2012/06/07

サバティーニの伝統

フィレンツェを見下ろす丘の上の町・フィエーゾレ。
ローマ時代の遺跡が点在するこの小さな町は、実はそれ以前のエトルリア時代からの古い歴史を
誇り、その歴史的経緯から「フィレンツェ発祥の地」、「フィレンツェの母」などと謳われています。

フィレンツェからフィエーゾレへと上る坂道には、緑あふれる田園風景が広がり、大きなヴィッラが
並んでいます。いずれも世界の富豪たちの別荘。
超高級別荘地を優雅に抜ける、緩やかな山道からは、レンガ色に広がる美しいフィレンツェの
街並みを望むことができ、その中心にドゥオーモのクーポラがひときわ大きくそびえています。

その丘の中腹に、サン・ドメニコ地区(San Domenico)の町があります。
フィレンツェ・グルメ社交界の顔役、マッシミリアーノ・フェッリ氏が、ここにある一軒のリストランテを
紹介してくれました。


「ピアッティ・エ・ファゴッティ」(Piatti e Fagotti)

オーナーはトンマーゾ・サバティーニ氏。
空手師範であるフェッリ氏と、同じく空手家の同氏は、古いつきあいだといいます。
ランチのやや遅い時間に訪れた私たちでしたが、トンマーゾ氏は大いに歓迎してくれ、
2種類のラザーニャをごちそうしてくれました。

旬であるアーティチョークのラザーニャは、春らしい軽やかな逸品。
もうひとつ、伝統的なトマトベースのラザーニャは、挽き肉ではなく牛肉がそのまま入った
ミートソースが、旨味をさらに引き立てています。


フィレンツェに本店を構える、世界的名店「サバティーニ」(Sabatini)。
東京・銀座にも出店していて、30年以上に渡って日本に本格イタリアンを伝えた老舗として、
ご存じの方も多いのではないでしょうか。
その創業者、ヴィンチェンツォ・サバティーニ氏は、トンマーゾ氏の祖父にあたる方です。

ヴィンチェンツォ氏の息子(トンマーゾ氏の父)が心理学者の道を進んだため、「サバティーニ」の
経営権は1980年に他者に引き継がれています。
そして、再び料理への回帰を志した孫のトンマーゾ氏がリストランテをオープンさせたのが、
ここフィエーゾレのサン・ドメニコ。
フィレンツェの母なるフィエーゾレで、伝統的なフィレンツェ料理を提供しています。

Gastronomia

同店の特徴として、リストランテの入口に、惣菜カウンター・ガストロノミアを併設していることが
挙げられます。
ここでは様々な食材を購入できるほか、各種惣菜をテイクアウトすることもできます。
パニーノもぜひつくってもらいましょう!

ランプレドット(Lampredotto)はオススメ。
日本では「ギアラ」と呼ばれる牛の第4胃袋で、パニーノにはさんで食べるスタイルは、
フィレンツェでしか味わえない定番の伝統料理です。
牛の第2胃袋、いわゆる「ハチノス」の煮込み・トリッパ(Trippa)も用意しています。

パルマ、サン・ダニエーレといったイタリアを代表する生ハムはもちろん、ぜひ試したいのが、
シエナ産黒豚、チンタ・セネーゼの生ハム。
スライサーではなく、手で直接切り分けるので、繊細な風味を存分に味わうことができます。
チーズも、ピエンツァ産ペコリーノ(Pecorino di Pienza)をはじめ、各種揃えてあります。


ガストロノミアでテイクアウトして、オリーブ林の広がるフィエーゾレの田園で食べるのも、
とても気持ちの良いものでしょう。
眼下に広がる“花の都”フィレンツェの、ため息の出るような美しいパノラマが、忘れがたい味の
最後のスパイスです。


Gastronomia - Antico Ristoro "piattiefagotti"
Via delle Fontanelle 3/9/11 San Domenico, Fiesole
http://www.piattiefagotti.com(イタリア語)


【関連バックナンバー】
惣菜屋・ガストロノミア活用法


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