その中でも、山間部のフィレンツェやシエナとは異なる、独自の名物料理を数多く生んでいるのが、
地中海に面した港湾都市・リヴォルノ。
魚介スープ・カッチュッコや、以前にも紹介したリヴォルノ風コーヒーなどは、特に有名です。
私の友人で、フィレンツェの著名なバリスタであるアルマンド・モラーダ氏は、このリヴォルノ出身。
世界的な5つ星ホテルをはじめ多くの有名店で腕をふるってきた彼は、フィレンツェ料理界に
幅広い人脈をもつ、私のトスカーナ郷土料理研究の重要な協力者です。
その彼が、またひとつ、「チェチーナ」(Cecina)というリヴォルノ料理を紹介してくれました。
日本では珍しいヒヨコマメの粉を練った、窯焼きの一品。
トスカーナ州では、「ヒヨコマメのタルト」という意味の「トルタ・ディ・チェチーナ」(Torta di Cecina)
という呼び名もあります。
Cecina |
リヴォルノから海岸沿いに約50km北上すると、ヴィアレッジョの町があります。
真冬の派手なカーニヴァルは、イタリア三大カーニヴァルにも数えられ、夏のビーチリゾートと
しても有名なこの町は、アルマンド氏が週末を過ごす場所。
先日、彼とこの町を訪れた際、強い勧めで、あるお店に連れて行ってくれました。
ピッツェリア「リツィエーリ」(Rizieri)
1938年創業の老舗で、ヴィアレッジョ市民に愛されている、町一番の名店だということ。
Pizzeria "Rizieri" |
お店に入ると、まず目に入るのが、とても大きな薪窯とピッツァが並ぶカウンター。
70年代から変わらない懐かしさの漂う内装は、長年地元の人々に愛されている証でしょう。
その奥に簡単な食堂も併設していますが、このカウンターに並ぶ切り売りピッツァが名物です。
好きな分だけ切り分けてくれ、量り売りをしてくれるピッツァは、店内のテーブルですぐに食べる
ことができます。
カリッと歯ごたえのある裏地と、ふっくら焼けたもっちりした生地の、コントラストが絶品!
Pizza al taglio |
そしてここで、ピッツァに並んで名物のチェチーナを、初めて食べることになりました。
ヒヨコマメの優しい風味と薪のスモーキーな香りが絶妙で、非常にやわらかくデリケートな食感に、
とろけるような幸福感が口いっぱいに広がりました。
チェチーナの原材料はとてもシンプル。ヒヨコマメの粉とオリーブオイル、水、塩だけ。
それらを練った生地を数時間寝かせ、オーブン用の大きな平鍋にのせて薪窯で焼きます。
平鍋が熱せられて生地が焦げる前に、サッと焼き上げるのがポイント。
表面だけがうっすらと香ばしく焼ける程度で、ごく薄い生地はジューシーそのもの!
こちらも、好きな分だけ切り売りしてくれ、カウンターに置いてある黒コショウを好みでかける
ことで、さらに味にメリハリがつきます。
Cecina |
「5&5」という意味ですが、値段50セントのチェチーナを、同50セントのフォカッチャで挟んだもので、
地元では有名な“裏メニュー”。
チェチーナは、リヴォルノ地方の薪窯のあるピッツェリアで見つけることができます。
ファリナータと呼ばれるリグーリア州でも、名物のフォカッチャを焼くお店の定番メニュー。
リストランテでは味わえない、庶民の地方料理の素朴な美味しさをぜひ味わってみてください。
ところで、リヴォルノから海岸沿いに約40km南下したところに、チェーチナという町がありますが、
両者の意味上の関係はありません。
混同しないように、アクセントに気をつけて注文してくださいね!
Pizzeria "Rizieri"
Via C. Battisti, 35/37 Viareggio (LU)
Tel. 0584-962053
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