば、ドリアはイタリア語ですが、イタリアのどの地域にもこのような料理はありません。
ジェノヴァにも、そしてミラノにも…。
某チェーン店の「ミラノ風ドリア」は、「(サフラン入り)ミラノ風リゾットのドリア」と名前を変えれば、
誤解はかなり減るでしょう。


日本でのドリアの発祥は、実は非常に明確な資料によって明らかになっていると分かりました。
戦前、横浜ホテルニューグランドの初代総料理長を務めたスイス人シェフ、サリー・ワイル氏
(Saly Weil)が最初につくったとされています。
日本に本格的な西洋料理をもたらした重要人物ですが、ドリアはフランス料理の手法を
用いた創作料理とのこと。やはり、日本で生まれた「洋食」だったんですね。

現在でもホテルニューグランドの名物料理だといいますが、発祥の経緯がこれだけ明らかなのに、
「ドリア」と名づけた理由に触れている文献が見当たらないことが不思議です…。
料理名には必ず由来があるもので、ワイル氏がこれについて何も語っていないとすれば、
きっとフランスにドリアという名の似たような料理があるのでしょう。
私にはフランス料理の知識はないので、それ以上はさらに調べる必要がありますが…。


イタリアではドリアのルーツを見つけることはできませんでしたが、日本の洋食文化の面白さを
あらためて発見し、フランス料理とイタリアの関わりを探る次の楽しみを見出した気がしました。


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アメリカが伝えたイタリア料理
ミートソースのピッツァ


2012/03/29

アメリカが伝えたイタリア料理

スパゲティ・ナポリタン、スパゲティ・ミートソース、そしてピザ。
いずれも懐かしい、喫茶店の定番メニューですね!

私が幼い頃、つまり昭和50年代、日本で普及していたイタリア料理といえば、数えるほどの
種類しかなく、定番といえばこの3品しかなかったほどでした。
他にもマカロニがありましたが、主にグラタンやサラダなどに使われる程度だったと思います。
イタリア料理の美味しさを最初に伝えたこれら3品は、しかし実は、本場イタリアのものとは
まったく異なるものでした。


まずスパゲティ・ナポリタン。
今でこそ笑い話のようでもありますが、本場ナポリはもとよりイタリア中で食べられていると、
当時は誰もが思っていました。
イタリア料理でケチャップを使うことはあり得ず、ましてやそれをスパゲティにまき散らして
からめるなんて、イタリア人にとっては怖ろしい光景です。
かつてナポリまで捜しに行ったほど大好きだった私には、受け止めがたい現実でしたが…。

続いてスパゲティ・ミートソース。
最も大きな違いは、盛り付け方です。
日本では、皿に盛ったスパゲティの上からミートソースをかけ、いわばパスタとソースが
分離した状態で出されますね。
イタリアではフライパンでよくからめます。「乳化」という料理法上重要な手順は外せません。
イタリアで食べ慣れてから気づきましたが、日本の甘味の強いソースも大きな違いです。

最後にピザ。当時はピザパイとも呼ばれていました。
ピザハウスやデリバリーピザでもお馴染みですね。
生地や素材の違いは言うまでもなく、特筆すべきはタバスコ。
当時の日本では必ずタバスコが添えられて出てきました。
イタリアでは唐辛子漬けのオリーブオイルを使用します。タバスコは外国人観光客向けや、
ブラッディ・マリーというカクテルの材料として置いてあるだけです。

これらに共通したことは、すべて「アメリカ流」だということ。

* * * * * * *

19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、多くのイタリア人が移民としてアメリカに渡りました。
イタリア人街を形成するほど独自の文化を維持した彼らが、まず持ち込んだのが母国の料理。
その後、それがアメリカ全土に広まる過程で、「アメリカ風」に大きく変容していったのです。

明治以降、主にフランスをルーツとする「洋食」がほぼ直輸入の形で日本に伝わったのに対し、
イタリア料理は戦後上陸したアメリカ文化によってもたらされたものです。
スパゲティ・ナポリタンも、進駐した米軍のメニューが日本で発展していったとされています。
いずれも英語発音のネーミングに、アメリカ由来の名残を見てとることができますね。

