2011/12/31

スプマンテで新年の乾杯!

いよいよ今日は大みそか。
イタリアでも大みそかの夜(La notte di San Silvestro / La notte di Capodanno)は、
年越しを盛大に祝います。
家族で静かに過ごすクリスマスと違うところは、この夜は友人たちと派手に祝うこと。
ホームパーティやリストランテ、バール、広場などでみんなと食べて飲んで大騒ぎ!

各リストランテでは、特別豪華ディナー(Cenone di Capodanno)を用意しています。
この夜だけは完全予約制になるお店が多く、料金も高めですが、それに見合うだけの料理と
雰囲気を味わえます。
夜12時ともなれば、お客さんも店員もみんな一緒になってカウントダウン。
見ず知らずの人とも頬にキスをして挨拶し、一緒に踊って盛り上がりも最高潮に達します。

街の主な広場では、さらに大変な賑わいになります。
オーケストラなどのコンサートが催され、花火や爆竹が鳴り響き、広場を埋める大勢の人々が、
夜通しお酒を飲んで踊り明かすのです。

このカウントダウンの時にみんなが手にするのは、イタリアのスパークリングワイン・スプマンテ
(Spumante)のボトル。
12時ちょうど、夜空に勢いよくコルクを飛ばし、新年を祝って乾杯します!

そのため、バールやリストランテでは普段の何十倍ものスプマンテを入荷し、大みそかには
それが飛ぶように売れていきます。路上には闇販売をする人も出てくるくらい…。



そこで、よりエレガントに新年を祝いたい方のために、オススメのスプマンテを紹介します。

有名な話ですが、スパークリングワインが初めて造られたのは、フランスのシャンパーニュ地方。
つまりシャンパンですね。
17世紀に、フランスの修道院でドン・ペリニョン神父が製法を確立したと言われています。

この製法をもとに1860年、イタリアでも初めてのスプマンテが造られました。
カミッロ・ガンチャ(Camillo Gancia)が、モスカート種のブドウを使って造ったものです。
ボトル内で二次発酵させるこの伝統製法は、かつてはシャンパン方式(Metodo Champenoise)と
呼ばれていましたが、シャンパーニュ地方以外での呼称をEUによって禁止されたため、
現在ではクラシック方式(Metodo Classico)と表記するようになりました。

これに対し、20世紀に入って発明されたのが、タンク内二次発酵方式、つまりシャルマ方式
(Metodo Charmat)です。
温度が自動管理された大型のタンク内で発酵させ、短期間に大量生産できるメリットがあります。

クラシック方式のスプマンテで特に有名なものに、ピエモンテ州のガヴィDOCG (Gavi DOCG)、
ロンバルディア州のフランチャコルタDOCG (Franciacorta DOCG)、トレンティーノ=アルト・
アーディジェ州のトレントDOC (Trento DOC)などがあります。値段は高め。

一方、シャルマ方式では、プロセッコ種を使ったヴェネト州のプロセッコDOC (Prosecco di
Conegliano Valdobbiadene DOC)が最も有名。
甘口では、モスカート・ビアンコ種を使ったピエモンテ州のアスティ・スプマンテDOCG (Asti
Spumante DOCG)と、弱発泡性のモスカート・ダスティ(Moscato d'Asti DOCG)が代表的。
マスカットの香りがとても爽やか!

ガヴィやトレントは普通の白ワインも非常に有名なので、ご存じの方も多いのでは?
飲みやすさでいえば、オススメは甘口。アルコール度数が12%前後ある辛口に比べ、
甘口は7%程度。口当たりも優しい味わいです。
ちなみに、普通のワインでいう辛口「セッコ」(Secco)の上に、スプマンテでは極辛口「ブリュット」
(Brut)があります。ラベルを読む参考にしてください。

気をつけたいのは、こうした自然発酵のスプマンテ(Spumante Naturale)に対し、
炭酸ガスを後から人工的に注入したスプマンテ(Spumante Gassificato)があること。
これは味も香りも格段に劣ります。



私は、今年は甘口のアスティ・スプマンテを準備しました。
イタリアは日本より8時間遅れて年越しを迎えるので、例年通り、日本時間とイタリア時間の
2度お祝いしたいと思います。
皆さんも良い新年をお迎えください!

