2012/02/05

ボルゲリ - ブドウ畑の貴族邸

先日、友人から仕事の件で、ある世界的香水ブランドのオーナー(仮にV氏)を紹介されました。
彼はフィレンツェの歴史ある伯爵家の当主で、トスカーナ州各地に土地や邸宅を持つとのこと。

幸運にも、後日そのV氏から別邸でのランチに招待され、先週末友人と一緒に行ってきました。
場所はボルゲリ。
マレンマ地方と呼ばれるトスカーナ州南部の広い海岸地域のなかでも、リヴォルノ県側の
丘陵地にボルゲリはあります。

ローマ起源のイタリアでも最も古い貴族のひとつC家出身の奥様と、3人の小さな子どもたちを
紹介され、温かく迎えられました。
大きな暖炉の前のテーブルに着席し、奥様手作りの料理は高級リストランテ並みの美味しさ!
日本とイタリアの貴族の歴史や、日本文化、イタリア料理、ワインなどについて語り合いました。
窓の外に広がる一面のブドウ畑を眺めながら、心地良い時間に陶酔していました…。


そのブドウ畑。
山から海岸まで続くV氏の広大な所有地に、どこまでも広がっています。
ワインに詳しい方なら、ピンときたのではないでしょうか。
ボルゲリのブドウ畑…。そう、超高級ワイン「スーパー・タスカン」を生むブドウなのです!

スーパー・タスカン(Super Tuscan)とは、それまでの伝統的なワイン造りとはまったく異なる
手法で1970年代に登場した、革新的なイタリアワインのこと。

1968年に販売されたボルゲリ・サッシカイア(Bolgheri Sassicaia)が、その先駆けです。
マリオ・インチーザ・デッラ・ロッケッタ侯爵が、サン・グイド農園(Tenuta San Guido)に植えた
カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランを使い、この歴史的な一本が生まれました。
30年もの熟成に耐える、力強い味が特徴です。

ワイン法で定められたカテゴリーの中でも、スーパー・タスカンはDOCやDOCGではなく、
規制の緩いテーブルワイン(VdT / Vino da Tavola)のクラスで、自由な発想で造られるのが
特徴です。
しかし、こうしてDOCを超える高品質なワインが出現するようになったことで、生産地表示など
を義務付けた地域限定テーブルワイン(IGT / Indicazione Geografica Tipica)が新設されます。
現在ではトスカーナ州に限らず、他州でも優れた革新的ワインが無数に造られているため、
「スーパーIGT」と総称することもあります。

その中で、ボルゲリ・サッシカイアは1992年、DOCに昇格しました。
同じカベルネ・ソーヴィニヨン主体の「ボルゲリ・ロッソ」と「ボルゲリ・ロッソ・スーペリオーレ」も
DOCに認定されています。

同じフィレンツェ貴族のアンティノーリ家(Antinori)の手掛けた「ティニャネッロ」、「ソライア」も、
ピエモンテ州の「バローロ」、ヴェネト州の「アマローネ」、トスカーナ州の「ブルネッロ・ディ・
モンタルチーノ」などの伝統的ワインと並んで、イタリアの最高級ワインに数えることができます。

オルネッライア農園(Tenuta dell'Ornellaia)の「オルネッライア」や、メルロー100%の「マッセート」も
有名ですね。

最後に、その他のスーパー・タスカンの赤ワインをいくつか挙げておきましょう。
トスカーナの伝統的な赤ワイン用品種・サンジョヴェーゼや、カベルネ・ソーヴィニヨン、
メルロー、シラーなどの外国品種を主に使用しています。

Luce (Frescobaldi)
Casalferro (Barone Ricasoli - Brolio)
Cabreo il Borgo (Tenute del Cabreo)
Camartina (Quarciabella)
Solengo (Argiano)
Modus (Ruffino)
Summus (Castello Banfi)


ランチを終えた我々は、みんなで海岸を散歩しました。
3人の子どもたちと、流木と松ぼっくりで野球をしたり、砂浜にひいた土俵で相撲をとったり…。
すっかり日も暮れ、車で邸宅に戻る敷地内の森のなか、野生の鹿や野ウサギを目撃しました。

これまで出会ったイタリア人の中で、おそらく最も知性と品格を備えたV氏夫妻のもと、
幼いにも関わらず高い教養を身につけている子どもたちの、恵まれた環境が印象的でした。

この日、いずれ名門貴族の当主を継ぐであろう長男から、自作のヌンチャクをもらいました。
大切に部屋に置いてありますが、いつか彼とこのヌンチャクを手にとって笑いながら、
スーパー・タスカン・ワインを飲み交わす日が来るのでしょうか…。


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