ようやく本格的なイタリア料理が広まったのは、1980年代後半のバブル景気の中で起こった
「イタメシ」ブームのとき。
海外旅行者が急増し、本場イタリアで修業したシェフも続々現れた頃です。
当時の熱狂ぶりは大きな社会現象ともなりましたが、本格的なイタリア料理が伝わった
原点ともいえる出来事でした。

本場のイタリア料理の日本での歴史は20年ほどで、まだまだ成熟への過渡期といえます。
私がイタリアの暮らしで思うことは、イタリア料理を最も美味しく味わえる料理法や食事法を
正しい形でまだまだ伝えられるということ。そして、日本に伝えたい料理ももっとたくさんある
ということ。
日本ではまだ知られていない「とっておきの料理」も、今後紹介していきたいと思っています。


【関連バックナンバー】
唐辛子入りオリーブオイル
ミートソースのピッツァ


2012/03/17

アグリトゥーリズモ料理

「アグリトゥーリズモ」(Agriturismo)とは、イタリア語で「農場滞在型観光」を意味し、
そうした設備を整えた農場そのものも指す言葉です。「アグリツーリズモ」とも表記しますね。
イタリアの豊かな田舎生活を体験でき、疲弊した都会生活から農村への回帰志向で急速に
高まる人気とともに、多くの農家がより魅力的なアグリトゥーリズモに改装しています。

「農業体験型観光」と訳されることもありますが、これは誤解を生む言葉。
滞在に農作業が組み込まれることはなく、希望すれば簡単な作業を手伝うことができる程度。
むしろ滞在者は、自然や動物とふれあい、田舎のゆったりした時間を過ごすためにやってきます。

オリーブの木陰で読書をしたり、ブドウ畑の広がる丘を散歩したり、プールでくつろぎ、
乗馬やトレッキング、川遊びに出かけたり…。他の滞在者たちとも時間を過ごせ、
農家の家庭の一員に迎えられたかのような温かい雰囲気が、大きな魅力です。
農場滞在といっても、部屋はホテルとほとんど変わらず快適。
オリーブオイル、ワイン、野菜、果物、牛乳、卵、ハチミツ、ジャムなどの自家製食材を使った
料理はとても美味しく、マンマ(お母さん)手作りの伝統的な家庭料理を味わうことができます。

なかにはリストランテを併設しているところもあり、食事だけ利用することもできます。
伝統的な田舎の家屋の趣ある雰囲気の中、これ以上ない新鮮な地元の自然食品を使った
本格料理を味わうことができ、軒並み高評価を与えているグルメ誌を読むまでもなく、
そこでは特別な時間を過ごせることが約束されているようなもの。

かつて私も、トスカーナ州の田舎で2年間過ごしたことがありました。
素朴ながらたくましい、人間味あふれる生活が日々楽しく、田舎生活にこそイタリアの美しさが
あると知り、毎日新鮮な発見があることが驚きでした。
夜の農園、焚き火で肉を焼きながら仲間とワインを飲んだことは、忘れがたい思い出です。
オリーブ林で横になり、満天の星空を見上げていたひとときは、かけがえのない時間でした。

* * * * * * *

先日、その懐かしい田舎町を訪れた際、友人たちから夕食会に招待されました。
連れていかれたのは、数年前にオープンしたという近所のアグリトゥーリズモ。
ここでもアグリトゥーリズモは確実に増えていたのです!
評判だというここのリストランテは、この夜すでに満席でしたが、私たち9人は予約していた
大テーブルに通されました。

まず運ばれてきた「前菜盛り合わせ」に、思わず目を見張りました。
これほど多彩でボリュームある一皿には、なかなか出会えるものではありません。
レバーペースト、キノコペースト、コロンナータ産ラードの各種クロスティーニに、
チンタ・セネーゼ(シエナ産黒豚)の4種の生ハムとサラミ。
一級素材を使用したこれら伝統的なトスカーナ風前菜だけでも充分堪能できるのに、
さらに本来なら第一の皿やメインのつけ合わせで供されるような料理も添えられました。
つまり、クレスペッラ、フリッタータといった卵料理、スペルト小麦のスープ、ポレンタの
ミートソース添え。