キアーヴァリの歴史的バール

リグーリア州キアーヴァリに行ってきました。
ここで育った友人の案内で訪れたのが、町一番の歴史を誇るバール「Gran Caffè DEFILLA」。
創業は1900年。イタリア歴史施設協会(Associazione Locali Storici d'Italia)に認定されている
文化的価値もある老舗です。

入口を入るとまず、広々としたバールスペースがあり、立ち飲み客で溢れる重厚なカウンターが
目をひきます。一目でプロフェッショナルだとわかるバリスタたちが、あくまでエレガントに接客
していました。
広い店内のその奥には、自家製ドルチェやジェラートを揃え、併設のエノテカには豊富な種類の
ワインボトルがずらり。

その先にティールームがあり、私たちはそこに座ることにしました。
どのテーブルもアンティーク調で、店内に流れるクラシック音楽は、耳障りにならない程度に
かすかに聴こえるだけ。まさに正統派の古典的バールです。


ここで友人が紹介してくれたのが、このバールで生まれた銘菓「キアーヴァリの微笑み /
ソッリーズィ・ディ・キアーヴァリ」(Sorrisi di Chiavari)。
リキュールのマラスキーノ酒で風味をつけたジャンドゥイア・チョコレートのスポンジを、
ブラックチョコレートでコーティングした、一口サイズのお菓子です。

目に留まったのは、「毎週土曜・生牡蠣 / 1個2.50ユーロ」と書かれたポスター。
生牡蠣にはレモンを絞って、白の辛口スパークリングワインと合わせるのがイタリア流の食べ方。
アペリティーヴォ(食前酒)の最も洗練されたサービスですが、今ではわずかな高級店でしか
見つけることができません。
この日は月曜日で食べることはできませんでしたが、ビストロも併設するバールならではの、
お酒に合う本格的な料理です。

お店の方々もとても親切でした。
上品なカメリエーレ(給仕)がテーブルで創業の歴史などを説明してくれ、
レジでは、ショップカードを尋ねると、気前良くポストカードまでくれました!

Sorrisi di Chiavari

キアーヴァリの町も素晴らしいものでした。
建物沿いに柱廊・ポルティコ(Portici)がどこまでも続く街並みは歩きやすく、
そこに並ぶ歴史的な建物や教会、アンティークなお店などがとても印象的。
ヨットハーバーからは、有名な夏のリゾート地、サンタ・マルゲリータ・リーグレの
宝石を散りばめたような夜景を、遠くに臨むことができました。

外国人の姿をほとんど見かけることがなく、つまりは古き良きイタリアの姿がそのまま残る、
そんなキアーヴァリの町を、ぜひ一度訪れてみてくださいね!

通りの両側に沿って続く柱廊・ポルティコ

Gran Caffè "DEFILLA"
Corso Garibaldi, 4 - Chiavari (GE)

2011/12/30

干しブドウの一級ワイン

ジェノヴァの友人宅で過ごしたクリスマスの夕食の席上、ヴェローナから来たご夫婦が持参した
ワインに、思わず目を奪われました。

「レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラDOC」(Recioto della Valpolicella DOC)
ヴェネト州ヴェローナ県で造られる、赤のデザートワインです。

このワインの最大の特徴は、収穫した完熟ブドウを約100日間かけて陰干しすること。
乾燥させることでブドウの水分を飛ばし、より糖度を高めた果汁から、甘口ワインを造ります。
糖分がすべてアルコールに変わる前に発酵を止めるので、甘口に仕上がるわけです。


このレチョートといわば兄弟のような関係にある、ヴェネト州の最高級ワインがあります。
「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラDOC」(Amarone della Valpolicella DOC)
ふつう単にアマローネと呼ばれ、ソムリエをもうならせるイタリアでも随一の赤ワインです。

収穫したブドウを陰干しして糖度を高めるまでは同じですが、違いは発酵期間。
糖分が無くなるまで発酵させるため、アルコール度が比較的高めで辛口になり、
さらに2年以上の樽熟成を経て造られます。
ルビー色のビロードのような口あたり、そして香り溢れる優雅さが特徴的。
フルボディのコクのある味わいなので、肉料理などによく合います。


一方、レチョートは厚みのある甘口なので、ふくよかなドルチェやチーズに合わせるといいでしょう。
深い赤の色合いは、クリスマスの夜を彩るワインとしても最適でした。
一度は試す価値のある、特別な1本です!


ジェノヴァ名物・フォカッチャ


今年はクリスマスをジェノヴァで過ごしてきました。
この機会に、長年訪れてみたかった同じリグーリア州の海辺の町、レッコに立ち寄りました。
目的はひとつ。ここの名物フォカッチャ(Focaccia di Recco)を食べること!



