イタリアを代表する最高級の赤ワインを生む地域として有名です。
先日、この地域のワインと食文化の取材に出かけてきました。
交通の不便なこのトスカーナ州南部の田舎町を車で案内してくれたのは、いつもお世話に
なっているマッシミリアーノ・フェッリ氏。イタリア伝統料理に造詣が深く、グルメ社交界に
幅広い人脈をもつ、食のエキスパートです。
今回は、モンテプルチャーノで出会った代表的なワインを、いくつか紹介しようと思います。
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トスカーナ州南東部に位置するキアーナ渓谷(Val di Chiana)は、有名なフィレンツェ風Tボーン
ステーキに使用されるキアーナ牛のふるさと。
その西側、ブドウ畑やオリーブ林が広がる緩やかな丘陵の先の高台に、堂々とそびえる
レンガ色のモンテプルチャーノの町があります。
町からは、遠くウンブリア州のトラズィメーノ湖まで見渡す絶景が広がり、中世の建物が続く
歴史的な街並みの至るところに、カンティーナ(ワイナリー)の直営エノテカがありました。
その中でも、町の中心・グランデ広場に面したコントゥッチ宮(Palazzo Contucci)を訪ねます。
ここは第二次世界大戦中にフェッリ氏のお母様が暮らした歴史的建造物で、現在では
地下にあるカンティーナを見学することができます。
熟成中のワインの呼吸まで聞こえてきそうな静寂の中に、いくつもの樽が並んでいました。
フェッリ氏の祖父は樽造りの職人だったといい、非常に高度な技術を要する樽造りについても
説明してくれました。
ここで私たちを出迎えてくれたのは、1961年からこのカンティーナで働くというアダモ氏。
75歳には見えない鋭い眼差しと大きな笑い声が印象的な、ワイン造りのマエストロです。
世界の様々なガイドブックにも写真付きで登場する有名人だということで、話を聞いている
間にも、彼を訪ねるアメリカ人たちがやってきたほどです。
ここでは、モンテプルチャーノの様々な種類のワインを試飲させてもらいました。
この町を代表するワインといえば、「ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノDOCG」。
イタリアでも最も古いワイン銘柄のひとつで、8世紀にはすでに文献に記されています。
1966年にDOC認定、さらに1980年にはDOCGに昇格し、「ノービレ=高貴な」の名にふさわしい
歴史と気品をもつワインです。
このワインを語るときに欠かせない言葉があります。
「モンテプルチャーノ、あらゆるワインの王」 "Montepulciano, d'ogni vino è re"
1685年、イタリアの詩人・フランチェスコ・レーディ(Francesco Redi)が、著書『Bacco in Toscana』
の中で記した言葉で、町の人々が今でも誇りとする一節です。
ブドウ品種は、この地で「プルニョーロ・ジェンティーレ」(Prugnolo Gentile)と呼ぶサンジョヴェーゼ
を70%以上使用。これにカナイオーロ種などその他の品種が加わります。
24ヶ月以上の樽熟成が義務付けられていて、3年間(最後の6ヶ月間はボトル内熟成)の
熟成を経たものは、「リゼルヴァ」(Riserva)となります。
Vino Nobile di Montepulciano DOCG |
そしてもうひとつ。「ロッソ・ディ・モンテプルチャーノDOC」。
生産地域やブドウ品種はノービレと同じですが、収穫翌年の3月以降には出荷できるため、
比較的リーズナブル。まずはこちらでノービレの品種を試してもいいでしょう。
私もよく自宅で飲みますが、非常にバランスの良いふくよかな味わいで、家を訪ねて来る
お客さんにも安心して出せるワインです!
Rosso di Montepulciano DOC |
モンテプルチャーノの町は、ローマ帝国以前のエトルリア時代からの歴史をもつ、きわめて
古い町です。
町の人々のことを「モンテプルチャネーゼ」とはいわず、ラテン語由来の「ポリツィアーノ」と
呼ぶのも、その歴史の深さを表しているよう。
この町出身のルネッサンス期の大詩人・ポリツィアーノや、世界的に有名なカンティーナ・
ポリツィアーノの名前の方を知っている方もいるかもしれませんね。
エトルリア時代の典型的な丘の上の町、中世の美しい街並みを残す町、豊かな自然と
食文化を誇る町、そして何より親切で優しい人々の住む町として、ワイン愛好家の方々に
限らずぜひ訪れてほしいと思います。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ協会・公式サイト(イタリア語・英語)
http://www.consorziovinonobile.it/
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