地元のブドウ品種でつくった自家製赤ワインと相互に味を引き立たせ、この満足度が、
まだこれから続く今夜の料理への期待感を、いやがうえにも高めます。

Antipasto Misto

第一の皿:「鳩肉とポルチーニ茸のパッケリ」
パッケリとは、イタリア南部で非常にポピュラーなパスタ。リガトーニよりも太い、筒状の
ショートパスタです。
ここでは、トスカーナ流に鳩肉とポルチーニ茸を使ったソースで合わせています。
鳩肉の味わい深さと、ポルチーニの香り高さが、赤ワインにとてもよく合いました。

Paccheri con Piccione e Funghi Porcini

第二の皿:「トスカーナ産牛肉・グリル焼きのスライス」
焼き加減はレア。味付けは塩・コショウのみとシンプルで、素材の牛肉の旨味を最大限に
味わうのがイタリア流。これをフレッシュな自家製オリーブオイルと松の実で和え、
目の前で直接パルミジャーノ・チーズを削ってくれました。
つけ合わせはズッキーニとナスのグリル、ポテトのオーブン焼き、ルッコラのサラダ。

Tagliata di Manzo

一皿ごとに私に料理の説明をしてくれ、味を堪能しているか声をかけ続けてくれたベテランの
カメリエーレ、女性らしい細やかな気配りと笑顔でサービスしてくれたカメリエーラたち、
各テーブルの様子もしっかり確認していたプロフェッショナルな女性シェフ…。

料理・サービスともにスペシャルな理由は、限りなく純度の高い「もてなし」への情熱に
他なりません。つくる側、食べる側、お互いが敬意と親しみをもって接することで、
心と心をつなぐ普遍的な喜びが、お皿と空間を特別なものにするのです。

前菜からいずれもボリューム満点。
友人たちはさらにドルチェ、エスプレッソと続いていましたが、私は消化を助ける食後酒に
移ることに…。そこでリストランテから、いずれも自家製のリモンチェッロとグラッパ、
それぞれのボトルが振る舞われました。
お店の人も交えてお喋りは続き、笑い声に包まれ更けていく田舎の夜は、あの頃と変わらず、
夜空いっぱいの星がオリーブ林を照らしていたのでした。



2012/02/06

リグーリア郷土料理づくし

友人のお母様の誕生日会に招待され、リグーリア州・ジェノヴァに行ってきました。
この日は家族全員が集まり、同行したピサ在住の友人とともに、昼食会に向かいました。

訪れたお店は、オステリア「ダ・ドゥリン」。
ジェノヴァから海岸沿いに東に向かったソーリという町にあり、さらに車で山道を登った先の
カプレーノ地区に、そのお店はありました。

イタリア・スローフード協会発行の『Osterie d'Italia』にも載っている、地元では有名な一軒。
創業1927年の老舗で、メニューはリグーリアの伝統的な郷土料理のみ、というこだわり。
大きなガラス窓に囲まれた店内には眩しい陽光が射し、そこからは冠雪の山々を見渡せ、
眼下には雄大なリグーリア海が広がっていました。

この日、クラシカルな郷土料理が食べられるとあって、私は少々興奮していました。
山奥の一軒というロケーションが、確かな期待を抱かせます。
私の好奇心を察した主催の友人が、注文を仕切ってくれました。

* * * * * * *

まずはアンティ・パスト(前菜)。
出てきたのは、「クレシェンツァ・チーズのフォカッチーナ」。
揚げてあるのが最大の特徴で、パリパリッと音を立てるくらい香ばしい薄い生地の中から、
熱々の甘いクレシェンツァがとろけ出します。
ジェノヴァの厚いフォカッチャとはまったく異なり、レッコのチーズ・フォカッチャのようでも
ありますが、揚げてあるので食感は違います。