フォカッチャはピッツァよりもはるか昔からイタリアで食べられてきましたが、
現在特に有名なものは、ジェノヴァのフォカッチャ(Focaccia Genovese)。
生地が柔らかく、そのまま食べるか、ローズマリー、セージ、オレガノ、オニオン、オリーブなどで
風味付けすることもあります。

イタリアのどこでも食べられるフォカッチャですが、誰もがジェノヴァのものは違うと口を揃えます。
使われる小麦粉とオリーブオイルが違うとも言われますが、そもそもフォカッチャが日常に
欠かせない、この土地の食文化に違いがあるようです。

ジェノヴァを歩けば、街角でふいにフォカッチャの香りがすることは珍しくありません。
それはわずか数メートルの間隔で立ち並ぶ、パン屋から漂う香りだと気づくはずです。
甘い朝食を好むイタリア人の中で、ジェノヴァの人々が焼きたてのフォカッチャを朝から並んで
買い求め、朝食でカフェラッテに浸して食べるというのは、非常に特異に映ります。
そうしたフォカッチャへの人一倍の愛情が、どこよりも美味しい味を育てる土壌だということは、
他の料理でも同じこと。

一緒にフォカッチャをほおばりながら、ジェノヴァ育ちの友人が私に言いました。
「(香りの強い)オニオンのフォカッチャを食べた後はキスできないから、気をつけるんだよ」
ジェノヴァっ子は、キスさえあきらめるほど、フォカッチャには目がないということでしょうか…。



さてそんな中、レッコのフォカッチャはさらに一味違います。
小さな町の至るところで、「FOCACCIA COL FORMAGGIO」の文字を発見!
これがレッコ名物、クリームチーズを挟んだ薄いフォカッチャのこと。
チーズにはクレシェンツァ(Crescenza)やストラッキーノ(Stracchino)が使われます。

今回訪れたお店は、地元の人々が一番おいしいと教えてくれた「Panificio MOLTEDO」。
1874年の創業から4代続く、町一番の老舗です。
午後の営業再開16:30にお店のシャッターが開くと、待っていた人々ですぐに店内は埋まりました。
みんなのお目当て、チーズ・フォカッチャが次々に焼き上がり、まさに飛ぶように売れていきます。


このお店で使うクレシェンツァ・チーズは、50年以上もINVERNIZZI社製だけを使用していて、
レッコの伝統的チーズ・フォカッチャの、いわば代名詞なのだとか…。

薄い生地のあいだからとろけ出るアツアツのクレシェンツァが、口いっぱいに広がり、
柔らかい香りが余韻を残す、とてもデリケートな味でした。

コクがあるのに軽い口当たりは、きっと暑い真夏でも食欲を刺激するに違いありません!
海水浴の後の、レッコの浜辺で食べるフォカッチャを、思わず想像してしまいました…。

もちろん冬には身体を温めてくれる味わいがあり、こうして一年中美味しく食べられるのでしょう。
またこの町に戻ってこようと思わせる、これぞ「名物」です。


2011/12/23

ザンポーネ500周年のクリスマス

イタリアのクリスマスの食卓に欠かせないのが、モデナ産ザンポーネ(Zampone di Modena)。
今ではイタリア全土にとどまらず、世界的にも有名な逸品です。
製造工程が似ているモデナ産コテキーノ(Cotechino di Modena)と一緒に、クリスマスシーズンとも
なれば、どちらも市場やスーパーに大量に並べられます。

ザンポーネとは、豚のひづめ付き前足の皮袋に詰め物をした、豚肉加工食品のこと。
詰め物には、豚の肩、足、皮、喉、頬、腹の各部位を挽き、コショウ、ナツメグ、シナモン、
クローブ、ワインで軽く味付けされたものを使います。
これを加工するわけですが、検査の通ったものは保護地理的表示・IGP(Indicazione Geografica
Protetta)に指定され、モデナ産の正真正銘の伝統食品として、他地域で生産されるザンポーネと
大きく区別されます。


ザンポーネは茹でて輪切りにし、伝統的には、煮込んだレンズ豆(Lenticchie)とジャガイモの
ピューレ(Purè)を添えて皿に盛りつけられます。
皮のコリコリとした独特の食感は、クセになる美味しさ!

