2011/03/02

バリスタの選び方

「良いバール」の選び方。
これを説明するのはとても難しいこと…。
個性的なバリスタの集合体がバールなので、味も応対もバリスタによって大きく違うからです。

バールとバリスタの関係は、美容院と美容師の関係に似ている、といえば分かりやすいのでは?
お気に入りの美容師さんにいつも担当してもらう人も多いでしょう。
美容師さんが異動したり独立開業すれば、その新しいお店に通うことも珍しくないはずです。

それはバリスタも同じ。
技術の差や味覚のセンスが、作ったドリンクにそのまま体現される。いわば職人的な仕事です。
そしてイタリアには「接客マニュアル」がありませんから、素のとても自然な対応になります。
親切な人もいれば無愛想な人もいる。話が合う人と合わない人も当然いるでしょう。

また、どんなに優秀なバリスタでも、誰もが意外にも苦手なジャンルを持っています。
素晴らしく美味しいカフェを淹れるのに、カクテルのことはイマイチ分からない…。
オリジナルカクテルを作れるほどの腕前なのに、カプチーノの出来には少々ガッカリ…。
ワインはソムリエ並みの知識をもつ達人、創造力豊かにおつまみを作り続ける達人、
話術だけでドリンクを美味しく楽しく飲ませる雰囲気作りの達人…、などなど。

それだけバールで扱う範囲が広いということ。
すべてを無難にこなすゼネラリストではなくても、それぞれがスペシャリストたちです。
ですから、どのバリスタが何のスペシャリストなのか観察してみるのも、面白いと思いますよ!

しかし当然、お店による違いもあります。
コーヒー豆の選別、保管・管理方法、マシンの機種、ケア、お酒の銘柄、グラスやカップの種類…。
また、お店のつくり、内装、雰囲気も、味の印象を左右する大きな要素です。

さらに、他のバリスタと共同で管理していくものもあります。
コーヒー豆の挽き目の調整はトップバリスタの役割。他のバリスタは触ることも許されません。
共同で使う材料や備品も、自分だけのやり方で管理できるとは限りません。

例えば、一人のバリスタがミルクを冷蔵庫に入れず熱いマシンのすぐ横に放置していたり、
必要分量以上のミルクをスチーミングしてミルクピッチャーのなかに残すようでは、
次に使う他のバリスタは美味しいカプチーノを作ることができません。

また、バンコ(カウンター)の作業スペースは常に整理整頓され、清潔に保たれていないと
素早く正確なドリンク作り・提供が行えません。

日本では店舗で統一ルールを細かく設定し、スタッフ全員がそれを遵守します。
しかしイタリアの、特に小さなバールではそうした習慣はほとんどないのが現実。
オーナーやトップバリスタがしっかり指導しているようなお店なら、
どのバリスタも個々の持ち味を充分発揮して働くバール、だといえるでしょう。

各店舗の設備やオーナーの方針も違うので、馴染みのバリスタが別のバールに移っても、
「味が変わった」ということは当然あります。
しかし同じバールでも、例えばエスプレッソの場合、気温や湿度によっても味は若干変わります。
朝と夕方、晴天と雨天などで味は変わり、そのためにバリスタは一日に何度かマシンの調整を
しています。
また、バリスタも人間ですから気分の良い日と落ち込んでいる日があり、エスプレッソマシンも
まるで感情があるかのように日々調子は違います。
両者はまさに相棒で、日々お互いのフィーリングを確認し合いながら目指す味を探るのです。

チェーン展開が主流の日本において、エスプレッソマシンの取り扱いは非常に難しいものです。
従来の喫茶店、シアトル系などはもちろん、イタリアンバールをうたっているところでさえ、
オートまたはセミオートのエスプレッソマシンを使っています。
ほぼ均一の味が出せるうえ、学生アルバイト店員でも簡単に扱うことができるからです。

イタリアのバールにはオートマシンは存在しません。断言できます。
なぜでしょうか?
それは、オートマシンよりも格段に美味しいカフェを淹れることができるからです。
使い方を知らなければオートマシンよりもひどいカフェができてしまうし、抽出も不安定。
だからこそ、バリスタはプロの仕事なのです。

また、イタリア人にとって「均一の味」ほどつまらないものはありません。
日々に変化があることは人生では当たり前であり、むしろそれが人生です。
カフェも同じこと。
人が作り、人が飲むものですから、そこには常に変化に富む表情豊かな味があります。
苦味も甘味もすべては人生の味。
その味の違いを楽しめるようになれば、あなたはもう立派なイタリア人です!

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