Focaccina al formaggio

続いてプリーモ・ピアット(第一の皿)。
ここでは友人が2種類のパスタをとってくれました。

まずは定番中の定番、「ジェノヴァ風ペーストのトロフィエ」。
手でよじった形のトロフィエは、代表的なリグーリアのパスタ。ここソーリが発祥だとか。
茹でたサヤインゲンとジャガイモをバジルソースに合わせるのが、正統なレシピです。

Trofiette al pesto

パスタのもう一皿は、「パンソーティのクルミソース和え」。
パンソーティ(またはパンソッティ)は、季節の野草や葉菜類を包んだ詰め物パスタ。
伝統的にクルミのクリームソースを合わせますが、この定番レシピが生まれたのは、
友人家族が住むジェノヴァ・ネルヴィ地区のフード・フェスティバルだったそうです。

いずれも手打ちの生パスタで、モチモチとした食感がたまりません。
毎朝仕込むソースのフレッシュでデリケートな風味は、思わず言葉を失う美味しさ…。

Pansoti in salsa di noci

いよいよセコンド・ピアット(第二の皿)です。
ここはみんなの大好物、「肉と野菜のフライ盛り合わせ」(Fritto misto di carni)。
ウサギ肉とアーティチョークが特に気に入りましたが、羊肉は私はいまだに馴染めません…。
珍しいリンゴのフライが、口の中をさっぱりとさせてくれます。
サクサクッと食べられる軽い仕上がりで、旨味をとじ込めた中身の柔らかい食感との
コントラストが絶妙でした。

さらに、私のリクエストで最後に登場したのが、有名なジェノヴァ料理、「チーマ」。
仔牛の胸肉を袋状にあけ、そこにたくさんの具材を詰めてブイヨンで煮込んだもの。
詰め物には、仔牛の肉・内臓の各部位、香味野菜、キノコ、松の実、チーズ、卵などが入り、
冷ましてから薄切りにして食べます。

Cima alla genovese

ドルチェは「リンゴのタルト・ジェラート添え」(Tortino di mele caldo con gelato)でしたが、
私はとても食べきれなかったので、ほんの味見だけ。
温かいタルトは、なめらかな舌触りで上品な甘味が優しく広がります…。
これだけでも来る価値あり!です。

最後にエスプレッソでしめましたが、食事のあいだ飲んでいたのが地元の白ワイン。
リグーリア州で最もポピュラーなヴェルメンティーノ種(Vermentino)のものです。
黄金色が美しく、フルーティで芳醇、かつ力強い味わいで、どの料理にもよく合いました。
お土産に頂いたのが、ピガート種の白ワイン(Riviera Ligure di Ponente Pigato DOC)。
リグーリア料理は、白ワインに合うものが多いですね。

* * * * * * *

イタリアらしい家族経営の、気取らない雰囲気のお店でした。
訊けば、これらの料理をつくったのは、オーナーの母親とのこと。
繊細で完璧な味はシェフとしての腕ですが、そこにマンマの味も加わっていたんですね!
しかも、これだけ食べて飲んで約25ユーロなのですから、ぜひオススメしたい一軒です。


オステリア「ダ・ドゥリン」
Osteria "DA DRIN" / Fraz. Capreno 66 - Sori (GE)
http://www.osteriadrin.it/


【関連バックナンバー】
ジェノヴァ名物・フォカッチャ


2012/01/27

青カビの魔法・ゴルゴンゾーラ

ワインのおつまみで、今月の私のお気に入りだったのが、ゴルゴンゾーラ・チーズ(Gorgonzola)。

チーズ大国・イタリアでも、ゴルゴンゾーラはその代表格であり、世界で最も有名な
ブルーチーズのひとつです。
せっかくなので、ゴルゴンゾーラについて少し紹介したいと思います。


発祥は、ミラノ近郊・ゴルゴンゾーラの町。時期は諸説ありますが、9-10世紀頃のこと。
現在では、ミラノを州都とするロンバルディア州、および隣接するピエモンテ州で生産され、
保護原産地呼称DOP (Denominazione di Origine Protetta)に指定された生産地域に限定
されています。