モデナでは、有名なモデナ産バルサミコ酢(Aceto Balsamico di Modena)を使ったザバイオーネや、
リンゴのソースを添えるなど様々なレシピがあり、クリスマスに限らず食されます。

また、ザンポーネに比べ価格の安いコテキーノは、より一般的にイタリア北部のリストランテで
扱われ、茹で肉の盛り合わせ・ボッリートや、カルボナーラなどのパスタ、リゾットなどの具に
使われています。
(私がコテキーノと出会ったのも、モデナから遠いイタリア北東部トリエステのリストランテでした!)

おそらく日本にも、調理済みの殺菌パックされたものが輸入されているのではないでしょうか…。
パックのまま沸騰した鍋で温めるだけなので、とてもカンタン!ぜひ試してみてください!


そもそもザンポーネの誕生は1511年、モデナ近郊ミランドラ(Mirandola)の町が教皇ユリウス2世の
軍勢に包囲された時のこと。
ミランドラの人々は、敵軍に重要な食料である豚を奪われないようにするため事前に豚肉を挽き、
それを豚の皮に詰め(コテキーノ)、さらに前足の皮にも詰めて(ザンポーネ)、保存食としての
確保にも成功したのです。

それから今年でちょうど500年目。
今ではすっかりクリスマス料理の代表格として、イタリア中の食卓に並びます。
今年のクリスマスは、ザンポーネとコテキーノを主役にしてみてはどうでしょうか。
500年続く長い歴史に想いをはせ、家族の幸せもずっと続くよう祈りつつ、心温まるクリスマスを
迎えるのもいいかもしれませんね!


モデナ産ザンポーネIGP・公式サイト(イタリア語)
http://www.zamponemodena.it/

クリスマス菓子・パネットーネ

日本でも最近知られるようになってきた、ミラノの銘菓・パネットーネ(Panettone)。
「大きなパン」という意味通り、大きなドーム型の甘く柔らかいパンです。
レーズンなどのドライフルーツが入っているのが特徴。

パネットーネの誕生は、およそ500年前のルネッサンス期。
ルドヴィコ・スフォルツァ、通称イル・モーロ(Ludovico il Moro)統治下のミラノだったと、
いくつかの伝説が伝えています。

ひとつは、ミラノの鷹匠の若者が考案したという説。
彼は美しいパン屋の娘に恋し、そのパン屋に雇われるよう、また売上げを伸ばすよう、
ドライフルーツなどを使った新しいパン(パネットーネ)をつくり、それが評判を呼び、
その後2人は結婚して幸せに暮らした、というもの。

もうひとつは、ミラノ公イル・モーロのコックが、周辺国の貴族たちを招いた豪勢なクリスマス
昼食会を任されたときのこと。
準備したデザートをオーブンで焦がしてしまい、見習いのアントニオが試作していたパンケーキを
急遽出すことになり、それが意外にも大好評。
招待客に「パーネ・ディ・トーニ(Pane di Toni)」(アントニオの愛称・トーニのパン)と紹介し、
それが訛って「パネットーネ」になったというもの。



いずれにしても現在では、それがクリスマス用パンケーキとして全国的に有名です。
11月下旬から、スーパーや食料品店にはパネットーネが大量に並べられ、クリスマスまでに
親戚や友人、職場の同僚などに贈り合う習慣があります。
これがクリスマス当日ともなれば、もらったパネットーネを大量に抱えることに!
ですから、クリスマス休暇中(クリスマスから年越し、1月6日のエピファニアの祝日までの2週間)、
家でパネットーネを食べ続けることになるのです。

もうひとつ、似たようなクリスマス菓子に、ヴェローナ銘菓のパンドーロ(Pandoro)があります。
こちらはドライフルーツが入らず、雪のように白い粉砂糖を振りかけて食べます。

どちらも全国のスーパーなどで大量販売されますが、ほとんどは添加物など多く含んだ工業食品。
私のオススメは、菓子店・パスティッチェリーア(Pasticceria)が各店競って焼き上げる自家製です。
伝統製法の風味は格別で、友人に贈ってもとても喜ばれることでしょう!

ジェノヴァのパンドルチェ(Pandolce)など、各地方でしか食べられない同様のクリスマス菓子も
あります。やはり地元のパスティッチェリーアで見つけてみてくださいね!


