2013/03/28

つまようじの国

日本人にとって、食後のつまようじは欠かせないアイテムですよね。
食堂でも、当たり前のように各テーブルに置いてあります。

ところが、ヨーロッパを旅行すると、それが当たり前でないことに気づくはずです。
少しばかり不便な思いをした経験はありませんか?

イタリアのリストランテやバールでも、もちろんテーブルには備えられていませんが、
そこで諦めてはいけません!
どのお店でも、実は頼めば持ってきてくれるのです。

イタリア語で「つまようじ」は「ストゥッツィカデンティ」(lo stuzzicadenti)といいます。
「アヴェーテ・ウーノ・ストゥッツィカデンティ?」(Avete uno stuzzicadenti?)と尋ねる一言だけ。

イタリア人でも尋ねてくる人はもちろんいますが、少数です。
人前で歯を掃除するのは決して上品とはいえませんし、“歯の掃除道具”を食事のテーブルに
備え置くなんて絶対にありえない、という感覚です。
それでもつまようじを使うのはマナー違反ではありませんが、少なくとも手で口を覆うのが、
最低限の礼儀だといえるでしょう。

バールでは、バリスタの手元に置いてあるので、カウンターで直接尋ねてみてください。
リストランテと比べてバールでは、つまようじはより重要な存在です。
特にアペリティーヴォ(食前酒)の時間帯。
オリーブやチーズなどのおつまみを取るために大活躍し、カクテルにデコレーションをする
道具としてもバリスタは使います。


イタリアのつまようじは、両端の先端が鋭く尖っているのが特徴です。
先端恐怖症でなくても、なんだか扱いづらいと思うのは、やはり日本人だからでしょうか。

しかし私にとってそれ以上に気になるのが、各メーカーの商品名です。
「SAMURAI」、「SAYONARA」、「KIMONO」、「KARATE」、「NIKKO」、「KENDO」、「SAKURA」…。
いずれも、日本語ですね。
一体なぜでしょう…。


つまようじの原形は、歯を掃除する道具として、おそらく人類史上最も古いものであると
されていて、特別に日本やアジアで発明されたものではありません。
中世イタリアでは、ブロンズ製や貴金属製のものが上流階級の間で広まっていたともいいます。

しかし、現代において、こうした卓上の日用品としてのつまようじを広く生産・流通させたのは、
日本の企業なのではないでしょうか?
実際、イタリアの主要ブランドには、「Made in Japan」の記載があります。

品質の高いつまようじを安く大量生産する日本の技術力を察することは難しくありませんが、
消費者の購買意欲につなげるブランド・イメージとしてのネーミングに、品質や流通過程を
関連付ける理由は、つまようじに関しては薄いような気がします。

いずれの商品名を見ても、むしろ日本の伝統文化をイメージさせるものばかり。
どのパッケージにも、武士の姿や、浮世絵風の日本女性、芸者などの古風なデザインが
施されていることからも、一貫したイメージ戦略が垣間見えます。

多くのイタリア人が、日本の映画・アニメを通して、日本の食文化・生活文化をよく知っています。
楊枝をくわえた孤高のサムライや、コミカルに楊枝を使う忍者や武道家のアニメキャラクター…。
つまようじに、何かしらの「物語」をイメージさせるとき、世界の中でも、こうした日本の姿を
連想するのは、ごく自然なことなのかもしれませんね。

多くのイタリア人は、これらのネーミングがすべて日本語だということすら気づいていません。
それほど当たり前のように浸透している日本文化が、イタリアには数多くあります。
イタリアの食文化を学びに来た私ですが、同時に、日本文化をイタリア人に広く伝える使命も
求められていることを感じずにはいられません。


【関連バックナンバー】
食前酒・アペリティーヴォ…って何?
リキュールの日本代表・ミドリ


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