ゴルゴンゾーラは牛乳から作られるチーズですが、最も特徴的なものが、断層状に含まれる
青カビとその独特な香り。
ピリッと辛味のある刺激的な風味は、一度好きになったら病みつきになる味です。


私が重宝している理由は、様々なワインに合わせられるから。
赤・白・ロゼはもちろん、デザートワインやマルサラ酒などにもよく合います。

それでも、ワインに合わせる目安にするには、ゴルゴンゾーラがドルチェ(Dolce)とピッカンテ
(Piccante)の2種類に大別されることを知っておく必要があるでしょう。
熟成期間2ヶ月以上のドルチェはクリーミーで甘味があり、同期間5ヶ月以上のピッカンテは
硬くて辛味が強い、という特徴があります。


そのまま食べても美味しいですが、マスカルポーネ・チーズとクルミを添えるのが伝統的な
食べ方。

ピッツァの具材としても有名ですね。
4種類のチーズをのせた「クアットロ・フォルマッジ」には、必ずゴルゴンゾーラが入ります。
私のオススメは、ゴルゴンゾーラと生ハムをのせたピッツァ。コクがあるのにデリケートな
味わいは、エレガントなディナーにもピッタリ!

野菜ならトマト、セロリ、ペペローニなどに合い、フルーツなら洋ナシ、リンゴ、イチゴなどにも
よく合うでしょう。ハチミツやジャムとも相性抜群です!

この他にも、パスタ、リゾット、肉料理などのソースに幅広く使われ、サラダに入れても
個性的なアクセントをつけてくれるに違いありません。


買ってきたゴルゴンゾーラは、アルミホイルに包んで冷蔵庫に保存し、早めに召し上がって
くださいね。臭いが気になる場合は、タッパーやジップロックなどの密閉容器に入れると
いいでしょう。


ゴルゴンゾーラ協会・公式サイト(イタリア語・英語・仏語・独語・スペイン語)
http://www.gorgonzola.com/

Gorgonzola DOP

2012/01/26

唐辛子入りオリーブオイル

昔から、日本でピザを頼むと必ずタバスコが添えられてきますね。
しかしこれは、アメリカ経由で日本にピザが伝わった名残の習慣。
ピッツァの本場・イタリアでは、(観光客向けを別として)決してタバスコは出されません。

その代わりに置いてあるのが、唐辛子入りのオリーブオイル。
タバスコよりもはるかに美味しい、風味豊かな自然食品です。

ピッツェリアではピッツァと一緒に必ず持ってきてくれるわけではないので(テーブルの
数だけボトルが無いため)、ぜひ頼んで試してみてください。
「オーリオ・ピッカンテ」(Olio piccante)と言えば、持ってきてくれますよ!
辛味がまだ足りなければ、刻んだ唐辛子・ペペロンチーノを持ってきてもらいましょう。

ご自宅でもカンタンにつくることができます。
買ってきたオリーブオイルのボトルに、細かく刻んだ唐辛子を大量に入れて浸けるだけ。
その際、オリーブオイルは必ず、風味に優れたエクストラ・バージン・オイル(Olio extra
vergine di oliva)を使ってください。

ピッツァに限らず、パスタや肉料理、サラダなどにかけても非常に美味しいので、
ご家庭にも常備されることをオススメします!


2012/01/21

ミートソースのピッツァ

日本のデリバリーピザで、特に秋になるとキャンペーンが展開される「ボロネーゼ」という
メニューがありました。
今もきっとあるのでしょう。いわゆる、ボローニャ風ミートソースをのせたピザのこと。



イタリアでの生活も数年が経ち、リストランテ兼ピッツェリアで働いていたある日のこと。
同僚のピッツァ職人と話すなかで、ふとこのことを思い出し、今さらながらイタリアにはこの
メニューが存在しないことに気づき、愕然としました。

そこで後日、まかない料理で、彼にお願いして自分だけのためにミートソースのピッツァを
試作してもらいました。
これが実に美味…!
伝統レシピで煮込んだミートソースと、完璧に発酵した本場のピッツァ生地の、初めての食感。
日本のそれをはるかに超える、上品かつ繊細な本格料理に仕上がったのです!