パスティッチェリーアを併設しているバールでは、切り分けたパネットーネを食べることができます。
一番のオススメは、一杯の甘口スパークリングワインと合わせること。
パネットーネを引き立たせる、大人の食べ方です。

また、甘いものに目がない方は、ホットチョコレートをかけて食べるなんてどうでしょう?
あまりの幸せに思わずうっとりしてしまうご婦人方を、カウンターからたくさん見てきました!

他にも、あなただけの食べ方を、ぜひバリスタに相談してみてください。
とびきりの発見があるかもしれませんよ!

2011/12/22

冬の風物詩・ホットワイン

真冬の屋外イベントに欠かせないのがホットワイン。
ドイツを中心にヨーロッパの広い地域で一般的ですが、イタリアでもヴィン・ブルレ(Vin Brulé)の
名前で親しまれています(フランス語からの外来語です)。

イタリアでは特に寒さの厳しい北部でよく飲まれ、広場などに並ぶクリスマスマーケットや、
カーニヴァルのイベント会場、各地域のお祭りなどには欠かせない存在です。
バールでも店先にヴィン・ブルレを温めた大鍋を置き、道行く人々に売ったり、振る舞ったりする
光景をよく見かけます。
日本でいう甘酒のようなものかもしれませんね。

作り方はとてもカンタン。ご自宅でもぜひ試してみてください!
赤ワインに砂糖とシナモン、クローブといったスパイスを加えて温めるのが基本。
八角、レモンやオレンジの皮、リンゴやミカンの果実を加えることもあります。
これを大鍋で温めますが、沸騰させなくても多少のアルコール分は飛ぶので、度数は10%程度。
甘く飲みやすい上に、身体を芯から温めてくれ、思わずホッとする味です。

バールでは、エスプレッソマシンのノズルを使って、カプチーノを作るように蒸気で温めて
作ることができます。瞬時に温まるのでアルコール分が飛び過ぎずに済む利点があり、
大鍋で事前に準備したり保温しておく必要もありません。

でもやっぱり屋外で飲むのが一番!
凍える寒さのなか、温かいカップを両手で包み、湯気立つヴィン・ブルレを仲間や恋人と
一緒に飲む…。思わず笑顔もほころぶ、冬の贈り物です。

2011/12/15

マティーニ&ギョーザ


マティーニは言わずと知れた「カクテルの王様」。
ドライ・ジンとドライ・ヴェルモットでつくる定番中の定番カクテルです。

日本では「マティーニ」と発音しますが、欧米ではイタリア語風に「マルティーニ」(Martini)と
発音されます。
なぜイタリア語風なのか…?
それは、イタリアのヴェルモット「マルティーニ」に由来するためで、これは世界で最も有名な
ブランドの一つでもあります。

マティーニが考案されたのは、ジンベースのカクテルが盛んに作られたアメリカ。
しかし、多くの酒造メーカーがそうするように、自社製品の拡販目的にメーカー自らが
カクテルの名前をつけて宣伝したといわれています。
実は、「カクテルの王様」はイタリアと切っても切れない関係にあったのです!

ちなみに、マティーニが注がれたカクテルグラスの底には、ピックに刺したオリーブが
沈められています。いかにも地中海的ではありませんか!

もちろんイタリアのバールでも、アペリティーヴォ(食前酒)の代表的カクテルとして、
メニューに見つけることができます。
しかし、意外にもイタリア人にはそれほど人気があるとはいえません。
バールでオーダーが入るときは、まずアメリカ人やイギリス人、オランダ人だと思って
間違いないほどです。


先日、ピサに住む日本人の友人を訪ねたとき、とても興味深い話を聞きました。
彼は手作り餃子でもてなしてくれたのですが、同席したイギリス人女性が「オランダの
アムステルダムのバーにある、マティーニ&ギョーザが大好きだったわ…」と、ため息を
ついたのです。

バリスタの私には、この発想は衝撃的でした!
確かに、キレ味鋭いジンのドライな風味は、餃子のクセのあるこってりした味にとても合うでしょう。
同じホワイト・スピリッツのウォッカも合うはずです。

イタリアのヴェルモットとイギリス・オランダ生まれのジンが、アメリカでカクテルとして出会い、
今ではそれが餃子とともに飲まれる…。
創造力で発展してきたドリンクや食のさらなる可能性に、心が躍った夜でした。

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【追記】
イタリアでマティーニを注文する際は、「カクテル・マルティーニ」と言ってくださいね!
「マルティーニ」だけだと、ヴェルモットが出てくるので注意が必要です。