数あるリキュールの中でも、イタリア独自のものに「アマーロ」と呼ばれるものがあります。
日本でもガイドブック等で紹介されていますが、誤った記述である場合がほとんど…。
そこで、イタリアではとてもポピュラーなこのお酒について、少し紹介してみたいと思います。
ふつう単にアマーロと呼ばれるリクオーレ・アマーロ(Liquore Amaro)は、薬草・香草・樹皮などの
植物や香辛料などを配合してつくられる、イタリア産ビター系リキュールの総称。
「苦味」を意味する通り、カクテルによく使われるスウィート系リキュールとは区別されます。
主な成分は、アロエ、アニス、ニガヨモギ、シナモン、カルダモン、ニガアザミ、キナノキ、
クミン、コリアンドロ、ウコン、ダイオウ、アーティチョークなど、数十種類にのぼります。
しかし各銘柄とも原材料・製法は秘伝とされているため、個別に詳細を挙げることはできません。
肝臓や胃腸に効能がある薬用酒として飲まれ、風味も日本の養命酒に近いかもしれませんね。
どの家庭にもお気に入りの1本が常備されているもので、主に食後酒として飲まれています。
バールやリストランテでは、少なくとも7-8種類のボトルが用意されていますが、
メニューを見ても「アマーロ」としか載っていません。
カウンターに並んだボトルの中から選ぶか、バリスタやカメリエーレ(ウェイター)に直接
尋ねてみてください。
食後酒として飲むなら、アヴェルナ(Averna)、ルカーノ(Lucano)、モンテネグロ(Montenegro)、
ラマッツォッティ(Ramazzotti)、フェルネット・ブランカ(Fernet Branca)、ブラウリオ(Braulio)
などが最も有名。
ショットグラスなどでそのまま飲むのが基本で、氷を入れてもいいでしょう。
アルコール入りエスプレッソ、カフェ・コッレット(Caffè Corretto)に注ぐお酒としても
非常にポピュラーです。
キナ・マルティーニ(China Martini)とラバルバロ・ズッカ(Rabarbaro Zucca)は、温めてもらっても
美味しいです。レモンピールを加えると香りも引き立ちますよ。
アルコール度数が30度前後あるアマーロの中で、チナール(Cynar)とラバルバロ・ズッカは
16度程度と低く、むしろ食前酒としてよく飲まれます。
氷とスライスオレンジを入れたセルツ(ソーダ水)割りは、完璧なイタリアンスタイル。
バリスタも、あなたを「通」と見なすはずです!
アルコール度数でいえば、39度のフェルネット・ブランカは、お酒に強い人向きですね。
このミント・フレーバー・バージョンがブランカ・メンタ(Branca Menta)。
度数も28度で、ミントの爽やかな香りが本来の強い苦味を抑えています。
モンテネグロ(23度)や、ブラウリオ(21度)も比較的飲みやすいですよ!
ここまで紹介したのは、最も基本的な飲み方。
バールでは、カフェ・シェケラートやカクテルに使われたり、ジェラートにかけて食べるなど、
バリスタが個性的なアレンジを提案してくれることでしょう。
身体にも良いとされる薬用酒・アマーロの楽しみ方を広げていってくださいね!
チャオ!仮想バール『ベッラ・イタリア』へようこそ! イタリアのバリスタYuskeが、ここ仮想バールでお相手します。日頃カウンターで話す最新情報・つぶやきを、バールでなかなかお会いできないイタリアを愛する日本のみなさまに語りかけます。 朝のカプチーノ、お昼のピッツァ、午後のエスプレッソ、ジェラート、夜のワイン、カクテル…。それぞれのシーンに合わせて、ぜひ“ご来店”お待ちしています。ごゆっくりお楽しみください!
2012/01/09
2012/01/07
漁師のコーヒー
今年のお正月を、かつて住んだトスカーナ州リヴォルノ(Livorno)近郊の町で過ごしてきました。
ここに戻ると、必ず飲みたくなるコーヒーがあります。
「ポンチェ・アッラ・リヴォルネーゼ」(Ponce alla Livornese)
アルコールを温めてエスプレッソを注いだものですが、エスプレッソにアルコールを注ぐ
カフェ・コッレットとはまったく別物。
数種類の材料を使うため、作り方で味は大きく変わり、バリスタの腕と個性が問われます!
まず違うのは、専用のグラスを使うこと。エスプレッソ用のものより少し大きい程度。
ここに砂糖、レモンの皮、ゴールド・ラムを入れます。これが“正式な”レシピですが、現在では
さらに同量のコニャックと、アニス酒・サッソリーノ(Sassolino)を少量加えるのが一般的。
これを、エスプレッソマシンの蒸気ノズルを使って、砂糖を溶かしながら温めます。
最後にエスプレッソをゆっくり注いで、出来上がり!