それでも完全なマッチングにはもう一工夫必要だと感じ、後日、ミートソースの量を少し減らし、
ナスのグリル焼きをのせて試したところ、申し分ないほど完全な調和が生まれました。

ところが、これを見た他のイタリア人カメリエーラ(ウェイトレス)たちから、苦々しい顔で
「キモチわるい!悪趣味!」と非難の嵐…。
特にピッツァの本場ナポリ出身のシェフが言った「オマエはイタリア料理を汚した!」との言葉は、
イタリア人特有のいつもの大げさな表現とはいえ、彼の本心そのものだったと思います。
「ピッツァに使うなら、オレのミートソースは渡さない」と言い張る彼をなだめるのに苦労しました…。



イタリア人からしてみれば、ピッツァにミートソースなど絶対にありえない組み合わせで、
先人たちが築き上げてきたイタリア料理への敬意を甚だしく欠いているというわけです。

このとき、日本生まれの寿司の、世界での普及と発展が頭をよぎりました。
伝統的な江戸前寿司の老舗ではいまだに扱わない、サーモンの握りやカリフォルニアロール
などは、世界中で最も人気のあるSUSHIメニュー。
日本でも大人気の回転寿司は、それ以上にアレンジされた寿司で目白押しです。

しかし、イタリア国内は自国の食文化に関して、日本以上に保守的です。
アメリカ系デリバリーピザ店が続々開発する新メニューは、歴史も文化もないアメリカ人の暴挙、
としか見なさないのです。



試作してくれた同僚のピッツァ職人は、南部カラブリア州出身のイタリア人ですが、
実は約20年間ドイツでイタリアンレストランを経営していました。
そのお店で、同国で人気だというミートソースのピッツァを扱っていたのです!
同僚であること以上に、だからこそ快く私に作ってくれたのですが、ほとんどのイタリア人
ピッツァ職人は、頼んでも作ってくれないでしょう。

しかし、それでも注文してみたいという方は、必ずリストランテを併設するピッツェリアで
頼むことです。リストランテなら自家製のミートソースは必ず仕込んであるものですが、
ピッツァ専門店では絶対に扱っていません。
そして注文の際のコツは、最初にピッツァ職人に直接尋ねること。
カメリエーレ(ウェイター)に頼んでも、まず聞き入れてくれないでしょう。



ボローニャはおろか、イタリアには絶対に存在しない、ピッツァ・ボロネーゼ…。
先日、今も彼が働くそのお店を訪ね、久しぶりに作ってもらいました。
15年前イタリアに憧れて食べていた、あの無垢な情熱を思い出させる懐かしい味は、
今ではなんだか本格的過ぎて、陽気なだけではないイタリア生活のほろ苦さも少し、
混じったような気がしました。

Pizza Bolognese

2012/01/17

惣菜屋・ガストロノミア活用法

イタリアには街のあちこちに惣菜屋・ガストロノミア(Gastronomia)があります。
ショーケースには、すでに調理済みの惣菜やソース、たくさんの種類のチーズ、オリーブ、
サラミ、ハム、生パスタなどが並んでいて、量り売りで買うことができます。

私はワインに合う前菜をよく買っていきますが、特にここでしか買わないものは、サラミ・ハム類。
これらは切りたてが何より美味しく、立ち昇る芳香と柔らかい食感は言葉を失うほど!
スーパーで売っているスライス済みのパックは、決して買う気にはなりません。

私のガストロノミア活用法のもうひとつは、その場でパニーノをつくってもらうこと。
パニーノのメニューは一切ありませんが、裏にはパンも必ず置いてあるものです。
切りたてのサラミやハムと好みのチーズを挟んでもらったり、そこにソースをかけてもらったり、
ショーケースを見ながら自由自在に注文できるのです!


