ミラノ生まれのカンパリと、トリノのヴェルモットを合わせたことから、そう呼ばれたもの。
これにソーダ水を加えたものが「アメリカーノ」。
名前の由来は諸説ありますが、約100年ほど前に誕生して以来変わらず、イタリアで
最も愛されているカクテルのひとつです。アペリティーヴォ(食前酒)の定番中の定番!
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1919年~1920年。イタリア中部・フィレンツェのバール"Caffè Casoni"。
そこで、アペリティーヴォで毎日飲むアメリカーノに少々飽きていた男がいました。
彼の名は、カミッロ・ネグローニ伯爵(Conte Camillo Negroni)。
彼は、バリスタのフォスコ・スカルセッリ(Fosco Scarselli)に訊ねます。
「ソーダの代わりにジンを入れてくれないか?」
カンパリ、ヴェルモット、ジンを3等分に注いだこの味をとても気に入った彼は、その後も
この「いつもの一杯」(il solito)のために通い続けたといいます。
他の常連客も「ネグローニ伯爵のカクテル」を相次いで注文するようになり、そのまま
「ネグローニ」の名で定着して一気に広まりました。
Negroni |
現在、アメリカーノとネグローニは、イタリアが生んだ世界のスタンダード・カクテルとして、
あまりにも有名ですね。
国際バーテンダー協会(IBA)の77種類の公式カクテルにも数えられています。
ネグローニ発祥の"Caffè Casoni"は、"Caffè Giacosa"として今でもフィレンツェにありますよ!
ミラノには、「ネグローニ・ズバッリャート」という面白い飲み方もあります。
「間違ったネグローニ」という意味で、ジンの代わりにドライ・スプマンテを使ったもの。
1960年代、ミラノの"Bar Basso"で考案され、これも現在では広く親しまれています。
アルコール度数はやや下がり、スプマンテの気泡が加わって、飲みやすくなっています。
Caffè Giacosa (ex Caffè Casoni) a Firenze |
イタリアではどのバールでも、こうして日々新しいドリンクが生まれています。
コーヒーにしても、カクテルにしても、お客さんそれぞれが「こだわり(レシピ)」をもっていて、
例えばカプチーノだけでも、百種類以上ものレシピがあるわけです。
それら千差万別のドリンクをバリスタはつくるわけで(だからこそメニュー表をつくれないの
ですが)、特に個性的なレシピを、便宜上そのお客さんの名前を冠して呼ぶことがあります。
ネグローニの場合、それが世界的なスタンダード・カクテルになりましたが、
これは「バール文化が生んだ傑作」だと言うこともできるのです。
さて、このネグローニも、もし味の好みがあれば、それもバリスタに頼んでみましょう。
甘口ならスイート・ヴェルモットの分量をやや多めに、辛口ならジンを多めにすることで、
調整できるからです。
ですから、ネグローニひとつとっても、常連客の好みのレシピは、すべてバリスタの頭の中に
入っています。
遠くまで「美味しいバールを探し歩く」のではなく、近くのバールで「好みのレシピをバリスタに
覚えさせる」…。
実はこれが、早く確実、イタリア流の「良いバール」を見つけるポイント!
だからイタリア人はみんな、自宅や職場の近くなど、それぞれ便利な場所に行きつけの
バールをもつことができるのです。
これがイタリアのバール文化の最大の強み。
スターバックスなどのアメリカ系コーヒーチェーン店が、イタリアに一切進出できない理由も、
ここにあるのです。
あなたなら、バールでどんな個性的なドリンクを注文してみますか?
数十年後には、あなたの名前がスタンダード・ドリンクになっているかもしれませんよ!
カンパリ・公式サイト(イタリア語・英語・ドイツ語)
http://www.campari.com/
国際バーテンダー協会・公式サイト(英語)
http://www.iba-world.com/
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