食後の飲み物ですが、冬には身体を温めるためにもよく飲まれます。
ところで、同じくかつて暮らしたマルケ州ファノ(Fano)にも、同様の名物ドリンクがあります。
「モレッタ・ファネーゼ」(Moretta Fanese)
材料も作り方も基本的に同じ。コニャックではなく他の一般的なブランデーが使われ、
アニス酒は地元のヴァルネッリ(Varnelli)に代わるだけ。
ファノは、イタリア半島の東側・アドリア海に面した有数の漁師町です。
水揚げされたばかりの新鮮な魚介をつかった海鮮料理がとても有名ですが、
モレッタはそれ以上にイタリア全国に知れ渡る、町一番の名物。
「漁師が冬の冷たい海風から身体を温めるために飲み始めた」と言われていますが、
真冬のファノで一度飲めば、誰もが納得するはずです。
対してリヴォルノは、イタリア半島西側・ティレニア海の主要な港湾都市。
やはり由来は漁師と結びつけたいところですが、むしろメディチ家支配のトスカーナ大公国を
支える、国際貿易港としての地理的条件があったのかもしれません。
ポンチェの由来は、当時イギリスで流行していた飲み物・パンチ。
インドから製法を持ち帰った有名なアルコールドリンクですが、17-18世紀頃にリヴォルノに
伝わった際、エスプレッソとラムを使った独自のスタイルになったとされています。
中米産のラムやフランスのコニャックが輸入される港だった、と考えることもできるでしょう。
また、リヴォルノ港付近では、ショウガを加えたより強力なレシピがあるそうです。
身も凍る厳しい漁を終え、夜明け前の港に戻った漁師たちが、芯から冷えきった身体を
温めるために考案したのだとか…。やはり漁師に好まれる味なのですね。
いずれにしても、港町で同じものが生まれたことは、偶然の一致ではないはずです。
飲めばわかりますが、冷たい潮風にさらされて飲んでこそ美味しさが増すのであって、
決して乾燥した山あいの町で生まれる味ではない、ということだけは確か。
リヴォルノやファノに立ち寄った際は、ぜひ試してみてください。
バリスタが地元の誇りをかけて作ってくれるはずですよ!
ここに戻ると、必ず飲みたくなるコーヒーがあります。
「ポンチェ・アッラ・リヴォルネーゼ」(Ponce alla Livornese)
アルコールを温めてエスプレッソを注いだものですが、エスプレッソにアルコールを注ぐ
カフェ・コッレットとはまったく別物。
数種類の材料を使うため、作り方で味は大きく変わり、バリスタの腕と個性が問われます!
まず違うのは、専用のグラスを使うこと。エスプレッソ用のものより少し大きい程度。
ここに砂糖、レモンの皮、ゴールド・ラムを入れます。これが“正式な”レシピですが、現在では
さらに同量のコニャックと、アニス酒・サッソリーノ(Sassolino)を少量加えるのが一般的。
これを、エスプレッソマシンの蒸気ノズルを使って、砂糖を溶かしながら温めます。
最後にエスプレッソをゆっくり注いで、出来上がり!
食後の飲み物ですが、冬には身体を温めるためにもよく飲まれます。
| Ponce alla Livornese |
ところで、同じくかつて暮らしたマルケ州ファノ(Fano)にも、同様の名物ドリンクがあります。
「モレッタ・ファネーゼ」(Moretta Fanese)
材料も作り方も基本的に同じ。コニャックではなく他の一般的なブランデーが使われ、
アニス酒は地元のヴァルネッリ(Varnelli)に代わるだけ。
ファノは、イタリア半島の東側・アドリア海に面した有数の漁師町です。
水揚げされたばかりの新鮮な魚介をつかった海鮮料理がとても有名ですが、
モレッタはそれ以上にイタリア全国に知れ渡る、町一番の名物。
「漁師が冬の冷たい海風から身体を温めるために飲み始めた」と言われていますが、
真冬のファノで一度飲めば、誰もが納得するはずです。
対してリヴォルノは、イタリア半島西側・ティレニア海の主要な港湾都市。
やはり由来は漁師と結びつけたいところですが、むしろメディチ家支配のトスカーナ大公国を
支える、国際貿易港としての地理的条件があったのかもしれません。
ポンチェの由来は、当時イギリスで流行していた飲み物・パンチ。
インドから製法を持ち帰った有名なアルコールドリンクですが、17-18世紀頃にリヴォルノに
伝わった際、エスプレッソとラムを使った独自のスタイルになったとされています。
中米産のラムやフランスのコニャックが輸入される港だった、と考えることもできるでしょう。
また、リヴォルノ港付近では、ショウガを加えたより強力なレシピがあるそうです。
身も凍る厳しい漁を終え、夜明け前の港に戻った漁師たちが、芯から冷えきった身体を
温めるために考案したのだとか…。やはり漁師に好まれる味なのですね。
いずれにしても、港町で同じものが生まれたことは、偶然の一致ではないはずです。
飲めばわかりますが、冷たい潮風にさらされて飲んでこそ美味しさが増すのであって、
決して乾燥した山あいの町で生まれる味ではない、ということだけは確か。
リヴォルノやファノに立ち寄った際は、ぜひ試してみてください。
バリスタが地元の誇りをかけて作ってくれるはずですよ!
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