ある日のフィレンツェのガストロノミアでのこと。
パニーノに挟む具材に悩む私に、お店の人が代表的食材を一同に挟んだ「スペシャルパニーノ」
をつくってくれたのです。
中身は、生ハム、サラミ、ペコリーノチーズ、クリームチーズ、ドライトマト、グリーンソース、
クリームバルサミコ酢など、贅沢なほど具だくさん!

il panino speciale

そして先日、同じフィレンツェのガストロノミアで、ショーケースの中にフランチェズィーナ
(Francesina)を発見しました。
牛肉と玉ねぎをトマトソースで煮込んだ、トスカーナ料理です。
味見させてくれた生ハムの高級品・クラテッロには目もくれず、このフランチェズィーナを
パニーノに挟んでもらうことに。
さらに一条のオリーブオイルをたらしてくれ、絶品のパニーノが出来上がりました!

もちろんこうした汁気のある惣菜は容器にも入れてくれ、フォークももらえます。
パンを別に頼んで食べる人も多いですよ。

la francesina

どのガストロノミアでも、たとえカウンター越しに見えなくても、数種類のワインは必ず用意されて
いるもの。パニーノや惣菜に一杯の赤ワインを合わせるのが、イタリア流のランチです。

こうした最高級の特産品を使ったパニーノとワイン一杯で5.00ユーロ程度なのだから、
日本では考えられない安さ!
セットメニューが6.50ユーロするマクドナルドに、イタリア人は誰一人行かないのは納得です。
(イタリアのマクドナルドには観光客・外国人しかいないため、主に観光都市に数店舗あるだけ!)


バールにも、やや規模を小さくしたガストロノミア風のコーナーを設けたお店があります。
ここなら、より多くの種類のドリンクを合わせることもできるでしょう。もちろん食後の美味しい
エスプレッソも待っています!もし見つけたら、迷わず入りましょう!

旅行でイタリアを訪れる際も、ぜひガストロノミアを活用してみてください!
特に時間のないお昼はサッと済ませるのが一番!好きなものを好きなだけチョイスして、
世界で自分だけのオリジナルパニーノを作ってみてくださいね!




2011/12/30

ジェノヴァ名物・フォカッチャ


今年はクリスマスをジェノヴァで過ごしてきました。
この機会に、長年訪れてみたかった同じリグーリア州の海辺の町、レッコに立ち寄りました。
目的はひとつ。ここの名物フォカッチャ(Focaccia di Recco)を食べること!



フォカッチャはピッツァよりもはるか昔からイタリアで食べられてきましたが、
現在特に有名なものは、ジェノヴァのフォカッチャ(Focaccia Genovese)。
生地が柔らかく、そのまま食べるか、ローズマリー、セージ、オレガノ、オニオン、オリーブなどで
風味付けすることもあります。

イタリアのどこでも食べられるフォカッチャですが、誰もがジェノヴァのものは違うと口を揃えます。
使われる小麦粉とオリーブオイルが違うとも言われますが、そもそもフォカッチャが日常に
欠かせない、この土地の食文化に違いがあるようです。

ジェノヴァを歩けば、街角でふいにフォカッチャの香りがすることは珍しくありません。
それはわずか数メートルの間隔で立ち並ぶ、パン屋から漂う香りだと気づくはずです。
甘い朝食を好むイタリア人の中で、ジェノヴァの人々が焼きたてのフォカッチャを朝から並んで
買い求め、朝食でカフェラッテに浸して食べるというのは、非常に特異に映ります。
そうしたフォカッチャへの人一倍の愛情が、どこよりも美味しい味を育てる土壌だということは、
他の料理でも同じこと。

一緒にフォカッチャをほおばりながら、ジェノヴァ育ちの友人が私に言いました。
「(香りの強い)オニオンのフォカッチャを食べた後はキスできないから、気をつけるんだよ」
ジェノヴァっ子は、キスさえあきらめるほど、フォカッチャには目がないということでしょうか…。



さてそんな中、レッコのフォカッチャはさらに一味違います。
小さな町の至るところで、「FOCACCIA COL FORMAGGIO」の文字を発見!
これがレッコ名物、クリームチーズを挟んだ薄いフォカッチャのこと。
チーズにはクレシェンツァ(Crescenza)やストラッキーノ(Stracchino)が使われます。

今回訪れたお店は、地元の人々が一番おいしいと教えてくれた「Panificio MOLTEDO」。
1874年の創業から4代続く、町一番の老舗です。
午後の営業再開16:30にお店のシャッターが開くと、待っていた人々ですぐに店内は埋まりました。
みんなのお目当て、チーズ・フォカッチャが次々に焼き上がり、まさに飛ぶように売れていきます。


このお店で使うクレシェンツァ・チーズは、50年以上もINVERNIZZI社製だけを使用していて、
レッコの伝統的チーズ・フォカッチャの、いわば代名詞なのだとか…。

薄い生地のあいだからとろけ出るアツアツのクレシェンツァが、口いっぱいに広がり、
柔らかい香りが余韻を残す、とてもデリケートな味でした。

コクがあるのに軽い口当たりは、きっと暑い真夏でも食欲を刺激するに違いありません!
海水浴の後の、レッコの浜辺で食べるフォカッチャを、思わず想像してしまいました…。

もちろん冬には身体を温めてくれる味わいがあり、こうして一年中美味しく食べられるのでしょう。
またこの町に戻ってこようと思わせる、これぞ「名物」です。


2011/12/23

ザンポーネ500周年のクリスマス

イタリアのクリスマスの食卓に欠かせないのが、モデナ産ザンポーネ(Zampone di Modena)。
今ではイタリア全土にとどまらず、世界的にも有名な逸品です。
製造工程が似ているモデナ産コテキーノ(Cotechino di Modena)と一緒に、クリスマスシーズンとも
なれば、どちらも市場やスーパーに大量に並べられます。

ザンポーネとは、豚のひづめ付き前足の皮袋に詰め物をした、豚肉加工食品のこと。
詰め物には、豚の肩、足、皮、喉、頬、腹の各部位を挽き、コショウ、ナツメグ、シナモン、
クローブ、ワインで軽く味付けされたものを使います。
これを加工するわけですが、検査の通ったものは保護地理的表示・IGP(Indicazione Geografica
Protetta)に指定され、モデナ産の正真正銘の伝統食品として、他地域で生産されるザンポーネと
大きく区別されます。


ザンポーネは茹でて輪切りにし、伝統的には、煮込んだレンズ豆(Lenticchie)とジャガイモの
ピューレ(Purè)を添えて皿に盛りつけられます。
皮のコリコリとした独特の食感は、クセになる美味しさ!

モデナでは、有名なモデナ産バルサミコ酢(Aceto Balsamico di Modena)を使ったザバイオーネや、
リンゴのソースを添えるなど様々なレシピがあり、クリスマスに限らず食されます。

また、ザンポーネに比べ価格の安いコテキーノは、より一般的にイタリア北部のリストランテで
扱われ、茹で肉の盛り合わせ・ボッリートや、カルボナーラなどのパスタ、リゾットなどの具に
使われています。
(私がコテキーノと出会ったのも、モデナから遠いイタリア北東部トリエステのリストランテでした!)

おそらく日本にも、調理済みの殺菌パックされたものが輸入されているのではないでしょうか…。
パックのまま沸騰した鍋で温めるだけなので、とてもカンタン!ぜひ試してみてください!


そもそもザンポーネの誕生は1511年、モデナ近郊ミランドラ(Mirandola)の町が教皇ユリウス2世の
軍勢に包囲された時のこと。
ミランドラの人々は、敵軍に重要な食料である豚を奪われないようにするため事前に豚肉を挽き、
それを豚の皮に詰め(コテキーノ)、さらに前足の皮にも詰めて(ザンポーネ)、保存食としての
確保にも成功したのです。

それから今年でちょうど500年目。
今ではすっかりクリスマス料理の代表格として、イタリア中の食卓に並びます。
今年のクリスマスは、ザンポーネとコテキーノを主役にしてみてはどうでしょうか。
500年続く長い歴史に想いをはせ、家族の幸せもずっと続くよう祈りつつ、心温まるクリスマスを
迎えるのもいいかもしれませんね!


モデナ産ザンポーネIGP・公式サイト(イタリア語)
http://www.zamponemodena.it/